第189話 バーミ復活
通れない結界の向こうの奴からも【ロブギフト】で盗れたのは良かったな。【鑑定】ができるから【ロブギフト】もできるとは思ってたがな。
バーミリオンのバーミを倒し収納しておく。ミザイバードの死骸も収納し、周囲を確認する。3メートルぐらいの神霊樹の枝が1本置いてあった、総本山に群生していた樹だったな。なんで1本だけ? 何か意味があるのかなぁ、一応収納しておこう。あれ? 収納できない? 今は急いでるから確認は後だな。
【那由多】が【那婆羅】に進化した確認もしたいが、ここの制圧が先だ。
地上に戻りココア達の元へ来てみると、大勢は決していた。
広場に道士達の姿は無かった。まだまだ登って来る者もいるが、登った途端に討ち取られ収納されている。
どうするか、ここでバーミの死体を見せれば終わるだろうけど、こいつらって人間の魂を狙ってる奴らなんだよな。それなら殲滅だな。
「ソラ、こいつらは殲滅する。逃げたり隠れたりする奴がいないか確認してくれ。ココアとリクはこのまま続行。私はさっきの所まで戻って来る」
「わかったー」「かしこまりました」「わかったよ」
こっちは大丈夫だな、さっきの木が気になる。
下の階に降りて舞台の下に降りて行く。さっきバーミを倒した所まで来て奥を見ると扉があった。さっきバーミが出て来た部屋だ。扉の横には神聖樹の枝が・・・無い!
誰かが来て持って行ったのか? いや、誰にもすれ違ってないはずだ。
どういう事だ。バーミが出て来た奥の扉に入ってみる。
10畳程度の広い部屋だが、ベッドや机はあるが他に目ぼしい物は見当たらない。
私は床に手を置き、解析を始めた。この家を解析して違和感のある所を探してみよう。
5分で家の解析が終わった。
今までの【那由多】+【創生】だったら、この大きさの家で1時間は掛かってただろう。
【那婆羅】+【創生】になったら5分とは凄いな、能力が格段に上がったんだな。
それに、神聖樹の枝の行方もわかったぞ、今は1階にあるみたいだ。でも動いてるみたいだな、どうなってるんだ? 枝が勝手に歩くわけないし、誰ともすれ違って無い。行って見てみるしかないな。
1階に上がってみると広い部屋の中央に枝があった。
おかしいな、ここにあったらさっき降りる時に気付くはずだが。
神聖樹の枝に近づいてみる。【鑑定】しても枝としか出ない。収納もやっぱり出来ない。
今まで収納できなかったものって生きてるものができなかったよな、こいつは生きてるって事か? 枝なのに?
解析してみるか。
枝に手を置いて解析を始めようとした途端、枝が変化を始めた。
枝が大きくなり、魔物の形になりながらドンドン大きくなって行く。
枝は鳥系の魔物の姿になり天井ギリギリの大きさまで大きくなった。5メートルぐらいだろうか、天井ギリギリまでになってるから凄く威圧感を感じる。
バーミリオンだ。
【鑑定】
名前: バーミ♀7677歳 バーミリオン LV67
HP3005 MP3323 攻撃力2887 防御力2863 素早さ2955
スキル:【変身】【超速再生】【召喚】【道】
ユニークスキル:【羽化登仙】【九聖術】
称号: 聖仙
バーミ? さっきよりステータスが高い。私が負けるとは思えないが気味が悪いな。
「おやぁ? なぜこの姿で復活してるのかしらぁ。そこのあなたが関係しているのかしらねぇ。ちょっと待ってなさい【九聖術】!」
見えなかったが何かが沢山バーミの中に入って行った気配がした。
「そうかい、あなたがあたしを倒してくれたみたいだねぇ。しかしおかしいねぇ、もっと集まるはずだけど。道士も30人ぽっちしかいないってどうなってるのかねぇ」
「それは私の仲間が道士を排除したからだろうな。お前はさっきのバーミのようだが、同じ奴なのか?」
