第136話 異界の扉
今日はもう予定もないし、アジトの屋敷に戻って何か作ろうか。
アジトの屋敷に戻って来たらイチジロウが何かニヤニヤしている。
隣にミルキーとノアも立っていた。
あれ? まさかダンジョン核の事がバレたか?
素知らぬ振りを決め込もう。
「イチジロウ、昼飯は食べて来たからいらないぞ。もし作り過ぎてるんなら収納で貰っておくが。」
「大丈夫ですよい、作り過ぎた分はいつのジャンさんに食べてもらってるよい。」
確かにジャンならいくらでも食べそうだ。なにせ島だからね。ジャンも残飯処理では無いからいいか。
「タロウ様、ダンジョン核の事でお話しがあるんですが。」ミルキーから声が掛かる。
ドキッ! やっぱりバレたか。
「な、何の事だ?」
「私が治めていたサントスの森にダンジョンン核がある場所があるのですが、一緒に付いて来て頂こうかと待っていました。」
違ったー、バレて無かったよ。
「ほーそうなのか、どんなところなんだ?」
「木の中なんです。大きな木の根元に木に入れる穴が開いているんですが、中が5階層になっていまして、その最上階にダンジョン核があるんです。」
「ん? あるのはわかってるのか。何か取って来れない理由があるんだな?」
「はい、冥王様の使者に守るように言われているダンジョンですので。」
冥王の使者ね、前にも聞いたことがあったな。
「何か見られて困る様なものでもあるのか?」
「わかりません。」
「それで確認か。いいよ、付いて行こうか。イチジロウも誘いたかったから私の許可が欲しかったんだな。」
「はい、その通りです。今からでも構いませんか?」
「そうだな、早い方がいいよな。よし今から行こうか、誰が馬車を引いてくれるんだ?」
「それはノアさんに頼んでいますが、転送ポイントは作ってあります。イチジロウもいるので、念の為に頼んだだけです。」
ノアとミルキーとイチジロウにココアも付いて来た。
イチジロウがソラに変われば初期の頃のメンバーだな。
目的の木の前に転送ポイントは作ってくれていたので、すぐに着いた。
確かに木の根元に人が2人並んで入れるぐらいの穴が開いている。
入ってみると真っ暗では無かった。真っ暗でも私達には問題無いが明かりがあるって事はダンジョンだな。
「イチジロウ、どうだ? ここのダンジョンは。」
「そうだねい、ダンジョンだねい。でもここはただのダンジョンじゃないねい。」
「どう普通じゃないんだ?」
「どこか別の空間と繋がってるみたいだねい。」
「危険なのか?」
「わかりませんねい。」
イチジロウでも分からないのか、ではどうする? 戦力的にはイチジロウを守りながらでも何とかなるか。
「行ってみようか、ダンジョン核の件もあるし、どこと繋がっているかも知っておきたい。」
「かしこまりました。では、私が先頭を行きます。」
「ダメよぉ、わらわが先頭よぉ。」
ココアとノアで言い争いをしてる間にミルキーが先頭に立って歩き出した。
「さっさと行きますよ。」
「「あ。」」
このダンジョンは上へと昇るダンジョンだった。
出てくる魔物は最高でもDランクで全然大した事は無い。
植物系と動物系の魔物が多く、偶に虫系の魔物が出る程度ですぐに最上層まで辿り着いた。
聞いていた通り5階層だった。
最上階層は今まで通って来た通路より更に明るい場所で、ダンジョンマスターは先日コールの森で見たアンプラリアだ。
1体だけだったし私達は身体異常耐性を持ってるので問題ない。
と思ってたらイチジロウが幻覚を見せられているようだった。「もう食べられないよい」って言ってる。
こいつは何も耐性無かったよな、しかも武器も魔法も使えないし、レベルが上がってHP・MPは上がったが弱い事には変わりない。
アンプラリアもサクッと倒してイチジロウの回復を待ってダンジョン核の所までやって来た。
「イチジロウ、もう大丈夫か?」
「大丈夫だよい、うぷっ。」
さっきの幻覚で魔物肉を相当食べたようだ。実際は食べてないんだけどね、そういう気にさせられたらしい。
このダンジョン核の所にある魔法陣は転送魔法陣で間違いないな、普通なら入り口に戻されるだけだがイチジロウが別の空間と言ってるからにはどこかに飛ばされるんだろうか。何かヒントでもないかな。
