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第172話 獣人の引っ越し

後は、ピアとユウトが帰って来たら調度品を各家に入れて、アーリーの罠が出来上がれば引っ越しさせられるな。おっ、ピアとユウトが帰って来たな。

「帰って来たな、おかえり。今から村長さんを呼びに行って来るから中央の屋敷だけでも中の調度品を揃えて置いてくれ。」

「うっひゃ~、こんなに家が建ちましたんかいな。()うて来た分やとちょっと足りまへんわ。」

「今回はいいんじゃないか? アーリーが多めに作ったから全部の家を使う訳じゃ無いだろ。」

「そうでんな、村の家族分だけでも完成させときまっさ。」

「じゃあ、行って来る。」

「「行ってらっしゃいませ。」」


さっき創ったピアとユウトの村の外に転移して来た。

そのまま村長の家に行ったら人だかりが出来ていた。村長の家の中で会議が行われているようで、村の者も気になるので集まっているようだった。

引っ越しについて反対派と賛成派で話し合っているようだった。普通はそうなるよな、慎重な奴がいてくれて逆に良かったよ。

「村長さん、お邪魔するよ。」

「おお! あんたか。ちょうど今、村の者と話し合ってた所じゃよ。」

「そうみたいだな。賛成派と反対派か。どっちもまずは私の話を聞いてくれないかな。」

「俺は反対だ! そんな美味い話しがある訳が無い。強制労働ってオチが有りそうな気がしてならねぇよ。」

反対派の狸の獣人が息巻いて来る。

「私は賛成だ。今以上に苦しい生活なんか無いよ。どこに行っても同じなら少しぐらい夢を見たっていいじゃないか。」

賛成派の兎の獣人も意見をぶつける。

「確かに私はあなた達と面識が無いので疑う気持ちはわかる。でも、今回の件は私の仲間になったピアとユウトの希望なんだ。願いなんだ。あいつらはこの村に恩返しをしたいと頑張ってきた。私はあいつらの主人でその願いを叶えてあげたいと思ったから今回の提案をさせてもらった。しかし疑う気持ちも十分に分かる。だからこれから一緒にどんな所か見て決めないか? もうあなた達の住む所はほとんど出来上がってるから。」

「村が出来上がってる?」

「今から行くって・・・。」

口々に信じられないように呟いている。

「あんた、タロウさんと言ったかな。儂らとは今日初めて会ったはずじゃが、前から村を作っとったのか?」

「いいや、さっきここを出てから作り始めたよ。」

「まだ半日ほどしか経っとらんじゃないか。」

「そうなるかな、だから見て決めてくれ。」

「そうじゃな、まず見てみん事には賛成とも反対とも言えんか。何人行けるんじゃ?」

「何人って、全員でも構わないぞ。」

「それなら皆で行って見た方がええじゃろうのぉ。」

色々言い合う者もいたが、まずは見てみようという事になった。


周りがざわつく中、村長の家の庭に魔法陣を創った。

「この魔法陣に入れば新しい村に転送されるようになっている。この魔法陣は今日1日で消えるように設定した。だから今日1日はここから何度でも転送できるが、明日には消えてしまう。まずは見て、そのままあっちに移ってもいいし、1度帰って来て決めてもらっても今日中なら行けるから、よく考えるといい。」


先に入るから付いて来るように言って、まず私が魔法陣に入った。

転送先の新しい村で待っていると、まず村長が現れた。驚いていたが、そこにいると邪魔になるからと、移動させた。村の者が次々に現れる。転送されてきた順に移動させて1か所に集めた。村の者の殆どがやって来たようだ。

まず中央の屋敷に連れて行き、屋敷の中を案内する。次にアーリー達が作ってくれた四角い家の中を見てもらった。既にピアとユウトが調度品を揃えてくれていた。

それから塀を見せて結界も施してあることを説明した。門は1か所しか作っていないが、希望するなら他にも作る事ができると説明した。

最後に放牧ダンジョンに連れて行き実演で見せてやった。エースとイロハにオークを外に追い立ててもらって、ココアとリクに槍で突いてもらった。

アーリーが作った罠はダンジョンから出ると1メートルぐらいの段差になっていて出て来た魔物はそこに落ちる事しかできない。3つ出口があるから3つの段差のスペースがあり、それぞれに塀で囲ってあって魔物が外に出ないようにしてある。

魔物の通路の横に狩り用の通路が交互に作ってあって槍を突くための小窓も作ってある。今回ココアとリクは狩り用の通路から槍を突いて実演してもらった。

倒したオークはそのまま解体し、村の者に食べさせた。


「どうだ、村長さん。ここで獲った魔物は食べてもいいし売ってもいい。町は少し遠いが、森を出る所までなら魔物に護衛させるから森の中は安全だ。今いる村より裕福な暮らしが出来ると思うがどうだろうか。」