「こっちは保険なんだよ、あたしに何かあった時のね」
バーミが目を閉じた、何か確認したようだ。
「そういう事かい、あたしの邪魔ばかりしてくれるんだねぇ。ここまでするのに何年かかったと思ってるんだい。4000年だよ、4000年かけて集めた魂がこれっぽっちしか無いって、あなたどれだけ無駄にしてくれたかわかってるのかい?」
「どのぐらい集めたかは知らないが、そんなに魂を集めて何がしたいんだ」
「そんなの決まってるじゃないか、あたしは神になるんだよ。その為に道士を集めて魂を食わせて仙人にして、ミザイバードに進化させる事で更に魂を上質にして食ってたんだけどねぇ。あともう少しのはずだったのに、これじゃまた2000年は掛かっちまうよ」
「その魂って人間の魂か」
「何を当たり前の事を言ってるんだい? 人間の魂じゃないと仙人になれないからねぇ」
「もうお前は排除決定だが、まだ復活できるのか?」
「さぁ、どうだろうねぇ。ただ、この場所を譲る気は無いからあなたには退場していただくわ【九聖術】!」
バーミは私に何かしたようだが、何も変化はしなかった。
「何ぃ! どういう事だい! なぜ魂を分離できない! あなた何者?」
【九聖術】はさっき盗ったからな、【那婆羅】が補助してくれたら同じ【九聖術】は効かないだろうな。
「お前が復活できるかどうかは後で調べる事にするよ。先にお前を排除させてもらう」
私は刀を出し、天井付近まで飛び上がった。
バーミも無数の羽を飛ばしたり嘴で攻撃をしてくるが、すべて刀で捌く。
刀を縦一閃! バーミの身体が真ん中から左右に割れた。
ズズーン!
割れた左右の身体が床に落ちた。
今度は収納できた。バーミを倒せたようだ。
他にさっきの枝の様なものがないか、再度家を解析して確認する。
特に違和感は無い。もし復活できたとしても、それは何千年か先の話しだな。
さ、戻ろうか。
道士はバーミがすべて魂を盗ったようだし、仙人ももういない。バーミも倒したし、これで世界樹にちょっかいを出す者もいないだろう。いたとしても、今は護衛をエルが出してくれたから大丈夫だろう。
ココア達と合流し、世界樹の所まで転移で戻った。
「あ、タロウ様、おかえりさない」
アメーリアが1番に声を掛けてくれた。他の者達も続けて声を掛けてくれる。
「こっちは何も無かったか?」
「ええ、何もありませんでした。タロウ様の方はどうでしたか?」
「バーミリオンが黒幕だったようだ。もうお排除して来たから大丈夫だと思う」
「バーミリオンですか!? 聖なる鳥バーミリオンが・・・」
イクスプラン教の神鳥の扱いをしているバーミリオンが黒幕だったと聞いてアメーリアはショックを受けたようだ。
「こっちは別世界だ。名前や種類は同じでも、聖なる鳥では無かったぞ。人間の魂を食いまくっていたようだからな」
「そんな悪い魔物だったのですね」
「ああ、だからショックを受ける事は無いんだ」
「わかりました」
アメーリアは笑顔で答えてくれたが、そう簡単に割り切れるものではないだろうな。
「さ、これでこの世界に来た目的は果たせたが、帰る前に何かやり残した事は無いか?」
いつでも来ようと思えば来れるんだが、もうこの世界には来ないかもしれないな。
「お父様! 私モヤモヤしてます! ダンジョンに行きましょう!」
「そうね、私もエルに賛成です。私もモヤモヤしてます」
「こっちの世界のダンジョンに行ったら余計にモヤモヤしないか?」
「いいんです! 今すぐ行きたいんです!」
「わかったよ、でも他のダンジョンは知らないから同じダンジョンになるぞ」
「構いません!」
「ドフィ、そういう事みたいだ。後の事はお前に任せるぞ」
「かしこまりました」
