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第161話 エルフの里


デイの背中に乗って飛ぶこと10分、エルフの里にはすぐに着いた。

結界は無かった。

「タロウ様、到着しました。ここがエルフの里です。」

え? ここ? 何も無いけど? 結界すら無いんだが。

「ここって? どこにあるんだ?」

「わかりませんか? エルフは半空間を作り出していますね。この世界と精霊界の間に大きな空間を作り出しているようですね。私から見たらこの森の異物としか感じられませんが、普通にはわからないかもしれませんね。私達を呼び出した召喚ゲートを作れるタロウ様でしたらわかるのではありませんか?」

んー、わからん。結界なら分かるんだが、狭間の空間ってどうやったらわかるんだ?

「デイ、私には感じ取れないな。どこにあるのか教えてくれないか?」

「そうなのですか? あれ程の召喚ゲートを作れるタロウ様にわからないとは不思議なものです。わかりました、それではこのまま入りましょう。」

ケェーー!

デイが一鳴きすると空間が揺らいだ。その揺らいでいる空間にデイが入って行く。

揺らいだ空間に入ると今まで無かった村が見えた。村というより都市と呼んだ方がいいぐらい大きな集落だった。

しかし家は藁ぶき屋根だし畑が多いし村という感じの集落だった。


え? 村だ。さっきまでと変わらぬ風景だけど、急に村が現れたぞ?

「ここが狭間の空間か?」

「ええ、左様でございます。この様な異物は排除いたしましょうか?」

なんでそうなる! こいつもそっち系か。

「排除はしないぞ、交渉するって言っただろ。」

「交渉ですか。しかし向こうは交渉する気など無いようですが。」

デイに言われて村の様子を見ると沢山の者が集まりだしている。集まっている者は砦のような所を目指しているようで全員弓を持っていた。

私達が近づく程こちらに向けて構えるものが増えて行く。確かに友好的では無さそうだ。

デイが高い所を飛んでいるので弓の射程範囲には入っていないのか、まだ攻撃をして来る者はいなかったが明らかに敵意を感じられる。

さて、どうしたものか。まずは話をしたいんだがな。攻撃を掻い潜って行く事もできるだろうが、アメーリアもいることだしそういうのは避けたいな。

こちらから攻撃したら何人か倒してしまうかもしれないしな。でも、なんでここまで敵意を向けられてるんだ? エルフってここまで好戦的な奴らだっけ?

「デイ、エルフって会ったことあるのか? なんかすごく敵意を向けられてる気がするんだが。」

「話したことはありませんが、一度集落を排除したことはあります。異物ですので。」

お前のせいか! この集落の者にしたら再び驚異の魔物が現れたって思われてるんじゃないのか? いつの話しなんだ? デイって私が呼び出したばかりだろ? でも100歳以上ってどこから呼び出されたんだ?

「デイって私に呼び出される前ってどこにいたんだ?」

「冥界におりました。この森で死んでから冥界を彷徨っている所をタロウ様に呼び出されたのです。本当にありがたい事です。」

冥界って冥王の所? 生前はこの森にいたって事? それでエルフの里を一度滅ぼしてるって? そりゃ敵意を剝きだしにされるわ。これは交渉は難しそうだな、一度戻ってデイを置いて来ようかな。

あ、撃って来た。

エルフたちが弓で攻撃を始めた。まだ矢は届かないが威嚇のつもりもあるのだろう。

「小癪な奴らめ、身の程を知るがいい。」

「おい、攻撃をするなよ、益々話しができなくなるから。先に私だけ降りて話して来るから、このままこの高さで飛んでてくれ。」

「わかりました。」

「タロウ様、それなら私も一緒に付いて行きます。」

「いや、奴らは攻撃をして来るんだぞ。危険だからここで待ってろよ。」

「いえ、私の結界でしたら攻撃されても問題ありません。ただここから降りれないので一緒に連れて行ってください。」

「結界か、それならデイに乗ったまま降りようか。デイが下に降りても攻撃しなければ、こちらに敵意が無い事をわかってくれるかもしれないな。そういうことだデイ、あのエルフが沢山集まっている砦の前に降りてくれるか? 攻撃は無しだぞ。」

「わかりました。」


アメーリアが結界を張り、デイが砦の前に降りて行く。

矢の攻撃が激しくなり魔法の攻撃も追加されアメーリアの張った結界にもの凄い数の攻撃が弾かれている。

「皆さーん! 攻撃を辞めてくださーい。私達は敵ではありませーん!」

「「「「はいー!」」」」

アメーリアがエルフに向かって叫ぶと一斉に返事が帰って来て攻撃がピタリと止んだ。

全員が気を付けの姿勢になっている。

やっぱりか、ここの奴らもエルミアみたいに私達の声が頭に響くんだな。

話し合いってできるのかな? 命令になってしまうんじゃないか?

