第181話 獣王ロロ
酷い国だな、皆して奴隷を集め甚振って生贄にしていたなんてな、もっと殺されてたんだろうな。それも当たり前に。
先に建国をするか、いや先にバンブレアム帝国だな。
「ララ、ロロ、ピア、ユウト。誰が王になるんだ?」
「私はいいよ、ロロがやりなよ」
「ボクもいいよ、ピアがいいんじゃない?」
「いやいや、ここはロロはんでっせ。獣王はやっぱり強よぉないとあきまへん」
「獣王でっか。ほんまにほんまに獣王の誕生でっか・・・」号泣。
「そうだよロロ、獣王はやっぱり強い王でないとね」
「それじゃあ、姉ちゃんも同じぐらい強いじゃないか」
「いやいや、やっぱり王でっさかい、男はんにやってもらわんと」
「そうだよ、ロロがんばりなよ。死んだお父さんもお母さんも絶対そう言うって」
「あ、汚ねーな姉ちゃん。そんな事言われたら断れないじゃないか」
「ほな、決まりでんな。ロロはんが獣王で決まりや」
ユウトは絶賛号泣中。
「決まったみたいだな。じゃあロロ行くぞ」
「行くって兄ちゃんどこに行くの?」
「行けば分かるよ」
ゴーレーン国国王とロロを連れてバンブレアム帝国に転移した。まだ朝早かったから出陣式も始まって無い。
間に合ったみたいだな。ノア達は無駄になったけど、それで良かったよ。
城に行き王に面会を求めた。
入城はすぐにできたが、王には中々会えなかった。出陣式の準備で忙しいのだろう。
だったらこのまま出陣式に乱入してやろう。
城の中庭に1000、城の裏には5000、東門の外に10000、北門の外に10000。先発隊として総勢26000の兵が出陣式を待っている。
中庭の1000の精鋭の中には第1王位継承者ローゼッテンの姿も見える。
ダムダライド王国からの合流予定の軍隊が10000。その後にバンブレアム帝国からも第2陣、第3陣も出陣する。
バンブレアム帝国はこの大陸一の強国である。元は初代帝王によりこの大陸全土を支配していた国である。今でも各国が連合を組んで戦争を仕掛けても負ける事は無いだろう。
西の大陸の各国がバンブレアム帝国より独立する時にどの国にも『バンブレアム帝国からの援軍要請あった場合、速やかに協力する事』と必ず承諾させている。これを破るという事はバンブレアム帝国に反旗を翻すという事になり、バンブレアム帝国との戦争を起こす事になる。相手はこの大陸最強の帝国、しかも自国が不利な立場での戦争になるので、出兵しない国は無い。
今回は東のアクアリア国、タイスランド公国、サハラン公国、マーメライメント王国には昨日のうちに出兵の援軍要請を出した。南のエンダーク王国にはバンブレアム帝国の後発と合流するように通達も出ている。
各国としてはここで出兵をしないとか、出兵した数が少なければ、次はその国がバンブレアム帝国の標的になりうるとあって必死に兵を掻き集める。これは援軍要請という名の命令書と同じだ。
援軍要請の通達は使者がバンブレアム帝国の王の印がある書簡を届ける事になっている。通信水晶や使い魔での配達や伝達では無く、バンブレアム帝国から人間の使者により援軍要請が届けられる。
早馬で命令書を届けるため、1番近いタイスランド公国でも5日後になるが、通信水晶などの伝達により命令書が来ることは既にわかっている。各国は既に出兵の準備に入っていた。
ただ、これらの取り決めは本来国家間での戦争の抑止力の為でもあるが、魔王クラスの魔物対策としての取り決めだったのだが、今回史上初めてバンブレアム帝国がその権利を行使した。
タロウの一言で酷い事になってしまった。
このままではツンザンブレーン連邦全域が滅んでしまうだろう。
今までゴーレーン国の城に居たタロウは、ここまで大事になっているとは夢にも思っていなかった。
中庭で高らかにファンファーレが鳴り響く。
王が城の3階のバルコニーから中庭に向かって宣言しようとしたが邪魔が入った。
「ちょっと待ったー!」
ロロがゴーレーン国王を連れて中庭に現れた。
「その出陣は待ってくれ!」
「なんだお前は」
「ボクか、ボクは獣王だ! ボク達がゴーレーン国の城を滅ぼし王を捕えた!」
「獣王? その連れている者がゴーレーン国王か」
「そうだ! 今からこいつを倒してボクが獣王となり国を治める!」
「ほぅ、獣王とな。誰かその者がゴーレーン国王かどうか確かめよ」
「「「はっ!」」」
中庭にいた兵達にゴーレーン国王を引き渡し調べさせた。
その間に王の後ろで大臣が王に耳打ちをしている。
「其方、後ろ盾はあるのか」
ロロが小声で言って来る。
「兄ちゃん、何て言えばいいの?」
私が透明の指輪で消えてロロに付いている。
「無いって言え」
ロロは分からないように小さく頷いた。
「無い!」
「無いのか、では儂が後ろ盾になってやろう。国の名前は何とする」
「・・・・獣人国!」
「獣人国だけか?」
「獣人国・・・バルダン!」
「獣人国バルダンか、よし認めよう。ゴーレーン国王を倒す事で其方を獣王として認め、我がバンブレアム帝国が後ろ盾になろう」
兵がゴーレーン国王を連れて出て来た。
「王様、間違いありません。この者はゴーレーン国王です」
「わかった。ではロロ殿、その者を成敗せよ」
「はい!」
ロロが得意の長剣を一閃!