「ミルキー、この魔法陣を通った者はいるのか?」
「いえ、ですが冥王様の所と繋がっているとのではないでしょうか。このダンジョンは冥王様の使者に守るように言われておりましたので。」
「守るようにって、それなら冥王の所に繋がってる可能性は高いじゃないか。魔法陣を使ってもいいのか? ダンジョンを守れって言われてたんだろ?」
「はい、今はタロウ様の従者ですし、この魔法陣を別の場所に移せればダンジョン核が使えると思うんです。」
ダンジョン核の為ですか。あなたもダンバカだったんですね。
「うぷ、それじゃないよい。それは入り口に転送される普通の転送魔法陣だよい。」
イチジロウが話しに割り込んできた。
「さっきお前が別の空間と繋がってるって言ってたのは、この魔法陣じゃないのか?」
「こっちだよい」
そう言ってイチジロウが指さしたのは、更に奥にある扉だった。
確かにダンジョンの最深部で扉を見た事は無いな。
「あの扉がどこか別の所に繋がっていると言うのか?」
「そうだよい、あの扉の向こうはダンジョンではないよい。感じた事のない空間だよい。」
あの扉の向こうが冥王の所に繋がってるかもしれないんだな?
「冥王かぁ、行ってみる価値はありそうだが、今日はイチジロウを連れてきているし冥王の所と思えるのなら念のため【冥界渡り】を持っているムツミを連れて行きたい。場所はわかったし今日の所は帰って明日また来てみよう。」
「わかりました。」
この場所に転送ポイントを作ってアジトの屋敷に戻った。
明日に備えメンバーを考えておく。
今日行ったメンバーは明日も参加したいと言って来た。
後はルーキーズから選ぼうか。
ユニークスキルで【冥界渡り】を持っているムツミ。【結界】を持っているムロ。あと【雲】を持っているエイタあたりを連れて行こうか。
夕食になりエルミアがブツブツ文句を言いながら帰って来ていたので皆に紹介した。
研究を途中で辞めさせられてレイに「戻って夕食にしなさい」と言われ渋々戻って来ることになったので文句を言っている。レイの言う事には逆らえ無いようだ。
元洞窟ダンジョンに研究室兼作業場を作ったので、邪魔になるから行かないように言っておく。
留守番にレイという風の精霊がいることも合わせて伝えておく。
明日の予定として、ムツミ、ムロ、エイタをダンジョンに連れて行くと言ったら全員が来ることになってしまった。
ダンジョンと言っても目的が違うしダンジョンの最下層に行くだけだと言ったが全員が「行く!」って聞かない。
冥界って聞いてバトルって思ってるんだろうなぁ、
冥界に繋がってる可能性があるって言っただけなのにな。
まぁいいか、置いて行く者は、イチジロウは決定だろ、商人で動いている6人と世界樹の所のイチコにサブロウ、米の木を守ってもらってるアーリー、アジト自体のジャン、エルフのエルミアも戦闘系では無いしレイはダンジョンから動けない。私の従者から13人抜くと35人で行くの?
総勢48名、トウベイ・スズーキ親娘は従者では無いけど入れると総勢50名か。いつの間にこんなに多くなったなんだ?
改めて数えたら多すぎない? いつもそんな数でダンジョン行ってたのか。そりゃもっと作って欲しいって言うか。
いやいや、ここで甘やかせてダンジョン核があることがバレたらダンジョンだらけにされそうだから、それは絶対内緒にしよう。
翌朝、朝食が終わり全員で転移した。
短刀の効果、半径10メートル以内で、自分の指定した者であれば全員同時に転送可能。
短剣を持っている人と一緒に転送します。
だったよな。全員で転送ってこういう時は便利だな。
昨日確認したダンジョン最上部の扉の前で全員揃った。
「言っておくが戦かいに行くわけじゃ無いんだからな、まだどこに繋がっているかもわからないが、もし冥王の所だとしても敵じゃ無ければ戦ったらダメだぞ。敵だったら戦わないといけないが、ちゃんと確認してからだぞ。」
「「「「「「はーい」」」」」」
ホントにわかってんのかね? 頼むよ、冥王と戦かうなんて嫌だからね。




