第174話 おしおき
転送魔法陣を書き換えて天空城に行けるようにした。
戻って来たらまた世界樹の枝を出してやると言って選んだ15人と順番に魔法陣に入った。入った順番に天空城に現れる。最後のココアが出て来たので連れて来た者達と城ダンジョンに入った。
私達が入るとイチコが降りて来て迎えてくれた。
連れて来たエルフ達は普通に挨拶できていた。イチコに促されて世界樹に近づいて行く。
皆優しい顔になっている。ここの空気はエルフにとっては私達より心地良いんだろうな。
世界樹まで10メートルまで近づいた時に、まだ分かってないようなので教えてやった。
「これが世界樹だ」
エルフ達が壁だと思ってたものが世界樹で、その大きさは自分達の想像を絶する大きさに驚き見上げて葉を見て世界樹だと分かると、全員が泣いていた。その場で立ち尽くしたまま動かなくなった。
世界樹への憧れって、そんなにも凄い物があるんだな。
「イチコ、こいつらってここに住めるのか?」
「エルフがでございますか?」
「そうだ」
「住めなくは無いと思いますが、何人ぐらいいるんでしょうか?」
「んー、6000人とか言ってたな。」
「6000人でしたら住めなくは無いと思いますが、この者たちの様に若いエルフだけですか?」
「え? こいつらって若いの?」
「はい、若いエルフは私達の声がそんなに響かないでしょうが、古いエルフや能力の高いエルフには私達精霊の声は苦痛ではないでしょうか」
そういう事だったのか。それなら長老達は無理じゃないのか? なんとかならないもんか。
「お父様、先に言っておきますが、さっきのエルフの里には世界樹は創れませんよ」
「え? ダメなのか?」
「はい、あそこの空間は特殊すぎます。うまく創れる自信がありません。それに創れたとしても、すぐに枯れてしまいます」
それも困ったな。エルフ達は隠れたいんだろうし、そこでは世界樹が創れない。
世界樹の枝であんな反応なんだ、世界樹も見たいはずなんだよな。こいつらだって感動して涙流したまま、まだ動いて無いもんな。
でもどうして隠れてたんだっけ? あー、デイもそうだけど魔物から逃げてたんだったな。あそこは私の領地だし、隠れる必要は無いんだけどな。でも、エルフって閉鎖的ってイメージがあるし、難しいかもな。聞いてみないとわからないけど、あの閉鎖空間は解かないような気がするな。私の領地で世界樹ってのも色んなものを呼びそうで嫌だし。
人間界には世界樹は無いもんな。ん? 人間界には妖精樹があるか。妖精樹ならどうなんだろうか。
妖精樹かぁ、1度長老達を連れて行ってみて、後は相談だな。
まずは世界樹を見た奴らの感想を伝えてやらないとわからないだろうし、こいつらを連れて帰って3長老と相談だな。
感動でいつまでも放心状態で流れる涙もそのまま突っ立ってるエルフ達を見て、もう少し居させてやる事にした。
イチコに見てもらってる間に研究所ダンジョンも覗いておこう。
研究所ダンジョンの最下層に短刀の転移で来たがレイはいない。
1つ上の階層ではエルミアが研究に没頭中だったので、声を掛けずに上に上がった。
ここにはコーリンベルがいるはずなのに、ここにもいない。
またやってるのか。
今日はエルもいるから連れて行きたく無いなぁ。絶対スケールアップしてるのは想像つくし。
「くっそ~、またやられた~」
「あんたのせいで、私までやられちゃったじゃない」
下から風の妖精が上がって来る。
やっぱりやってるんだ、サバゲーリアル。
こいつらはやられて復活した奴らだな。
二人で話に夢中になって私たちを通り過ぎていく。
おい! お前らはダンジョンの安全維持もやってるんじゃ無かったのか? 私達は関係者ではあるけど、全く気付かないってのは無いんじゃないか?
4人の視線を一手に集めてるにも関わらず、2匹の妖精は階段を上がって行った。
「「えーー!!」」
上がったと思ったさっきの妖精がすぐに階段を降りて戻って来た。
フリが長いわ。
「武器の人ー!」「弓の人ー!」
「今日も武器を創ってくれるのー」
「ボクまだ貰って無いんだ、創ってー」
「ちょっちょっと待て、レイとコーリンベルは? 今日もサバゲーリアルをやってるのか?」
「サバゲー?」「リアル?」
「あ、お前達は戦争ゲームとか言ってたな」
「やってるよー」
「今日は負けそうだよ」
「前はいつやったんだ?」
「昨日やったよ」
「そうそう、昨日昨日」
あいつらー
「昨日は勝ったんだ、そしたらコーリンベル様がリベンジだーって言ってね」
「そうなんだ、今日も軽くやっつけてやろうと思ったら、あんなの無いよな」
「あんなの勝てるわけないよ」
「そうだ反則だよ、あんな助っ人」
「助っ人?」
助っ人なんか呼べたっけ? ここはレイが管理するダンジョンだろ? コーリンベルが呼べるのって自分が召喚する妖精だけじゃないのか?