「見事だ! 其方を獣王と認めよう。こちらに上がって来るといい、其方の主も一緒にな」
「兄ちゃん、なんかバレてるみたいだよ」
「そうみたいだな、ロロの名前も知ってたな。仕方が無い、行こうか」
出陣は中止になり、各国へも出兵の中止が通達された。
私とロロは王の元へやって来た。
「いつからわかってたんだ?」
「この獣王を名乗ったロロ殿はウルフォックスであろう、大臣が教えてくれたわ」
「そうか、そりゃバレるか。」
「そんな回りくどい事をせずとも、タロウ殿が帝王を名乗れば済む事ではないか」
「それは断る。それよりも、頼みたい事があったんだ」
「なんだ?」
「2つあるんだ。1つは各国に獣人が沢山いるだろ? それを集めたいから各国に声を掛けて欲しいんだ。なんなら買い取ってもいい」
「わかった。奴隷の者も多いだろうから買い取りになるであろうな。いくら出せる」
「1人金貨10枚でどうだ」
「そんなに出せるのか。かなりの額になるぞ」
「それは大丈夫だ。出し渋って奴隷のままにされる方が嫌だからな。それともう1つは勇者召喚についてだ」
「どういうことだ?」
この国でも勇者召喚はやっている。王の顔が険しくなる。
「今までの事はいい、もう戻すことは出来ないからな。ただ今後は奴隷など生贄を使った勇者召喚は辞めてくれないか。今回ゴーレーン国で城中の人間の命を奪っておいて言える立場でも無いが、やっぱり生贄は辞めて欲しい」
「それは難しいの、今はタロウ殿がおるからいいとして、今後魔王が襲ってきたらやはり勇者召喚する国が出るであろうな」
「私は勇者召喚がダメだと言ってるんじゃないんだ、生贄を辞めて欲しいと言ってるんだ」
「生贄以外に何か方法があるのか?」
「大きな力が生み出せればいいんだろ? それなら考えがあるんだ」
王に耳打ちをした。
「なんと! そんな事ができるのか! それならば生贄はいらんかもしれん」
「そうだろ? 後は管理の問題だと思う。」
「それはこちらで考えよう。流石は帝王だな」ふぉっほっほっほ
「いくつあればいい?」
「そうだのぉ、50は欲しいかの」
「そんなにか。いったい何人呼ぶ気だよ。その分生贄を無くしてくれるんなら出してやるけどな」
「では、保管所を作ったら連絡するとしよう。各国には獣人の買い取りと勇者召喚についての話しと獣人国が出来た事を通達すればよいな」
「ああ、それで頼む。じゃあ、私達は獣人国バルダンに行ってやることがあるから」
「兄ちゃんごめんよぉ。咄嗟に浮かんだ名前がお父さんの名前だったんだ」
「それでいいじゃないか。バルダン、良い名前を付けたじゃないか」
「えへへ、うん!」
ロロは嬉しそうだ、ララも喜ぶだろうな。命名の理由を聞いたらユウトはまた号泣か?




