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第173話 再びエルフの里

アジトの屋敷で自室に戻り整理してみた。

ピアとユウトの村については、今後様子を見ながらになるだろうが、もう大丈夫だろう。

トオルもチビと楽しくやってるようだから、放って置いてもいいだろう。母上をお助けするという事も忘れてないみたいだし、ソラは抜けたけどイツミとヨッコはそのまま付いて行くみたいだから目標達成も意外に早く終わるかもな。討伐対象もゴブリンだしな。

南の元勇者達だって1週間もすればベッキーが満足する強さになれるだろうし、帰って行くだろう。その時にはハルも付いて行くんだな、何か餞別をあげないとな。何がいいかなぁ、通信水晶あたりでいいか? 従者同士は『念話』できるからモイチとケンには連絡できるだろうし私にも何かあったら連絡して来るだろう。それならお金か。ピアじゃ無いけど芸が無いよな。家でも買ってやろうか。

『壁』もなぁ、解析だけでも先にしておくか? 異世界で創った世界樹と仙人達。あと海の神子に貰った玉手箱。何かが起こりそうな気がして怖くてまだ開けてないんだよな。

武器はメタル系以上に強力にする必要も無いけど、獣人の村も出来たし創っておこうか。獣人の村のの者達は弱いって話しだから、弱くても通用する武器とか。その辺はピアとユウトがフォローするかもな。武器と言えばマーメライの武器屋の師匠に和弓の事を尋ねたままだったな、一度寄ってみるか。『壁』さえ通り抜けられれば東の国に行けて和弓や刀も見に行けると思うんだよな。もう元の世界に戻るって目的から外れて来てるよな。でもいつでも異世界の管理者コスモに言えば戻れそうだし、慌てなくてもいいだろ。

やる事はいっぱいあるのに目的が無いんだよな。クリエイターも私には敵がいませんって言ってたしな。私は戦闘狂でも無いし国を創って治めたいというものも無い。普通のサラリーマンだった私にそういう物がある訳無い。元の世界ではバツイチだったからこっちで嫁探しでもする? 若くもなってるし、財力もあって強いし。十分養って行けるだろうけど、ここには周りに仲間がいて自分の居場所だっていうことはわかってるけど、まだ自分の世界じゃないって思ってて踏ん切りが付かない所があるよなぁ。

会社でも立ち上げるか? それも悪くは無いんだけど、元の世界であくせく働いて来てこっちでもそれをするの? 保留だな。

正義の味方? 柄じゃない。悪の化身? 性格上難しい。王様? 今なら無条件で帝王になれるらしいけど、いらないな。社長? さっき保留したな。

普通、こういう世界に転生された者って目的を果たした後って、今の私みたいになるんじゃない? 元の世界に戻された奴って、転生前とより優遇はされるようだけど基本は同じように生きるんだし、ハル達の様に断って残った者でも同じだろ? それなら私のやりたい事をやればいいんだよな。それなら今までと同じか。でも普通はそうか、この世界は娯楽が少ないからやりたい事が遊びたい事に繋がらなかったな。