「助っ人って?」
「ノア様が連れて来たんだ」
「ノアが?」
なんでノアが関わってるんだ?
「ちっちゃいくせに強いんだ」
お前達もちっちゃいぞ。
「あの必殺技も強すぎー」
必殺技って・・・・
「それって魔物か?」
「「スライム!」」
ソラかー!
私達は急いで2階層目に上がった。
戦場フィールド層と化した2階層目に上がった時には決着が付いていて、世界樹の実をレイがコーリンベルに渡している所だった。
コーリンベルの後ろには扇子の式具を持ったノアが扇子で仰ぎながら「ほーほっほっほ」って笑ってるし、その横ではスライムがポンポン跳ねている。
「レイ様ー! 武器の人ー」「弓の人が来たよー」
私達と一緒に上がって来た風の妖精がレイの元に駆け寄る。
・・・名前じゃないんだ。弓の人って・・・。
「武器の人?」
「弓の人?」
レイとコーリンベルが同時にこっちを見た。
「「あっ! タロウ様!」」
ノアが逃げようとしている。
「ココア! 逃がすな!」
「かしこまりました!」
ココアはノアの前に回り込み、ノアの行く手を阻んだ。お互いに武器は出してない。が、どちらも式具は出している。
「わらわは何も関係ないのよぉ、だからそこを通してくださるぅ」
「そういう訳には参りません、タロウ様の命令ですから」
「それでは無理やりのでもぉ通して頂こうかしらぁ」
パコーン!
後ろからノアの頭を叩いてやった。
「痛ーいぃ」
「当り前だ! 何を仲間で戦おうとしてるんだ! それにこれは何だ! 妖精がソラに敵う訳無いだろ。」
「ソラ様?」
レイがまだポンポン跳んでるスライムに目をやる。
コーリンベルが階段を降りようとそーっと逃げていく。
しかし階段の前にはエルとアメーリアが立っている。
「エ、エル様?」
コーリンベルは逃げるのを諦めた。
コーリンベルはアメーリアとエルに連れられて戻って来た。
ノアも交えてレイの所に集めた。スライムはまだポンポン跳んでいる。
「ソラさん、もうバレてますわよぉ」
「え? そうなのー?」
バレて無いと思ってたのか? さっき名前が出ただろ。
ボフン! 煙が上がりスライムがソラに戻った。
最近、そういう風に変身してるんだ。ま、狐だからね。頭に葉っぱはいらないのか?
ノア、ソラ、レイ、コーリンベルを正座させ説教を1時間。
可哀相だが私がさっき大声を出したので、妖精達も直立不動のままだった。
今回はコーリンベルが事の発端のようだった。
昨日も負けたのが悔しくて酒樽を冷やしに来たノアに相談を持ち掛けたら、エルミアの所に出入りしていたソラを見つけたノアが閃いた作戦だった。
ソラが変身できることを知ってるノアが、ソラをスライムに変身させ助っ人として参加させようとコーリンベルに提案した。
もちろんその提案を飲んだコーリンベルが助っ人にスライムを入れてリベンジマッチを申し込んだ。
賭け金3倍で。(世界樹の実3個)
スライムぐらいなら敵では無いと思ったレイは掛け金3倍に目が眩みリベンジマッチを受けた。
結果は御覧の通り、ソラの1人舞台。当り前だ。見た目はスライムだが中身はソラだ、蟻を蹴散らすドラゴンと言ってもいいだろう。
騙したコーリンベルには世界樹の実を100個没収。アイデアを提供したノアには酒樽が生る米の木に1か月立ち入り禁止。スライムに変身して妖精達を蹂躙したソラにも世界樹関係を触る事を1か月禁止。騙されたとはいえ2日連続でサバゲ―リアルをしたレイも世界樹の実を50個没収。
次に見つけたら、この倍の罰を与えると言って解放した。
ホント、バトルに関してはよく頭の回るやつらだよ。




