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第170話 獣人村

翌朝はユートピア商団とピアとユウトの育った村に行くため、イチジロウを連れてエンダーク王国に来た。ココアとリクも付いて来た。

ここからは馬車で御者台にユウトとイロハに乗ってもらいエースが引いてくれた。

この辺りは良い毛皮が取れる魔物が多かったはずだが、そんなに強くは無かったよな。しかも3勇者が魔王を倒したという事だから、この辺りの魔物はもっと弱体化するだろうな。

普通の馬車なら3日掛かると聞いていたが、エースの【神速移動】で1時間で到着した。到着すると村の入り口から少し離れた所に転送ポイントを登録した。

村の周辺は2メートル程度の石塀で囲まれており、一応魔物対策はしてあるようだ。少し大き目の魔物なら一撃で壊されそうな石塀だな。

門には村の者らしい奴が2人で立っていて見張りをしている。

「まいどー! お久しぶりでんなぁ。」

御者台からユウトが門番に声を掛ける。

「誰だ?」

「もうわいの事を忘れてしもたんですか? ユウトでんがな、ユウト。」

「ユウト? お前ユウトなのか?」

「そうでっせ、もうかなわんわぁ村を出て半年も経ってしまへんやろ。」

いや、わからないと思うぞ。その姿にそのしゃべり、誰にも分からないと思うよ。

「そうだな、でも大きくなったなー。早く村長に顔を見せに行ってやれ。馬車に乗って帰って来るとは出世したんだな。」

え? 分かったの? なんで?


小さな村だった。100軒も家は無かったし2階建ても無かった。

それでも店は何軒かあったし、食堂もあった。なんか、東の国の村を思い出すなぁ。

のんびりした雰囲気のある村だったが、決して裕福では無さそうだ。

さっきの門番もそうだが、ここは獣人の村のようだ。見かける人は全員獣人だ。


「ピア、お前の村って獣人の村だったのか。」

「へい、言うてまへんでしたか?」

「ああ、聞いて無かったな。」

「ほな今言いますわ。獣人の村でおま。」

「それはもうわかったからいいけど、どこに行けばいいんだ?」

「それはユウトが誘導するよって任せとけばええんだす。うちらが世話になった村長はんの所へ行くはずでっさかい。」

「もうその話し方で通すんだな? お前達を知っている人からしたらレベルアップで大きくなってるし、話し方も違えば別人と思われるぞ。」

「うちらは獣人でっさけ、レベルが上がれば大きゅうなるんわ誰でも知っとりま。言葉の方は商人になった証でっさかいなぁ、錦を飾るのにちょうどええんちゃいまっか。」

お前がそれでいいならいいんだけど、わかるもんなのか?


ユウトの誘導で村長の家に着いた。小さな村なのですぐに着いた。

村の中心にある村長の家も、そんなに大きくは無かった。うちの屋敷の1/3ぐらいか。

村に馬車が来ることは滅多にない事なので、あちこちから人が集まって来る。

村長も出て来たようで、ユウトと挨拶をしていた。村長にもユウトだと分かってるみたいだ。


「村長はん、お久しぶりだす。うちら今このタロウ兄さんに世話になっとりまして、商人にしてもろたんです。」

ピアも馬車から降りて村長に挨拶をする。

「そうかそうか、それは良かったなぁ。こちらの方にお世話になってるんじゃな? 初めまして、この村の村長でパンデムと言います。この子達がお世話になっているそうで、ありがとうございます。」

年配の猫の獣人が村長だと名乗り挨拶をしてくれた。ピアも認識されてるよ。

「初めまして。私は少し手助けをしただけで、あとはこの子達が頑張ってるだけです。」

「いやいや、この子達を商人にしてくれただけで本当に感謝です。何も無い村ですが、ゆっくりして行ってください。」


本当に何も無い村だった。食事を持て成してくれたが質素な物しか出て来なかった。

食事中、ピアから村長に話し掛けた。

「村長はん、うちとユウトはこの村を出てからタロウ兄さんに拾ろてもらいまして、それなりに稼げるようになったんですわ。ほんで、今まで育ててもろたお返しに何かできひんかと考えたんですわ。」