今回、獣人の村を創った事で、目的と違うことをしたと感じたけど、そうじゃない。やりたい事をやっただけだ。元々目的なんて無いし。

それなら今までやってきたことも不本意ながらって事も幾つかあったが、やりたい事をやってきただけだし、振り返ってみれば結局楽しかったよな。

じゃあ、今後も楽しめるように皆も楽しめるようにして行くだけだな。

興味本位で足を踏み入れた世界だけど、私には良い事しか無かったよ。まだまだ知らない事も多いみたいだし、これからもやりたい事をやって行こうか。

何か娯楽も考えたいな。うちの連中はダンジョンが娯楽ってなってるけど、一般には違うよな。楽しけりゃいいんだけど、一般の人達も楽しめるものがいいよな。

それはその内考えるとして、明日はエルフの村だったな。エルの負担を軽くするための秘策もあるし、明日は楽しみだ。


翌朝、朝食を済ませココアを連れてアメーリアの宮殿に転移して来た。

もうエルが魔法陣の前で待っていた。

「おはようございます、お父様、ココアさん。」

「おはよう、早いな。」

「おはようございます。」

「アメーリアは?」

「お母様はまだ中です。すぐに呼んできます。」

エルが走ってアメーリアを呼びに行った。

少し待つとエルに代わってアメーリアが出て来た。

「おはようございます。エルはもう少し掛かりますので、中に入ってください。」

「どういう事だ?」

「あの子、朝早くから来てずっとこの魔法陣の前で待ってたんです。朝食を先に食べなさいと言っても聞かず待ってたんですが、やはり食べさせないといけませんので、朝食を食べないとお父様に言ってお留守番にさせますって言ったらやっと聞いてくれました。」

「じゃあ、今は朝食中か。」

「はい。」

子供か! あー、まだ子供だな。

「じゃあ、中で待たせてもらおうか。ココア、行こうか。」

「かしこまりました。」

私達も宮殿の中に入り、紅茶を出してもらった。そう言えばコーヒーもまだ試してなかったな。

紅茶を飲みかけた時、エルがやって来た。

「お待たせしましたー。」

「えらく早いな、ちゃんと食ったのか?」

「エル! 早すぎます。ちゃんと食べたのか確認に行きますよ!」

「ちゃんと食べました。」

「そんなに慌てて食べるぐらいなら、先に食べておきなさい!」

「そうだぞ、アメーリアの言う通りだ。アメーリアや執事さん達の言う事をちゃんと聞かないんなら、どこも連れて行けないな。」

「それはダメ! ちゃんと聞きます。絶対聞きます。分かりました、お父様。」

ホント子供だな。

「今回だけだぞ。アメーリアもそれぐらいで許してやってくれ。」

「わかりました。エールー、今回だけですよ。

「わかりました、お母様。」

「今、紅茶を入れてもらった所だから少し待ってくれよ。ん?」

後ろで見ていた執事が何度も頷きながら涙ぐんでいる。

「どうした? 執事さん。」

「い、いえ。本当の親子の様に微笑ましい雰囲気に私、感動しておりました。あの小さかったお嬢様が・・・、そして神子様が・・・。」そこまで言ってハンカチで顔を覆ってしまった。

