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第163話 野盗達

アメーリアを宮殿に送り、その足で騎士団の詰め所に寄った。

まだ騎士団長のベルギール・バンダムがいたので、明日野盗の確保の協力をしてほしいと頼んだ。

ベルギール・バンダムは快諾してくれた。「私の自慢の馬車で行きましょう。」って、それ前にも聞いたけど私の馬車だからね。

野盗団だと言ったら勇者トオルが野盗になって各地を荒らしまくって教えてくれた。今では懸賞金付きのお尋ね者になっているそうだ。

私は勇者トオルが城から逃げた事は知らなかったので少し驚いた。脱走したのは野盗達だけだと思ってたから。

最近見なくなったとは思ってたんだよね。ホント何をしたいんだか。勇者が野盗ってラノベではその後で改心して主人公に協力するとかってデフォだけど、勇者トオルの場合って無理があるよなぁ。でもどうやって逃げたんだろ? 【通過】は私が盗ったんだよな? そんな面倒くさい勇者ならいっそ倒してしまって次の勇者を呼べばいいのに。若しくは帰してやるとかさ、帰る方法ってあるのかな。


アーリーにも『念話』で明日行くからいつも通りにして、野盗達には気付かれないようにしておいてくれと頼んだ。


その夜、【那由多】が統合しますか? と聞いて来たが、辞めておいた。

1つ1つ片付けて行かないと、問題ばかりが増えて行くから大変だ。

もちろん異世界の事も元の世界の事も『壁』の事もあるけど、まずは明日アーリーの所に居付いてる野盗の事を片付けてからだ。


翌朝、バンブレアム帝国の騎士団詰所に寄ると、もう出発の準備が整っていた。

流石に騎士団と呼ばれるだけあって、これだけ揃うと壮大で格好いいって思ってしまった。白をベースに金や赤のアクセントがある鎧を身につけている。全員が同じ色の鎧に同じ色の馬具、それが400騎。たかが100人程の野盗に対して大袈裟過ぎるとは思ったが、格好いいから何も言わずにこのまま行こう。今回野盗捕獲に参加してくれたのは騎士団の中でも花形の騎馬隊が400、重騎士100の合計500騎だ。

重騎士は馬車での移動になる。バンブレアム帝国の騎士団は20000騎いるので、これはほんの1部という事だった。

500騎で感心してしまったけど、20000騎もいたら大感動してしまいそうだ。

他にも歩兵や工作兵を合わせると10万人以上になるという。


そんな話を聞きながら私は騎士団長のバンダムと一緒の馬車でコールの森に向かった。


アーリーには騎士団が来ることを伝えてあるので、アーミーアント達も今は隠れている。

米の木を迂回するルートでアーリーの巣を目指す。

途中、魔物も出現するが高レベルの魔物は早々にアーリー達が排除しているので、出てくる魔物は弱く騎士団に簡単に排除されている。

バンブレアム帝国を出てから3時間、アーリーの巣に到着した。


この森は私の領地だし、私は短剣の所持者という事も知れ渡っているので、騎士団も私の指示に従って行動してくれた。

もちろん、騎士団長のバンダムのバックアップもあった。

巣に到着すると私が先頭に立って巣に入って行く。

蟻の巣なので、あっちこっちに部屋があるし、たまにダミーで行き止まりも作ってるからアーミーアント以外の者が入ると普通は迷う。

野盗達の居場所はアーリーから聞いている私しか知らないし、私が先頭に立って巣に入る事で、巣に入る事を躊躇していた騎士団も私の後に続いてくれた。


300名の騎兵隊が馬から降りて私に続いて巣に入り、100名の重騎士が巣の外で待機。そのサポートを騎兵隊の残りの100名が行う。巣の入口から逃げて来るものがいれば、すぐに捕縛できる体制だ。


私の知ってる野盗だったら、ここまでしなくても大丈夫だけどね。

アーリーから教えてもらった部屋の前に着き、私のすぐ後ろから付いて来ている騎馬隊長に入れと促す。サーチで確認し人間が中にいることは確認している。

私が入るとまた言い訳とかされて逃げられそうだし、ここは騎士団に任せよう。


騎馬隊長は後ろの騎士団に合図をし、先頭に立って真っ先に突入した。

「大人しくしろ! 我らはバンブレアム騎士団だ! 抵抗する者は討伐するぞ。」

中には100人近い野盗達がいて、昼食を食べてる最中だった。

こいつらの食事は飢えない程度にアーリー達が用意していた。

ここにいれば食い物の心配をしなくてもいいし、その食い物が美味い。腹一杯にはならないが、ダラダラ暮らしたい野盗共には快適な環境だった。野盗以外で捕まってた者達は魔物の餌にされるのはイヤだと早々に逃げているのに野盗共は図太い。

騎士団に踏み込まれた野盗共は意外な侵入者に目を見開いて固まっている。肉を持ったままの奴もいた。踏み込んで来るのは魔物だと思ってる所に人間が、それも騎士団が来るとは想定外だったようだ。私は隠れて見ている。

「大人しく捕縛されるんだ!」

「野郎共! 逃げるぞ!」

どこへ? どこへも行けないだろ?