「そんな事はせんでもええ。お前が稼いだお金はお前のもんじゃ、お前の好きに使ったらええんじゃ。この村も貧しいながらも何とかやっとる、お前がそんな心配せんでもええんじゃ。」

良い人そうだな。

「いや、うちホンマ稼いでんねん。すっごぉ稼いでんねん。村のみんなの為や思て頑張ったんや。なんか協力したいんや。」

「そうは言うてものぉ。」

「少し口を挟ませてもらうよ。」

そう言って村長に尋ねた。

「村長さんはこの村への拘りがあるのですか? 別の豊かな町へ移ろうとは考えないのですか?」

「そうは言ってものぉ、儂らは獣人だから人間からは蔑まれておるからのぉ。力のある獣人なら傭兵や冒険者にもなれるじゃろうが、この村におるものは皆弱い獣人じゃからのぉ。どこへ行っても同じじゃ。ここなら誰も来んから丁度ええんじゃ。」

「そうでしたか、そういう事情があったんですね。それなら・・・。」

ちょっと考えてる事と違ったな。ピアが裕福にしたいと言ってたからその手伝いができればいいと思ってたけど、裕福になったらこの村を狙って来る者もいるんじゃないか? そうなるとこの村の者達では防げないだろうな。この村長はそこまで考えて村の者を守る手段として今の状態に甘んじているんじゃないだろうか。それならもっと根本的な所から変えないとダメだな。村の事を考える良い人なんだな、ピアとユウトの為にも一肌脱ごうか。


「村長、私の考えを聞いてもらって、賛同するかどうか判断してもらいたい。賛同してもらえるのなら私は協力を惜しまない。」

「どういう事でしょうかのぉ。まずは聞かせて頂きましょうかの。」

考えとしてはこうだ。ピアが言ってた放牧の件を話した。放牧と言ってもダンジョンを創りその中で増やす、ダンジョンだから魔物は勝手に増える。ダンジョンから溢れ出て来る魔物を捕えて自分達で食べるもいい、売るもいい。それは好きなようにすればいい。

そこで弱い獣人しかいないこの村では魔物を捕える者がいないからゴーレムを創る。今まで出会ったゴーレムはダンジョンを守っていた。ならばダンジョンから出た魔物から村を守るゴーレムを創ればいい、逆ゴーレムだ。そのゴーレムに溢れ出て来た魔物を倒させ捕えればいいだろう。村の塀も土魔法でもっと高く強力な塀にして入り口を守護するゴーレムを創ればいいんじゃないか? 村の中に入り込まれて暴れられたらどうしようもないが、その時の為に通信水晶を置いて行けばいいだろう。それで外からの対策もできるし、どうだろうかと村長に提案した。


「そんな夢みたいな事ができますのか。」

「ああ、私達ならできる。それで村が発展すれば、同じように困っている獣人を呼び寄せればいいんじゃないか? 私はエンダーク王国の国王にも顔が利くからこの村に手を出さないように言う事もできるぞ。」

「本当にそんな事ができるのであれば、是非おねがいしたいもんじゃ。」

「この場所に拘りが無ければ私の領地の森に引っ越してもらうのが私としても楽なんだがな。」

「それは何処ですかいの。」

「バンブレアム帝国領のコールの森なんだ。」

「言われてもわかりませんし、そこまでどうやって行ったらいいかも分かりませんでな。この場所でお願いしますかの。」

「この土地に拘りがある訳じゃ無いのか?」

「ええ、こんなやせ細った土地に深い想いなど無いですわい。」

「それなら私がこの村人を全員引っ越しさせてやろう。うちの森に来るといい。」

「そんな事もできますのか。」

「うちの森ならデイとナイトが守ってくれるし、アーリーもいるからその方が安全だ。そうしよう! ピアもユウトもそれでいいか?」

「おおきに、うちはそれでええ。めっちゃええ。」

「わいもや、タロウ兄さんおおきに・・・。」号泣。


折角考えたアイデアが使えなくなったが、コールの森で同じことをすればいいさ。ゴーレムを創る手間が省けた分、家を建ててやらないといけなくなったな。


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