「皆さんわかってくれたようですよ。タロウ様、話し合いができそうですね。」

「・・・・そうだな。」

「それじゃ、行きましょ。」

アメーリアはデイからさっさと降りて砦に向かって歩いて行く。

「デイ、お前がいると話しがこじれそうだから先に帰ってろ。」

「わかりました。」

私もデイから降りるとデイは飛び立って行った。


私達が砦に着くと砦にいたエルフ全員が砦から出て私達を迎えてくれた。

「ようこそいらっしゃいました聖母様。先程は知らぬ事とは言え、攻撃をしてしまい申し訳ございませんでした。」

アメーリアの言葉にショックでデイの事は無かった事になってるのか?

1人の女のエルフが代表して謝罪してくれた。流石ファンタジーを代表するエルフだ、美しい。周りのエルフも男も女も美形揃いだ。魔物といいエルフといい頭にくるよ。でも目の保養にはなりますねー。あ、アメーリアの視線がなんか痛い。なんだそのジト目は。

「いいえ、こちらこそ急に来てしまって驚かれたでしょう。攻撃されたことは問題ありませんよ。」

「ははっ、寛大なるお言葉、感謝いたします。では早速ではございますが、この村の長老達の所へお連れしたいのですが、付いて来ていただけますでしょうか。」

「タロウ様?」

「そうだな、連れて行ってもらおう。お前の名前は何ていうんだ?」

「はいー! ルシアンです! あっ、そちらの方も世界樹の神子の父でございましたか。ご挨拶が遅れました、警備隊長のルシアンと申します。」

「ルシアンか、私はタロウだ。こっちはアメーリア。名前で呼んでくれればいい。では連れて行ってもらおうか。このまま歩いて行くのか?」

「いえ、長老衆の館はここからは遠いので馬車で行きます。今すぐ用意させますので少しお待ちください。」

ルシアンは部下に指示を出しすぐに馬車を用意してくれた。馬車を引くのは馬では無く鳥だった。2メートルぐらいの鳥でダチョウを連想させる鳥だった。

姿形はダチョウに似ているのだが、色が真っ黒だった。

私達は用意された馬車に乗り、砦を後にした。

久し振りの普通の馬車に、私もアメーリアも揺れが酷くて我慢できなくなった。

私が馬車を出して引いてくれる鳥をこちらの馬車に付け替えさせて、こっちの馬車で行く事にした。ルシアンは中の広さや跳ねない快適さに驚いていたが、いつもの事だ。聞き流しておいた。


村の中程まで来ると家も沢山建っていてエルフも沢山いた。店は無くすべて民家だった。ルシアンの説明によるとさっきまでは避難していたそうだ。デイが来たからな。

今は警戒警報も解除され、外に出て来ている者もいる。村の中ならエルフ同士で『念話』が使えるそうだ。

「到着いたしました、こちらが長老衆の館です。」

平屋だが大きな家だった。藁ぶき屋根も周りと同じだが、他の家に比べると10倍はありそうな大きな家だった。庭も広いので余計に大きく感じたのかもしれない。


すでに連絡済みなので、表には100人程のエルフが両端に列を作り正面の奥には3人のエルフが待っていた。

ルシアンに案内されて奥まで入って行くと3人のエルフの真ん中の者が代表して挨拶してくれた。

「聖母様、タロウ様。ようこそおいでくださいました。エルフ一同を代表いたしまして歓迎致します。」

エルフや精霊達ってエルが1番アメーリアが2番で私を3番目にするよな。そういうもんなのか?

