第151話 【番外編】 ルーキーズ編②
次話も【番外編】ルーキーズ編を続けます。
―ムツミ・イツミ・サジ組編―
ツンザンブレーン連邦を担当しているこの3人。
ムツミは【冥界渡り】を持つ第2世代の160センチぐらいの黒髪の暗龍、イツミは【変化】をもつ第3世代の150センチと少し背の低い銀髪のメタルドラゴン、サジは【魅惑】を持つハンサムマッチョの悪魔。
この3人が担当しているのはエリアが広い。ツンザンブレーン連邦の7国共担当しているので短刀での移動とは言え毎日大変だった。
他のメンバーは首都の冒険者ギルドに行くと、国内で他の町の冒険者ギルドからの緊急依頼は来ることがあるが、ツンザンブレーン連邦の国々はあまり仲が良くないので情報共有はしていない。だから、7国共回らなければならない。
しかも各国々で他のメンバー以上の勧誘があり、一度冒険者ギルドに入ると1時間も出て来れないのはざらにあった。
冒険者ギルド自体は情報共有をしているから、他の国に先んじてこの3人を取り込みたいのだ。
「サジさん、どうする? 今日は冒険者ギルド回りを辞めた方がいいんじゃない?」
「我輩もそう思っておりました。イツミさんはいかがでしょうか。」
「ん。」
「そうですね、やはり辞めておきましょう。今日はタロウ様からの大事な指令がありますからね。」
「じゃあ、どの門にする? どの門でも転送ポイントは作ってあるよ。」
「イツミさん、どれにしますか?」
「ん。」
「そうですね、やはり北門ですね。我輩もそう思っておりました。」
「なんでいつもそれでわかるんだよ、あんた達おかしいんじゃない?」
「なぜでしょうか、我輩には分かりますがムツミさんには分かりませんか?」
「ん。」
「わかる訳ないじゃない。北門だね、じゃあ行くよ。」
この3人はツンザンブレーン連邦の冒険者ギルドの依頼で何度もアーバンライド共和国に行っているのだ。政治には関心の無いウルフォックスメンバーでも何度も行けば大体の事情は分かっていた。
今回、この3人が北門を目指したわけは北門の領主の治める地域にはダンジョンがあったのだ。
他のメンバーよりも情勢を知っているので、まずはダンジョンをクリアしてから町の探索に入ろうとイツミが考えサジが了解したという流れだったようだが、この2人以外に分かる訳も無くムツミはいつも決定された後に纏める役をしていた。見た目にはリーダーだが本来はサポートのスペシャリストで決定するリーダーはイツミだった。サジは通訳みたいなもんだ。
アーバンライド共和国の北門に着いた3人は早速ダンジョンを目指す。
何度も来ているので場所は分かっている。
今回のルーキーズの中では1番乗りでやってきたことも分かっている。
皆ちゃんと担当の国の冒険者ギルド寄って来ているからだ。
ダンジョンに到着すると冒険者ギルドカードを入り口で見せ、ダンジョン内に入る。
ここのダンジョンは30階層の塔だった。登りのダンジョンである。
いつも、イチジロウの作ったダンジョンに入ってる3人には物足りないレベルのダンジョンだが、このダンジョンには罠と宝箱が多いのだ。もちろん高ランクの魔物もたまに居るから、魔石も手に入る。そういった魔石はイチジロウのダンジョンに持って行ってダンジョンの餌にする。まったくの無駄使いだと思うが、ダンバカ達は他に趣味が無いからいいんだと思う。
基本魔物だから戦うことが好きなんだろう。
他のギルドにも登録させているが、エンダーク王国に行っているニコとゴロウ以外はそんなにハマっていない。登録費無料までは頑張るがそれ以降は余り関わっていない。
ビックリしたのはヨッコが商人ギルドのAランクまで行ったことだ。
何をやったんだろうな、Aランクカードになったことだけしか報告は受けていない。
エンダーク王国の担当のニコとゴロウは鍛治ギルドで活躍中らしい。皮製品ばかりの国で龍素材の武具を作れば少々高くてもバカ売れだな。
安い鉄製品も作っているらしいが、一流職人の出来栄えらしい。私も負けていられないな。
その話はまた別の機会にするとして、ダンジョンに入った3人はいつも通り先頭がイツミ、サジが続いて殿にムツミ。
