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第141話 世界樹の神子

帰りの馬車の中でメリアーナにプレゼントを渡した。


「メリアーナ、今日は付き合わせてしまって悪かったな。お礼というか迷惑料だ。」

そう言ってネックレスを渡した。


「まぁ嬉しい~、プレゼントなんて何年振りでしょう。綺麗なネックレスだわ。」

「普通のネックレスじゃないんだぞ。」

「あなたまだ私の事を驚かせたいわけ?」

「いや、別に驚かせているつもりは無いんだが、結果そうなってるな。」

「それでこのネックレスにはどういう秘密があるの?」

「まず素材が良く分からない。ゴールド系の魔物の素材なんだ。」

「ゴールド系? 聞いたことが無いわね。」

「そうなんだ、誰に聞いても知らないんだ。弱い魔物なんだが凄く綺麗なんだ。」

「へ~、そんなのがいるのね、私もギルマスとしてまだまだね。」

「それとそのネックレスは収納の機能も持っている。」

「!! 収納!? あなたまさか。」

「たぶんそのまさかかな? 亜空間収納だ。この大陸でもすっぽり収まるぐらいは余裕で入るよ。」

「・・・・・・。」

「それと。」

「まだあるの!」

「え? いらない?」

「いるわよ。いるに決まってるでしょ。」

「これだ。」


水晶を出す。

「最近できたとこなんだが、映像通信ができる。」

「・・・もう何でもありを通り超えたわね。」


魔石をセットし登録方法や使用方法を教えてやった。

「通信水晶はあるけど凄く特殊な技術なのよ? 距離にも限りがあるし使う者も魔法の熟練者でないと使えないし中々手に入らないのよ。それをこんなに簡単に。」

「簡単ならいいじゃないか。」

メリアーナは釈然としない様子だったが、私はルーキーズの事も気になっていたので聞いてみた。


「前に期待のルーキーが出て来たって言ってたが、どんな奴なんだ?」

ここはミコとセブンが担当だったよな。


「あなたと同じぐらいの歳だと思うんだけど、とにかく何でも早いのよ。どんな依頼でもすぐに終わらせるの。1日に3件なんて当たり前に熟すから少し押さえてもらってるわ。」

確かに私は今18歳だし、奴らも同じぐらいに見えるか。何歳として登録してるんだろ?本当の事を書くと0歳ってなるけどな。


「Sカードにはなったのか?」

「そうね、1週間目に私がしたわ。やっぱりライバルは気になる?」

「別に気にならないが何が切っ掛けだったんだ?」

「2つの大きな依頼をすぐに終わらせたわ。1つはシャーガーの群れ、もう1つはここじゃ珍しいけどダンジョンよ。どっちも1日で終わらせて来たのよ。もうSカードにするしかないでしょ?」