私達は屋敷の奥に連れて行かれて歓迎を受けた。

まずは食事を出され、踊りや歌を披露され庭では弓や魔法で的当ても見せてくれた。

食事はエルフがベジタリアンだから肉は出て来なかったが、木の実や果実は美味しくいただけた。果実酒も美味しかった。

エルフがお酌をしてくれるのだが、その度にアメーリアの視線が痛い。

なんなんだ、何か今日はよく睨まれるな。


このエルフの里は3人の長老が纏めていた。名前はミスランディが女、フオルとベレン男でミスランディが1番発言力が高いらしい。代表してミスランディが語ってくれた。

30年前に村は魔物に滅ぼされたそうだ。んー、デイの事だな。

その時もこの3人の長老が空間潜みで囲えるだけ囲って守ったそうだ。その数6000人。

それ以上は囲えなかったので、囲いの中に入れなかったものは倒されたかどこかへ逃げ延びたか。その後は結界も強化したので、外からは入って来れなくなったのでわからないそうだ。

その結界について聞いてみた。結界なら私もそうだがアーリーにもわかったはずなんだ。

「結界って言うが、この結界って普通の結界じゃないよな。」

「はい、相応の名前がありませんので都合上結界と呼んでいるだけで、結界ではありません。入り口やゲートの方が性質は似ているでしょう。」

なるほどな、だから私に召喚されたデイやナイトにはすぐにわかったのか。

「この村全体を覆っているので、入り口やゲートという名前は合いませんので結界と呼んでいます。」

「それで、このままこの地で暮らすのか?」

「はい、そう思っております。今日はその事でいらっしゃったのでしょうか?」

「それもあるかな。この森は私の領地になったんだ、その森にこの村がある事が分かったので一度見ておこうと来てみたんだ。」

ただの興味本位だけだけど、理由付けしてやらないとな。嘘でも無いし。

「タロウ様がこの森を管理されているのですね。では私達はどうすればいいのでしょうか?」

何も考えてません。そんな話になるとは予想もしてませんでした。

「別に何も。このままいればいいし、この村も私がいる間は守ってやるよ。」

「ありがとうございます。では見返りとしてこの者達を付けますので、タロウ様のお世話をさせてください。」

10人の女エルフが出てきてお辞儀をする。

流石に代表して選ばれるだけあって、他のエルフより1段上の美しさだった。

ゴゴゴゴ。

え? アメーリアさん? なんか怒ってらっしゃる? ゴゴゴゴって聞こえるよ。

人身売買みたいなことをするなって訳ね、了解しました。

「気持ちだけ貰っておくよ。うちは大所帯で仲間も多いし、別に世話をしてもらう必要も無いから。」

「左様でございましたか、そちらの事情も知らず失礼致しました。」

「お前達も妖精の仲間だから世界樹の物は好きなんだろ?」

「はい、世界樹とは私達の憧れでございますし、手の届かぬ遠い世界の物でございます。」

「ここに創ってやってもいいんだけど、昨日創ったばかりでエルが疲れてるからな。今日はこれで勘弁してもらおうか。」

世界樹の葉が付いた世界樹の枝を1つ庭に出してやった。長さは30メートルだったが庭にギリギリ納まった。

「あとは実だな。」

実も100個出した。

エルフたちは何が起こったのか理解が追い付かない。タロウが何を言ってるのかもわからないし、何を出したのかもすぐにはわからなかった。見た事も無いのだから。

「世界樹を創る? ですか?」

「そうだ、昨日創ったんだ。それでエルが疲れていてね、私も創れるんだが私が育てるとすぐには聖なる気を出さなくてね。あ、エルとは世界樹の神子の名前だ。」

「創った? おっしゃってる事がよく分かりません。神子様のお名前はエル様と言うのですね、是非一度お会いしたいものです。それとこの実と大きな枝はなんですか?」

「え? 知らないのか、この枝は世界樹の枝だ。葉も付いているからこの村なら役立つんじゃないのか? こっちの実は世界樹の実だ。」

あれ? 急に静かになったぞ? あれ? 全員気絶?

「久し振りの反応だな。アメーリア帰ろうか。」

「ここの皆さんはどうしますか?」

「このままでもいいだろ、そのうち気が付くよ。また時期を見て来ることにしよう。」

「はい、その時は私も一緒に来ますから絶対に呼んでください!」

お? そんなにここが気に入ったのか? 別にいいけど。

帰る方法だな。多分短刀での転移はできないだろうな。狭間の空間って言ってたから転送魔法陣なら転移できると思うんだがな。

『【那由多】、ここから帰る方法は?』

――転送魔法陣で転移できます。

『じゃあ、魔法陣を作ってくれ。』

――転送先はどこにしますか?

『あ、出口を作って無いか。でもどこにしますかって言ったな。どこって?』

――今ある魔法陣とつなげます。ロンレーン、マーメライ、海の神子の神殿など繋げられる魔法陣はあります。

『じゃあ、ロンレーンの屋敷にしてもらおうか。』


庭に魔法陣が現れた。

私とアメーリアは魔法陣に入ってロンレーンの屋敷に転移した。


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