戦闘担当はイツミ、罠担当はサジ、総合的なサポートがムツミ。丁度いいトリオだった。
いつもなら30階層程度なら昼までに軽く終わらせて来るのに、今日は少し遅かった。
10階層目のフロアマスター待ちが長かったのだ。
途中もダンジョン内の人が多いとは感じていたのだがフロアマスター待ちの時にその原因が分かった。
北の領主が昨日お触れを出したそうだ。
『ダンジョンマスターキラーになった者には分隊長を任命する。』
というものだった。
誰もが朝から我先にとダンジョンに入っていたのだが、3人組は知らなかったからダンジョンに入ってしまった。
3人からすれば、たかが10階層でなんでこんなに混雑するのか。という感じだがダンジョンルールは絶対に守って来たので、今回も黙って順番待ちをしていた。
待つこと1時間、ようやく3人の番になった時に割り込もうとする兵士がいた。
「次は嬢ちゃん達の番か、長々と待たされそうだから先にオレ達が入ってやるぜ。」
そう言って順番を抜かそうとした6人パーティの兵士の前にイツミが順番を抜かそうとした者達の前に槍を突きだして通れなくする。
「ん。」
イツミは少し威圧を向けた。スキルの威圧では無く戦いの中で学んだものだった。
闘気や魔気や武気を盛り込んだものでココアが使う怒りによって出てくる物ではないが効果としては変わらない。だが、この威圧はスキルには表示されない。猛獣の風格の様なものだ。
イツミに止められた先頭の兵士は足がガクガクと震えだして前へ進めなくなった。
3人は何も無かったかのように10階層のフロアマスターの部屋に入って行く。
一瞬でけりをつけ上階層に向かう。
20階層でも少し待たされたが、10階層程では無く待ち時間は15分程度だった。
ダンジョンマスターの部屋では1組先着組が戦闘中だった以外は誰もいなかった。
部屋に入れるようになり入ってみるとまだ先客の姿があった。
ただ生きてはいなかった。
ダンジョンに吸収される前にその者達の遺体をムツミが収納した。
イツミはダンジョンマスターのお相手。
ダンジョンマスターはBクラスのグリフォンだった。イツミはさっさと魔石を回収するとサジと共にムツミと合流し、ダンジョン核を物欲しそうな目で見ながら1階へと戻って来た。
入り口でダンジョンマスターはグリフォンだったことと先客が倒されたことを報告。
遺品では無く遺体を持っていると伝えると驚かれたが、詰め所まで連れて行かれムツミが出してやった。
5人の兵士パーティだった。
詰め所の者が知らべたところ北の領主ザルバドルの兵士だった。
いずれも男だったが、1人は少尉、2人は軍曹、後の2人は伍長だった。
Bクラスの魔物相手では少し厳しいパーティーだったようだ。
その少尉に駆け寄る兵士がいた。さっき10階層で絡んできた兵士だった。
その兵士も怪我をしており、途中退場して来たのだろう。
3人には関係ない事なので、そのまま詰め所を後にした。
念話で確認すると、もうある程度の調査は終わっていたが、皆の話を合わせるとこのまま帰れないと決定した。
皆で合流するために国の外で落ち合うことにした。
3人も待ち合わせ場所に向かった。
―ヨッコ・エイタ組編―
タイスランド公国担当はヨッコとエイタ。
この国に冒険者ギルドができたのは、つい最近の事でそれまではバンブレアム帝国かマーメライメント王国の冒険者ギルドに依頼を頼んでいた。
バンブレアム帝国とマーメライメント王国のちょうど中間に位置する国で両国を行き交う人達のお陰で成り立っている国であった。
ヨッコは【監視】を持つ暗龍。160センチぐらいの黒髪の女の子。エイタは金髪で180センチぐらいの男の子、【雲】を持つ黄龍だ。
この2人はいつもどちらが馬になるかで揉めている。どっちも馬に成りたいらしい。
【神速移動】を使いたいらしいのだ。龍の姿でも早すぎて見えないんだが、馬の姿だと馬車も引けて一石二鳥らしい。その気持ちは私にはわかりません。
依頼は2人が重要案件を終わらせてからはあまり無いのだが、ここでも勧誘がキツイようだ。どこのギルマスも優秀な子飼いの冒険者が欲しいのは同じようだ。