町の名前は確認してなかったが、アルハンのいる冒険者ギルドまで転移した。
冒険者ギルドの前には、まだ人だかりが出来ていたから2階の窓から入った。
アルハン達が気絶から回復して魔石やアイテムを確認していた。
「すまん、下が混雑してたからこっちからお邪魔するよ」
「おわっ! あっ! あなたでしたか。本当は厳罰に値しますが、ダンジョン制覇もしていただいてますし下の混雑もわかりますから、今回だけは目を瞑ります。今回だけですよ」
「ああ、すまんな。実は今からまたダンジョンに行きたいんだが、許可はいるのか?」
「ま、また行くのですか? それも今から?」
「ああ、ダメか? 人間の管理しているダンジョンには知識が無くてね、一応聞きに来たんだ。ダメでも行くがね」
「もちろん行って頂いて結構です。ただ提出頂いた魔石やアイテムの確認が終わっておりませんので、精算は戻って来てからになりますが」
「それで構わない。じゃ、行って来るぞ」
「は、はい。わかりました」
窓から出て行こうとしたが、今度はアルハンに止められて1階から出る羽目になった。
もちろん大混雑中。出られない。
アルハンが出て来て「今からまたダンジョンに向かわれます、道を開けてあげてください」と説明してくれたらざわめきが起こり大歓声に変わり道を開けてくれた。
人が割れて出来た道を通るって卒園式の園児になった気分だな。恥ずかしい。
ダンジョンに向かう私達には来た時の3倍以上の人達が付いて来る。もう恥ずかしさ満開、勘弁してくれ。
飯も食いたいが、これはダンジョンに入ってからだな。
ダンジョン受付で、また兵に驚かれ色々質問されてようやくダンジョンに入れた。
今回はエルが先頭で【聖王気】をバンバン放って憂さ晴らしをしている。やはりアメーリアは少し遅れるので、また私が抱き上げてダンジョンを走って攻略して行く。
なぜか、アメーリアのモヤモヤは収まったらしい。
途中で食事も摂り、7時間でダンジョン制覇した。
出て来た魔物が少し変わっていたので、ダンジョン核を元の物に戻しておいた。
最下層で1泊して朝食を摂ってから地上への転送魔法陣に入った。
出て来たら朝の混雑が終わった時間だったので、そんなに目立つ事も無く管理所の兵に制覇して来た事を報告。管理所を出るとまた人が集まって来ている。
急いで冒険者ギルドに向かったが、冒険者ギルドに到着したころにはまた人だかりになっていた。
何とか冒険者ギルドに入るとアルハンがまた迎えに出て来てくれていて、そのままマスタールームに通してもらった。
先に前回の報酬として金貨1300枚を貰った。
多すぎないか? と思ったが、ダンジョン制覇で町も活気づくので、ダンジョン制覇の報酬が高いそうだ。
今回の回収した物を出したら、やはりマスタールームが静かになった。
今回は魔石が前の時の倍の105個あったので、やはり魔石を出している時にダウンしたようだ。魔石(大)も1個あったしね。ダンジョンマスターがオーガロードに変わっていたから。
もうこの世界での用も終わったので、この場で『扉の指輪』を全員填めて異空間に転移した。
既にコスモも待っててくれた。
「よぉ、どうだった? おまけは役に立ったか?」
「どれがおまけかわからなかったが、役に立つものは手に入れたよ」
「あのダンジョンで良い物があっただろ。戻った後のタロウが・・・、これ以上言ってしまうと面白く無いな」
「何が言いたいかわからんが、戻してもらっていいか? あ、アメーリアの宮殿がいいな。できるか?」
「ああ、わかった。またすぐに来るんだろうけどな。おっと、これ以上は言わないでおこう」
「お前、言いたいんだろ」
「そ、そんな事は無い。送るぞ」
コスモが誤魔化しながらアメーリアの宮殿に送ってくれた。




