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第166話 ウザいコンビ

勇者トオルは泣いていた。

「ははうえ・・・。」小声で呟いた。

「ココア、もういいぞ。薙刀を下げてやってくれ。」

「かしこまりました。」

ココアが薙刀を下げた。

「この勇者トオルは私の従者になったんだ。少しの間になると思うが仲間だ。こいつが元の世界に帰る手伝いをしてやるぞ。」

「勇者トオルが仲間? ですか。今なにかされたんでしょうか。」

ピシーッ! ココアが言い終えるとさっきと同じ様に固まった。周りの者も固まっている。また時間が止まった。

『言い忘れたけど、私の事は内緒よー。私の事を誰かに言っちゃうとタロウに不幸な事が起きるわよー。分かったわねー。』

え? このタイミングでそれを言うのか? もっと先に言っとけよ。

時間が動き出し、皆も動き出す。ココアが返事を待っている。

「あー、そうだな。どうやったかは言えないが、勇者トオルを私の従者にした。」

「流石でございますタロウ様。」

「おー! タロウ様のお陰だな。すべて思い出したぞ! ボクは母上をお助けするためにこの世界に召喚されたのだな。」

何言ってるか分からないな。母上ってなんだ? お前からタロウ様って言われる日が来るとは思わなかったよ。

「母上を助けるためかどうかは分からないが、トオルは自分の世界に帰れると思う。元勇者っていう称号がそのままだから大丈夫だろう。」

「おお! それでは早速母上をお助けに行ってくる。どうやったら行けるのだ。」

「トオルはゴブリンを倒す勇者として召喚されたから、ゴブリンを倒せば帰れるはずだぞ。」

「わかった。それではゴブリンを倒しに行こう。」

「ちょっと待て、誰か付けてやるよ。それにそんな装備じゃいくら何でも可哀相だ。お前も背が低いからケンの装備で合うかな。」

トオルは弱いからウルフォックスメンバーには入れられないか。王に頼んで町の出入りは出来るようにしてもらうとして、装備はメタル系だな。

メタルの胸当て・レガース・小手・額当て・ブーツに、剣はドラゴン系にした。

「わーはっはっはー、ボクに相応しい装備だ。流石はタロウ様だな、ボクに似合う装備をよくわかっている。」

「タロウ様、あたいも欲しいのだ。」

「え? お前達って変身で服を変えられるし、装備しなくても十分な防御力があるじゃないか。防具を着ると邪魔だから誰も着て無いだろ?」

「むー、欲しいのだ。」ぐすっ。

え? 泣いてるのか? 欲しいならやってもいいんだけど。

「チビ、お前のサイズは無いから作ってやるけど、本当に着るのか? 邪魔にならないか?」

「邪魔にならない。着るのだ。」ぐすっ。

「わかった、創ってやるから泣くな。」

「本当か!」

30分掛かったが、その場でチビ用のメタル装備を創ってやった。

「わーっはっはっはー、これであたいも勇者なのだー!」

「わーっはっはっはー、ボクこそ勇者だ!」

「「わーっはっはっはー。」」

ウザい。

「あれ? そう言えばチビ? お前って冒険者ギルドに入ってたっけ? ウルフォックスメンバーには入って無いよな。」

「わーっはっはっはー、あたいはそんなものに入らなくても強いのだ!」

やっぱり入って無かったか。ちょうどルーキーズ達に冒険者ギルドのCランクになるミッションが終わった後で、私も忙しくて忘れてたよ。最近は、門を入る時も顔パスでカードなんか見せて無いからな。チビはダンジョンばっかりで町に行くのもいつ以来だ? もしかして初めてじゃないか?

でもそのお陰で強くなったよなぁ、あのショボいダンジョンで10年も苦労してたのになぁ。

ちょうどいいトオルにチビを付けてやろう。ウザいコンビが纏めていなくなれば一石二鳥だろ。

王にトオルとチビの通行許可証を発行してもらい、2人でゴブリン退治に行かせた。

「わーはっはっはー、ゴブリンなんてボクが100体は倒してやるぞ!」

「わーはっはっはー、じゃああたいは200体だー!」

「じゃあ、ボクは201体だ!」

「じゃあ、あたいは・・・・。」

「どうでもいい、早く行け。」

あれ? ちょっと気になった。クリエイターがゴブリンに拘った訳。私の間違いであってほしい。


バンブレアム帝国ではまだやることがあった。

行くのは嫌なんだが、聞いておかないといけないしな。今日はココアもソラもリクもいるし、そんなに絡んで来ないといいな。

私達はゆっくり歩いて詰め所に寄って、昨日の野盗確保のお礼を言って出ようとしたら騎士団長のベルギール・バンダムが馬車で送ってくれると言うので、お言葉に甘え馬車で移動した。


「こんにちは。」

「あ~ら、いらっしゃい~。おひさねー。」

やっぱりいたか、なんで私が来る時はボイドじゃなくベッキーなんだ。

「いや、来なくても良かったんだがな、一応気になってな。」

「なになにー、やっぱり私の事が気になるのね~。もてるってのも罪よね。」

・・・・勝手に言ってろ。

「お前、世界の声が聞こえたか?」

「どうして知ってるの? 聞こえたわよ。断ったけどね。」

「断ったのか? なんで?」

「元の世界っていい思い出は無いしね。ここの方が楽しいのよ~。」

「自分で選んだんならそれでいいよ。うちもケンとモイチは残るってさ。ハルは今日答えを出すって言ってたよ。」

「そーなのー? やっぱりこの世界って楽しいのよー。私も夢が叶ってお店を出せたしね。それでいつ連れて来てくれるのよ。」

「あ、そうだったな。3人を連れて来るって言ってたよな。後で来るように伝えとくよ。」

「それで、なんであんた世界の声が聞こえた事を知ってるのよ。」

「その3人で魔王を倒したんだってさ。」

「そうなのー、あの子達強くなったのね。」

「ああ、強いぞー。ベッキーじゃハンデを貰ってももう敵わないだろうな。」

「そうなのね、私も鍛えなくっちゃ。」バチン

ぞぞぞ。ウィンクはいらねーし。しかもバチンって。

「そう言えば、お前って夜は居酒屋やってるんだよな。メニューってどんなのがあるんだ?」

「そんな大したもんは出してないわよ、この世界は調味料が少ないのよね。お酒は何とかこっちのもので代用できるんだけど、砂糖と醤油がねー。それでもお客さんには美味しいって評判なのよ。」

「砂糖と醤油か。お前も日本人なんだな。じゃあ、もう行くな、後で寄るように伝えておくから。」

「お願いねー。」

ベッキーの店を出てハルとモイチとケンに念話で話した。

まだ途中だそうだが、トオルは見つかったからもういいと言って、ベッキーの店に寄るように伝えた。行く前に私の方へ寄ってもらうように頼んだ。

まだ時間はあるな。アメーリアの所に寄ってエルの様子も見に行きたいけど、先に飯にするか。

バンダム親子も一緒に6人で食堂に入り昼食を摂っていると、ハルとモイチとケンがやって来た。キュータとパーチは先に帰ってるそうだ。ま、ダンジョンに行くんだろうな。

3人にも食事を摂らせ、勇者トオルを仲間にした事を伝えた。

食事を終えると、ベッキーの店の場所を教えた。行く前に醤油と味噌を1樽ずつと砂糖鉱石を1立米出し、ベッキーに渡してやれと持たせた。


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