「ダンジョンがあったのか?」

「そりゃ、どこの国でもあるでしょ? この国にもあるわよ。他所の国と違う所は町の中には無いってことかな。」

両方とも私達なら楽勝案件だな。でも冒険者なら高ランクでも厳しいか。


「ただ不思議な事に居場所がわからないのよ。宿にも泊まって無いようだし朝には大体いつもいるし。」

「そういう詮索は無しじゃなかったのか?」

「そうなんだけどね、うちの初めてのSカード冒険者なんだし知っておきたいじゃない。」


最後には居場所を付き止める依頼を受けない? とまで言って来る始末だった。

もちろん本気では無いようだったが「やめとけよ」と言って別れた。

今度は普通のお店に誘ってねとも言われた。


屋敷に戻るとトウベイとルリコに挨拶をして「何かあったらすぐに連絡しろよ」と言ってアジトの屋敷に転移して戻った。



次の日は朝から通信水晶に連絡が入った。

初通信だった。あ、初は冥王に取られたか。むむ、冥王の攻撃まだ続いていたか。


世界樹の管理をしているイチコからだった。



『タロウ様、おめでとうございます。』

『イチコか? どうした? 何がめでたいんだ?』

『世界樹の神子がご生誕されました。』

『あ、この前の蕾だったやつか?』

『左様でございます。先程ご生誕されました。』

『それはめでたいな。見に行ってもいいのか?』

『もちろんでございます。是非お越しください、その為に連絡いたしました。』


あの時一緒だったのはアメーリアだったな。

『アメーリアも連れて行ってもいいか?』

『アメーリア様でしたら是非ともお連れ下さい。』

『じゃあ、アメーリアと合流出来たらそっちに向かうよ。』

『お待ちしております。』


すぐにバンブレアム帝国の外に転移した。

バンブレアム帝国は良く来るから町の中にも転送ポイントが欲しいな。

アメーリアの宮殿にもあるけど部屋の中だからな。

どこかに家でも買うか。王に言うとアメーリアの宮殿よりデカい家をくれそうだからな。買うにしてもバレないようにしないとな。


そんな事を考えながらアメーリアの宮殿に向かった。



門に着くと短剣を見せるまでも無く中へ通してくれた。

すぐにアメーリアが迎えてくれた。もちろん執事も一緒にいる。


「ようこそいらっしゃいませ、タロウ様。」

「急に来て悪いな。前に世界樹に行った時の事を覚えてるか?」

「いつでもいらしてくれて結構ですよ。世界樹の事を忘れる訳がありませんわ。」

「あの時に世界樹の天辺に蕾があっただろ、それが生まれたらしいんだ。イチコが世界樹の神子って言ってたぞ。」

「世界樹の神子ですか! そんなの伝説でしか聞いたことがありません。あ、」


まだやってる。今ビックリしたんだな。


「どんな伝説なんだ?」

「精霊界の始まりは世界樹から始まったと言われております。世界樹が実を実らせ種を作り葉を落とし、その実や葉や種が精霊となったり世界樹の枝から生まれたとされる精霊が、精霊界を作り広げ発展させ今の精霊界になった。イクスプラン教の教えではそうなっています。」


さすが聖大、良く知ってるな。そういう教えがあるんだな。でもイクスプラン教の信者なら誰でも知ってるような話しだな。

今の話だけでも十分伝説だよ。


「神子が出て来なかったな。」

「その始まりの世界樹を創ったのが世界樹の神子と言われています。」


なんだ? 世界樹を創ったのが神子で、神子を産むのが世界樹?

卵が先か、鶏が先かってやつか?


「神子が世界樹を創ったのに世界樹から神子が生まれるっておかしくないか?」

「いいえ、それがイクスプラン教の教えですから。」


あーそー。この世界の人達は皆そうなのね。卵が先か、鶏が先かなんて悩むやつなんかいないのね。悩んでる私がバカみたいだよ。


「その話は終わりにするとして、アメーリアはどうする? イチコは是非来てほしいって言ってたけど。」

「是非!!」

ダッと走ってアメーリアはすぐ下から見上げるように詰めよって来る。近い近い。当たってる当たってる。


「意気込みはわかったよ。このまま行ってもいいか?」

「はい!」


アメーリアと浮遊城に転移した。

城ダンジョンに入るとイチコが迎えてくれた。


「お待ちしておりました、こちらへどうぞ。」

イチコは世界樹の方に向かって行く。私達も後に付いて行った。

イチコはそのまま世界樹の中に入って行った。

私も付いて行こうとしたが世界樹の中には入れなかった。イチコは実体じゃなく精霊体だから入れるんだろうな。


少し待つと、イチコが赤ん坊を抱いて出て来た。

まだ生まれたてらしいが、金髪の髪の毛は綺麗に生え揃っていた。

緑色をした目もしっかり見えているようだ。

私を見て笑ってくれた。


「可愛いー! ねえタロウ様すっごく可愛いですね。」

「ああ、可愛いなぁ。」

「なにデレデレになってるんですか、おじいちゃんみたいになってますよ。」

「え? ん? そ、そうか。でも可愛いじゃないか。イチコ、抱かせてもらってもいいか?」

「確かに可愛いですね。私も抱かせてもらってもいいですか?」

「はい。抱いてあげてください。」


私が赤ちゃんを抱くと赤ちゃんが淡く輝き始めた。

その光は私の全身まで広がっていった。

同時に精霊ドライアドが色んなところから祝福に集まって来る。


「なんだ? この光は。」

「流石はタロウ様です! やっぱり選ばれたのですね!」

「何の話だ、何に選ばれたんだ? 何を興奮してるんだ?」

「タロウ様が世界樹の神子の父に選ばれたのです!」


どゆこと? 従者でも無く『子』? ですか?

この世界で結婚もしてないのに子供ばっかり増えて行くんですけど。

全部人間でもありませんし。


「どういう事なんだ? 父って意味がわからんぞ?」

「父というのは呼称ですが、実際は守護役です。世界樹の神子は成人になるまで1000年必要とします。そのうち最低10年間は人間界で育たなければいけません。その間守り育ててくれる者が必要なのです。私達は世界樹の従者として成長をお助けする役目の者ですが、人間界には付いていけないのです。その時の守護役の父としてタロウ様が選ばれたのです。」