野盗達は玉砕覚悟の特攻をしてきた。

うん、そうだろうね。どこかに抜け道があるのかと思ったよ。

当然、武力も装備も違う騎士団に敵うはずもなく、野盗達はあっさり捕縛された。見知った顔もいくつかあった。誘拐の時のダンジョン最下層にいて勇者トオルの取り巻きをやってた奴もいた。全員の顔は覚えて無いけど、【那由多】が報告をくれたからそうなんだろ。

捕縛された奴等はこのまま城に連れ帰って投獄される。良くて強制労働、最悪極刑だそうだ。

勇者トオルはいなかった。残念なようなホッとしたような。

勇者トオルの事がわかったら教えてくれと頼んでおいた。

関わりたくは無いんだけど、関わって来るだろ? あいつの事だから。指名手配されてるようだし、尋問して勇者トオルの情報があれば、教えてもらうように頼んでおいた。


帰り道は捕縛者を連れていることもあり、遅くなったので町に戻ると後の事は騎士団に任せてアジトの屋敷に戻った。

夕食には間に合ったようだ。


夕食が終わると、勇者トリオがニヤニヤしながら私の所に来た。

「タロウさん、報告があるんだ。」

勇者唯一の女性のハルが言ってくる。

「なんだ?」

「みんなが異世界に行った後で魔王を倒しに行ったんだ。」

「え? 誰が?」

「私達3人で。」

「誰を?」

「魔王だよ、ま・お・う。」

「なんで?」

何してんの? あなた達。

「一応私達も勇者だしさ、魔王を倒すと元の世界に帰れるって言われてたし。本当かなぁって。」

「ふーん。で、倒したの?」

「そうだね、私達も強くしてもらったしさ、みんな異世界に行けたのが羨ましかったんだ。魔王って弱かったよ。」

「あっそー。」

倒しちゃったんだ。へー

「それで帰れるの?」

「それがさ、世界の声は聞こえたんだけど、どうしようか迷ってるんだ。」

「どーゆーこと?」

世界の声ってレベルアップとかの時に声だよな。

「元の世界には戻れそうなんだよ。私達は死んでこの世界に来たんだけど、生き返らせてもくれるみたいだよ。」

「いいじゃないか。」

「しかも、大金持ちとかさ色々特典もあって元の世界に戻ったらいい生活ができそうなんだ。」

「へぇ、凄いじゃないか。」

「だけど迷ってるんだ。」

「何を迷う事があるんだ? 元々それが望みじゃないのか?」

「そうなんだけどさ、こっちに戻って来ることはできないみたいなんだ。記憶も消されるって。スキルなんかの能力も無くなるって。」

「それぐらいは仕方がないんじゃないか? 元々無かったもんだし。条件としては凄くいいと思うぞ。迷う事なんて無いじゃないか。」

「そうなんだけどさぁ、今の生活って凄く気に入ってるんだよ。強くなったしさ、ダンジョンもあるしさ、仲間もいるし。」

そこにダンジョンを含める必要はまったくありませんね。

「それってすぐに決めないといけないのか? 期限ってあるのか?」

「期限は無いみたいなんだけど、朝起きたら確認して来るんだ。『元の世界に転生しますか?』って。これが毎朝続くと思うと気が滅入って来るよ。」

「確かにそれは嫌だな。他の2人はどうなんだ? 元の世界に帰りたくないのか? 誰か会いたい人はいないのか?」

「僕は別に。ここの世界の方が楽しいです。元の世界の想い出って、家でゲームをしてた記憶しかないし、リアルな友達も少なかったし。」

モイチが答えた。

「ケンはどうなんだ?」

「ボクは元の世界の事って覚えて無いし、タロウさんの事好きだしさ。ボクはもう断ったよ。」

「え! 何よそれ。相談ぐらいしなよ。」

「ハルはハルで決めればいいじゃん。ボクはボクで決めたんだ、この世界にいるって。」

「僕も残るって決めたけど、ハルはまだだったんだ。」

「えー、モイチも残るのー。じゃあ、私もそうしよっかな。」

「ハル、大事な事なんだキチンと決めた方がいい。お父さんやお母さんに会えなくなるんだぞ。」

「親か、碌でもない記憶しかないんだけどね。でも、その辺りも戻るときに優遇してくれるのかもね。もう少し考えてみる。」

「そうだな、納得行くまで考えればいい。私はどちらでもいい。どうでもいい訳じゃ無くハルの意見を尊重するって意味だぞ?」

「はい、分かってます。だからタロウさんの事が大好きだし、ここは凄く居心地がいいんだもの。」

「ここに残るって事は、私の従者のままって事だぞ?」

「そこは問題無いです。タロウさんの従者っていい事しか無いもん。」

「そこは僕も賛成です。ホントいい事だけしか無いですから。」

「うん、賛成賛成ー。」

私の何を気に入ってくれたんだか。嬉しいけどね。

「早く決める必要も無いけど、自分で納得する答えを出すんだぞ。」

「わかりました、もう1日考えてみます。」

「わかった。決まったら教えてくれよ、急にいなくなるのだけは勘弁してくれな。」

「はい。」


3人は左の屋敷の自分達の部屋に戻って行った。

あいつら魔王を倒したんだ、しかも弱かったって。たぶん弱かったんじゃ無くてお前達が強くなったんだと思うぞ。

モイチとケンは残るんだな、ハルはどうするんだろな。

海王はこの前倒してしまったし、冥王は放って置いてもいいだろう。南の魔王を倒したんなら残りは北の魔王か。ツンザンブレーン連邦で召喚されてる勇者が相手なんだよな? 半分いなくなってるけど、最近どうなってるんだろな。


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