「なぜここまでしてくださるのかのぉ。」

賛成派、反対派も含めて全員が注目する。

「別に理由は無いんだ。ピアとユウトが頑張ってるから応援したかったからだな。あと村長さんもいい人のようだし、村長さんの事も応援したくなったんだ。」

「やっぱり話しが美味すぎる。俺は信じられねぇ。」

反対派の狸の獣人が反対する。

「では、どうやったら信じてくれるのかな?」

「わからねぇ、わからねぇが、今すぐは信じられねぇ。」

「別に私はあなたが来なくても構わないんだ、ただの自己満足だから。それでもあなたの不信感を少しでも取ってやりたい。私があなたから取れる物って何かあるのか?」

「い、命ぐらいだろう。」

「命か、命を取って何をするんだ? いらないよ。他には?」

「何も無ぇ。」

「じゃあ、あなたが取られて困るものは?」

「い、命だし、家族だ。そうだ家族だよ。」

「ここなら家族を今より安心して裕福に暮らせると思わなかったか?」

「思ったさ、凄く思ったさ。こんな所で暮らしたいと思ったさ。だから余計に信じられねえんだよ。」

「時間が掛かりそうだな、後は家族とよく相談して決めてくれ。魔法陣は今日だけしか繋がらないからな。いつまでも繋げてると何が入って来るかわからないから危険なんだ。」

他には無いか村長や賛成派の人達を見渡す。

「あと、別にどれが誰の家かは決めて無いが、中央の屋敷は村長さんに住んでもらった方がいいと思うぞ。」

「食べ物に困らなくなるんですか?」

頷いてやる。

「もう魔物に怯えなくていいんですか?」

頷いてやる。

「どの家でもいいんですか?」

頷いてやる。

「じゃあ、私はあの家ー!」

「私はこっちだー!」

「村長さんも早く早くー!」

「ほぉっほぉっほぉ。そう慌てるな慌てるな、逃げやせんわい。」

全員思い思いの家を選び入って行く。村長も村の子供に手を引かれ屋敷に入って行った。最後にはさっきの反対派の狸の獣人とそれを見守る家族だけが残った。

「なんでぇい、ちくしょう。」

「私はあなたのような人は必要だと思う。あなたも村の者達や家族の安全を思っての事だったと思う。今からでもいい、私を信じてくれないか?」

「・・・・。」

狸の獣人は下を向いて黙っている。

「おっちゃーん! なに意地張ってんねや! うちはなー、うちはなー、ホンマ村の事を思て頑張って来たんやでー。ちょっとぐらいはうちの事も信じてくれてもええやないか!」グスン。

ピアが涙ながらに訴えかけている。

「このタロウ兄さんかて、めっちゃ信じられる頼りになる人なんや。うちを商人にしてくれはったお人なんや。うちみたいな獣人を拾ろてくれはったお人なんや! 絶対に信じられる優しいお人なんやー!うわぁーん。」

ピアが大声で泣いてしまった。横ではすでにユウトが号泣中。

下を向ていた狸の獣人がピアの方に歩み寄り、ピアの頭に手を掛けて謝った。

「すまん、ピア。ありがとう。俺も意地になってたな、今からでもこの村に住むって言ってもいいかな。」

「うわーん、ええよ、ええよ。大歓迎やー。うわーん。」

ピアは狸の獣人に抱きついて泣いている。横でユウトが絶賛号泣中。


もうここはピア達に任せた方がいいだろう。

中央の屋敷に行き、村長に注意をしておいた。

「村長さん、少し話せるかい?」

村長は村の子供達に囲まれていた。

「ほぉっほぉっほぉ。やぁ~ありがとうありがとう、こんなに村の者が笑顔になったのは久し振りの事じゃ。なんとお礼を言うたらええもんか。」

「お礼ならピアとユウトに言ってやってくれ。それより注意しておく事があるから話を聞いてもらえるかな?」

「なんじゃ? なんでも言うてくだされ。」

「注意事項だよ、気を付けなければいけない事を言っておくよ。まず、さっき見せた魔物を狩る事は必ず毎日やってくれ。魔物が出て来なくても絶対見張りは付けておいてくれ。」

「はい、わかりました。」

「それと門番なんだが、うちの魔物にやらせようと思ってる。この辺りの魔物は仲間の配下の魔物が多いから問題無いんだが、偶に配下とは関係ない魔物もいる。見分けが難しいが村の中に居れば安全だ。もし村から出たい場合は門番に言えばいいようにしておくよ。」

「はい、わかりました。」

「それとアイテムを2つ渡しておく。1つはこれだ。」

収納ボックスを出した。

「これは亜空間収納のボックスだ。魔物を狩ったあとはこれに入れれば魔物の通路に入る事は無いから狩りをする者に持たせてくれ。」

「はい、わかりました。」

「もう1つはこれだ。」

通信水晶を出した。

「これで123と押してこのボタンを押せば私に繋がる。何かあったらすぐに連絡すればいい。この水晶は555にしておいたよ。」

「はい、わかりました。」


狩り用の槍も10本置いておいた。

今日は当面の肉を置いて行くけど、今後は米や酒なども、偶には届けさせるよと言って村を後にした。ピアとユウトはもう少しこの村に居たいだろうから2人を残してアジトの屋敷に戻った。


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