なんだその無茶振りは。赤ちゃんなんて育てられる訳無いじゃないか。

【クロスランド】で生まれた連中も、世話なんかしてないからな。

レベルを上げて飯を食わせたら勝手に育っただけなんだから。

イチコも付いていけないってここも人間界みたいなもんじゃないの? 環境としては聖なる気があるから精霊界に近いとは思うけど。


「あ、あの、イチコさん?」

「なんでしょう。」

「私にも抱かせていただいても構いませんか?」

「はい勿論です、抱いてあげてください。」


赤ちゃんをアメーリアに渡し抱いてもらった。

「母親役はいらないんでしょうか。」

「もちろんいた方がいいのですが、タロウ様ならお一人でも守護役として安心してお任せできます。」

「教育もありますわよね?」

「確かにそうですが、こちらに戻ってから私達が教育を致しますのでご心配には及びません。」


それって私には教育を求めてないってことだろ? それなら、このままここに居ればいいじゃん。


「ね? 赤ちゃん? ママもいるよね?」

赤ちゃんが声を出して笑うと淡く光り出す。

さっきの私と同じようにアメーリアの全身も淡い光に包まれる。


集まっていた精霊ドライアド達から祝福の歓声が上がる。


「タロウ様、私もママになってしまったようです。」

「・・・ああ、そうみたいだな。若いママだな、アメーリアって何歳なんだ?」

「もうすぐ20歳になります。」

「えー! 20歳? ウソ! 今19~?」

「そうです。いくつだと思ってらしたんですか?」

「14か15。」

「そんなに子供じゃありません!」


洗礼って言ってたからてっきりそう思ってたよ。

確かに大人びた14・5歳だとは思ってたけど、【鑑定】してなかったからね。

お嬢様だから大人びてるんだと思ってたよ。背も高くないし。王家の知り合いなんて元の世界にいる訳無いし。


「この子の名前はどうするんですか?」

「お二人でお決めになってあげてください。」

「タロウ様、私いい名前があるんです。」

「じゃあ、付けてやってくれ。」

私は名付けは結構です。お任せいたします。



「いいんですか?」

「ああ、任せるよ。」


「この子の名前はエル。エルにします。イクスプラン教の守護神エルファリーゼからエルを貰ってエルってどうですか?」

「ん、いいんじゃないか? エルか。」


エルが淡く光ると同時に私とアメーリアも淡く光る。


エルはどんどん大きくなって行き120センチぐらいまで大きくなった。

アメーリアも何とか抱っこ出来ていたようだが、成長が止まると下に降ろした。

エルはもう立って歩けるようになっていた。

さっきまで赤ちゃんだったのにね、妖精も名付けで精霊になったし当たり前なのかな。


「この子もクラスアップできるのか?」

「いいえ、世界樹の神子は最高(トップ)ランクですから。」

「やっぱりレベルアップをさせると大きくなるのか?」

「はい、なります。その為に人間界に行かせるという意味も有ります。」

「食べ物は?」

「人間と同じもので結構です。たまには世界樹の実を差し上げてください。」



名前:エル♀1歳 精霊王 LV1

HP200 MP200 攻撃力150 防御力150 素早さ200

親 :佐藤太郎・アメーリア・バンブレアム

スキル: 【精霊召喚】【統率】【聖気】【精霊門】【鑑定】

ユニークスキル:【岐】【世界樹創造】

称号:世界樹の神子



まずはレベル上げか。うちの連中に任せればいいんだろうけど『父』だからな。

一緒に行ってやるか。


「イチコ? この【聖気】と【岐】ってスキルはどういったものなんだ?」

「【聖気】は聖なる気を発することでどんな異常状態でも回復します。『魔』属性をもつ魔物にはダメージも与えます。『聖』属性の私達には回復効果もあります。【岐】は主に分岐を意味します。条件を満たした資格がある者にクラスチェンジをさせることができ、そのクラスチェンジをする際にいくつかの選択肢を与えることもできるのです。」


女王って感じの能力だね、その父が私でいいのか? うちの連中にダメージ与えないでくれよ。【世界樹創造】は世界樹を創るって事だろうから聞かなくてもいいか。


「それって魔物でもいいのか?」

「もちろん結構です、人間にでもできます。」


「まずはレベル上げをしようと思うが何か気を付けることはあるのか?」

「レベルアップ前には世界樹の実を差し上げてください。そうすることで効果的な上がり方をしますから。」


レベルが上がる前って、いつ上がるか分からないよ? レベル上げの時はずっと世界樹の実を食わせておくか。


「またわからない事があったら連絡する」と言って城ダンジョンを後にした。

出る時に、また世界樹の実を渡された。

十分持ってるとは言ったが10万個渡された。そんなに食えねーって。

貴重な種を持っている世界樹の金色の実も10個くれた。

これは全部エル用にしてやろう。


「いってらっっしゃいませ、タロウ様、エル様、聖母様。」

なんか最後に変なのが付いて無かったか?



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