第16話 検問所
出発してから2時間後、予想通り町があった。
町の外回りは高い壁で遮られていた。
門があったので、そちらに向かうことにする。
門の横には検問所があり、その横には詰め所もある。兵士が何人か常駐しているようだ。
検問所に行き門兵に声をかける。
「このまま入ってもいいのか?」
この世界では敬語はやめよう。という雰囲気がある。遜ると舐められそうだ。この門兵にしても脳筋っぽいイメージがある。友達的な話し方でいいだろう。
「お前たちそんな格好でどこから来たんだ?何も武器を持って無いじゃないか。魔物には出会わなかったのか?それにしても珍しい服を着ているなぁ。」
武器はそれぞれ隠している。服は3人とも着物だ。ここでは珍しいんだろう。
こんなに軽装で魔物のいるところを歩いて来たんだから不思議がられるのも当然だろう。
「身分を証明するものはあるか?」
そういえば何もないなぁ。
「身分を証明するものはないな。あっちの方にある祠から来た。」
と、来た方向を指さす。「本当か!?」「まさかぁ」と少し門兵たちにざわめきが起こる。
「むー信じられんな、身分を証明するものがない者はそこの詰め所で話を聞かせてもらうことになっている。審査に通れば町に入ってもらっても構わない。」
私たちは詰め所に行くことになった。
「では、まず名前から聞かせてもらおう。」
一緒に入ってきた門兵が尋ねる。この詰め所の隊長だったようだ。
「私はタロウだ、そっちはソラにココアと言う。」
代表して私が答える。ソラとココアと来て、私だけフルネームだと変なので名前で答えた。
「年齢は?」
「私が18、ソラは16でココアは15だ。」
ソラは何か言いたそうだったが目で諭す。まさか250歳とか本当のことは言えないだろ。
「ずいぶん若く見えるな。入国の目的は?」
特に目的は無いんだが、色々と見て回りたいし情報も欲しい。
「魔物を買い取ってもらいたい。」
目的の一つでもあるし、別に嘘ではない。
「おや?アイテムボックスなど持って無いようだが、どこに持っているんだね?」
ここではそうなのか。収納はアイテムなんだな。
懐の緩みを利用して箸の入っている木箱を少し出して見せる。
「ほぉ、珍しいな、木で作られているのか。初めて見るな。」
隊長は物珍しそうに木箱から目を離さない。話が止まってしまったので木箱を懐に直す。
「それでは、この水晶に順番に手を置いてくれ。」
犯罪履歴があるものだけに反応するようになっているそうだ。
私たちは順番に水晶に手をかざした。問題は無かった。
「大丈夫だな、では入国の許可手続きに移ろう。ここで仮入国の許可を出せる。一人銀貨5枚だ。この仮許可証で1週間滞在できる。それを過ぎても入国している場合は捕えられるので期限には十分気を付けてほしい。もし、もっと滞在を続けたければ何かのギルドに登録すればいい。魔物の買取なら冒険者ギルドがお勧めだな。ギルドの登録カードは入出国するときの身分証明カードにもなる。」
なに?お金がいるのか!ここで物々交換はできなさそうだなぁ。どうするか。
「銀貨5枚かぁ、申し訳ないが私たちは現在この国の貨幣を持っていない。それに値する物や魔物は持っているんだが、何か方法はないものだろうか。町に入れてもらえれば換金できると思うんだが。」
「ここで魔物は換金できん。ただ、貨幣の違う国もあるので換金所は奥に設けてある。そこで換金してもらうといい。」
と奥の換金所を案内された。
さて、何を出すか。やはり物よりお金か?小判を1枚出してみた。
「これは換金できるのか?」
「!!!!!!」
換金所の担当の男は、目を見開き口を大きく開けたまま固まってしまった。
「あー、やっぱりダメか?」
「失礼いたしました!あまりにもビックリしてしまったもので。これは【小判】で間違いございませんか?」
「ああ、そうだが。」
「こんな高価なアイテムは、こちらでは受け付けられません!」
確かに高価ではあるが、そこまでではないだろうに。でも、アイテムって言ったなぁ。こっちでは付加価値があるんだろうか。まだ50枚以上はあるはずだが。
「じゃあ、これは?」
と言って、小判をしまい金の小さな固まりを出す。
担当は金を手に持って調べている。
「これは金ですね。」といって秤で測る。
「ああ、金だ。」
「純度が高いので この重さだと金貨1枚でございます。」
「じゃあ、それで頼む。」
私たちは、換金した金貨で入国料も払い、無事に入国できた。
換金所の担当がもう一度小判を見せてほしいと言ったので、見せてやりながら貨幣基準について教えてもらった。
銅貨 日本円で約10円
銀貨 銅貨×100
金貨 銀貨×100
大金貨 金貨×100
今の金の固まりが日本円の約10万円か。ここでは金の価値が高そうだ。