この2人もどうせ依頼は無いだろうけどと、顔だけ出してサッと逃げるように冒険者ギルドを後にした。
2人がアーバンライド共和国の北門に到着すると入門後すぐに東門を目指した。
東門の領主レーベリックと顔見知りだったからだ。
レーベリックがタイスランド公国にたまたま商談で来ていた日、その日は2人がSカードのきっかけとなる依頼を達成させた日だった。
その噂を聞きつけたレーベリックが冒険者ギルドに様子を見に来た時に知り合いになった。
レーベリックはヨッコとエイタを専属のガードにスカウトをしようとしてギルマスと同じぐらい付き纏っている。
そんな面倒な奴の所になぜ行くか、それはヨッコの【監視】で見た事が気になったからだ。
ヨッコの【監視】には2つの能力があって、1つは半径1キロの範囲を監視できる。これは【探索】の上位版と言える能力で検知エリアは私の【探索】より小さいがエリア内の詳しい情報が手に取るようにわかる。対象は生物ならなんでもだ。
もう1つの能力がロック機能。【監視】対象者をロックし、どんなに離れていても対象者が何を話しているかまで分かる。但しロックできるのは1人だけ、仲間には使わないようには言い含めてある。
今【監視】対象者をレーベリックにしてあった。面倒なスカウトから逃げるためだ。
それが今回は良かったのか悪かったのか、レーベリックが気になる事を話していたのだ。
レーベリックの片腕が消えた事、各地方の貿易を担当させている者も消えた事。
全員で10名の者が消えたというものだった。
事情を聞くためにヨッコとエイタはレーベリックの屋敷を目指した。
屋敷に到着するとレーベリックに面会を求めた。
面会はすぐに叶い屋敷に通された。
「ようこそ、ヨッコさん、エイタさん。わざわざ屋敷にまで足を運んでくれたという事はようやく護衛の件を考えてくれたみたいだね。」
「考えて無い。」「うん、考えて無いね。」
ヨッコが即答。続いてエイタも即答。
「じゃあ、何故来てくれたんだ? わざわざこんな遠い所まで。何か用事のついでか?」
「用事はあなた。」
「そうなんだ、レーベリックさんに聞きたい事があったんだ。ヨッコ、もう少ししゃべってくれないとボクが通訳みたいになってるよ。」
「うん、助かる。」
「もういいけどね、いつもの事だから。」
「君達、聞きたい事とは何だね?」
「10人。」
「はいはい絶対わざとだよね。レーベリックさんの所で人がいなくなってるって聞いたんで事情が知りたくて聞きに来たんだよ。」
「どうして知ってるんだ? まぁ、君達が優秀な事は知ってる、どこかで情報を掴んだんだな。それで心配で来てくれたわけか、いやいやありがとう。」
「違う。」
「そこは少し乗ってあげようよ。ボク達はこの町で起こっていることを調べてるんだ。そしたらレーベリックさんの所で人がいなくなってるからそれを調べに来たんだ。」
「なぜ居なくなったのか私にも分からないんだ。10人居なくなったのだが1人は私の片腕として長年勤めてくれていたケイトという女性で、婚約した所だったというのに。」
レーベリックは悔しそうな残念そうな表情をしている。
「うん、わかった。」
「何が分かったんだ?」
「なにも無い。」
「なにも無い事がわかったんだね。」
あー面倒だな、でもサジさんよりはマシかな?
イツミは「ん。」だけだからね。サジさんもあれでよく分かるよな。
「じゃあ、レーベリックさんお邪魔しました。ケイトさんの事も何か分かったら教えてあげますから。」
「え? もう行くのか? 君たちはその素早い行動力が身上だったな。ああ頼んだよ。」
ヨッコとエイタが『念話』で集合場所を決めて全員を集めた。
北の領主の所へ向かっているシロウとナナも呼ばれたし、イツミ、ムツミ、サジも呼んだしニコ、ゴロウ、ミコ、セブン、キュータ、パーチも呼んで、今やってることが終わったら集合するように伝えた。。
後から遅れてやって来たムロとトウタは町に入る前に呼び寄せた。
この2人がいい切っ掛けを持って来た。