「タロウ様、行きましょうか。」

アメーリアがこっそり言って来た。

「うん、そうしよう。」

私達はこっそり宮殿を出てエルフの里に転移した。

残された執事がハンカチを取った時には誰もいなかった。

「あれ? 皆様は?」


そんな執事は放っておいて、私達はエルフの里の3長老の屋敷の庭に転移してきた。

世界樹の枝もそのままだった。

屋敷から世界樹の枝が見える部屋には3長老が座っていた。

その前に突然4人が現れたからビックリしたが、現れた者の内2人が先日やって来たタロウと聖母だと気付くとその場で平伏した。DOGEZAだね。

「ははー。これは聖母様、タロウ様。ようこそおいでくださいました。」

「すまない、急に来てしまって驚かせてしまったか。魔法陣を別の所に創れば良かったな。」

「とんでもございません、私共はいつでも歓迎致します。」

「それなら顔をあげてくれよ、先に紹介したいから。」

3長老はそう言われてやっと顔を上げてくれた。

「私とアメーリアはこの前会ったからもういいな、こっちがココアでこっちがエルだ。」

3長老に2人を紹介した。2人も会釈した。

「ははー、世界樹の神子様でございましたか。失礼いたしました。」

再びDOGEZA。

「いや、何も失礼してないぞ。こんな感じじゃ話も出来ないな。帰るか」

その言葉に慌てて3長老が四つん這いで高速で近寄って来る。

「とんでもございません、是非とも是非ともお上がりください」

「帰らないでください」

「しばし! しばしお待ちを!」

おいおい、最後の奴武士になってんぞ。

「わかった、帰らないから普通にしてくれ。じゃないと本当に帰るからな。」

「分かりました! 普通に致します。絶対普通に致します。」

もうそれが普通じゃないんだけど。

「わかったよ、少し話もしたいし上がらせてもらってもいいか?」

「このような所で申し訳ございませんが、お上がりください。」

ギロ。少し睨んでやった。

「こ、これ以上は無理でございます。ご勘弁ください。」

「タロウ様、それぐらいにしてあげてください、ミスランディ様が困っていますよ。」

「お、恐れ多い、聖母様。名前を憶えて頂いただけでも誉でございますのに、様などと呼ばれては困り果ててしまいます。呼び捨てでお願い致します。」

「・・・・。」

「アメーリアも困ってるよ、長老達ももう少しリラックスできないか?」

「これ以上はご勘弁ください。」

「・・・・。」

なんでここまでになってるんだ? これか? この世界樹の枝があるからか?

1回収納しておくか。世界樹の枝を収納してやった。

「おお!?」

世界樹の枝で見えなかったが、世界樹の枝の向こう側にもエルフ達がたくさんいて平伏していた。どゆこと?

「なんだこれは? ミスランディ、説明してくれよ。じゃないと世界樹の枝はもう出さないぞ」

「は、は、はい。タロウ様が置いて行ってくださった、この世界樹の枝は私達にも非常に気持ちの良い聖なる気を纏っておりました。あれから毎日ずっと眺めております。他の者達も見たいと言う要望が非常に多く、庭の垣根をすべて撤去し外からでも見れるようにしました。今日も外から見ていた者達が聖母様とタロウ様が来られたのを知り平伏しているのでしょう。」

毎日見てたの? 1日中? ずっと? そこまでの奴らに世界樹なんか創ったら誰も何もしなくなるんじゃないの? それでもいいのか?

「んー、お前達は免疫が無さすぎるな。何か方法はないのかな。」

「お父様? いっそ世界樹の所に連れて行ってあげてはどうですか? 本物を見れば枝ぐらいと思いませんか?」

「「「おおおお!」」」」

小声の歓声が上がる。そこは大声でもいいんじゃないか?

「それはいいかもな。でも大丈夫か? あそこにはドライアドが1000体以上いるんだろ? こいつら死んじゃわないか?」

ギュッと腕を掴まれた。ミスランディが私の腕を掴んでいる。

「ん、ん、んー」

「いや、声が出て無いから。」

「はぁはぁはぁ、世界樹が見れるのでしたら死んでも構いません。是非とも是非ともお連れくださいませんか。どうかどうか。」

「ちょっと落ち着こうか。死なれたら困るんだ。でも今エルはしゃべっても大丈夫だったな。エルミアなんかエルが話す度に直立不動になってたよな。」

「そうでしたね、そう言われるとここの皆さんはまだマシですね。」

「じゃあこうしよう、死なないって奴と敬語は仕方が無いとしてももっと普通に出来る者を10人連れて行こう。」

3長老がいきなり項垂れた。

他の者達の一瞬立ち上がりかけるが、すぐに座って俯いてしまった。

どっちだ? 死なない方か? 普通にできない方か?

「お父様、私が試してみます。」

「なにをだ?」

エルは大きく息を吸い込むと大勢いる方に向かって大声を出した。

「みなさーん! 私はエルでーす! よろしくお願いしまーす!」

半分ぐらいの者が気を付けになった。もちろん3長老も直立不動だ。近いけど後ろなのにね。

「ははは、なるほど面白いな。じゃあ、今座ってる奴! こっちに来い。」

いいのかなぁ、みたいな感じで座ってる者同士顔を見合わせている。

「早くしろ!」

そう言われてすぐに来た者、普通に来た者、恐る恐る来ようとしてる者。素早く来た者は来ると同時に土下座。普通に来た者は前の奴が土下座をしているのを見て土下座。グズグズしているものはまだ迷ってて来ない。普通に来た奴で決まりだな。


普通に来た者が15人だったので、そのまま15人連れて行く事にした。


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