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第131話 ピアのお願い

アジトの屋敷に戻って来ると、デルタとミルキーが待っていた。


「お帰りなさいませ。」

「珍しいな、一緒にダンジョンに行かなかったのか?」

「はい、ピア達が話しがあるって『念話』がありまして。」

「私も呼ばれましてな、こうして待っている所です。」


デルタのこの話し方、最近慣れて来たと思ってたんだが、やっぱり慣れないな。

「ピア達が来るのか?」

「もう来るはずです。」


あの煩いのが来るのか。隠れてようか。あ、遅かったか。


「まいど!お久しぶりでんなぁ、ちょっと邪魔すんでぇ。」

「邪魔すんねやったら帰ってんか。」

「ほんなら帰るわ、邪魔したな……ってなんでやねん!」


「「「・・・・・。」」」


「みんなどないしたんや?静かやな?」

「ほんまや、どないしなはったんや?」

「「「・・・・・。」」」


お前達、商人だよな。完全に笑人になってるぞ。


「掴みはオッケーのはずなんやけどなぁ。」

「おっかしいなぁ、これでどこ行っても商談成立するんやけどなぁ。」

「そんなわけ無いやろ。」


もう無視でいいだろ。

全員返事もせず屋敷に入った。


「ちょっとちょっと、みんなどこ行くんー?」

「ちょっと待ってーな。」



屋敷のリビングというか共有スペースというか今まで食堂として使っていたところで、イチジロウに飲み物を用意してもらった。


「お久しぶりです、タロウ様。」

「イロハか、久しぶりだな。いつもこうなのか?」

「はい、いつもこんな感じです。」

「すまんな、苦労をかけるな。」

「いえ、もう慣れました。逆に慣れると楽しいものですよ、何を話してるかわかりませんけど。」


それはそれでキツイ指摘だな。奴らはただ騒いでるだけってことか?

仲良くやってくれてるんならいいが。


「今日は何の用だったんだ?」

「わかりません。ピアがユニークスキル【先読み】で何か閃いたみたいで、ミルキーさんとデルタさんに情報を聞かせてもらうと言っていました。タロウ様にもお願いがあるようでしたが。」

「そうか、私は心の準備ができていないから先にミルキーとデルタに話しをしてもらおうか。」


同じ場所だが、少し離れた席に4人で座り話し始めた。


「そういえばエース、妹を従者にしたぞ。名前はチビだ。ジョーカーには許可を貰ったがお前には言って無かったな。」

「もうジョーカーから聞いています。私もチビをタロウ様の従者にしていただいて喜んでました。ありがとうございました。」

「そうか、それなら安心したよ。しかし小さいくせに元気な妹だな。」

「そうなんです、私達も手を焼いていました。これからもご迷惑をお掛けすると思いますが、目を掛けてやってください。」

「大丈夫だよ、もう仲間だ。それに説教はもう済んだし、ルーキー達とも仲良くやれそうだよ。」

「ありがとうございます。」


ララとロロとも話をしたが、商人としての仕事は順調すぎる程で最初に渡した金貨10000枚は、ララとロロとエースとイロハの商業ギルドのBランクになるのに金貨400枚を使った。それ以外でも一度大分減った事はあったが手持ちが無くなったことはないそうだ。金貨10000枚とはいえ上手くやってるみたいだな。


特にピアの交渉と先読みが凄いらしい。

収納と転移はやはりお願いされたらしいが、それは初めに許可しておいた。

収納を使うという事はそれだけ大きな取引をしたという事で、それだけの元手を稼いでいないとできないからな。


その物語は今度ゆっくり聞かせてもらうよ。


もう相当稼いだようで、最近では大金貨での取り引きが多くなっているそうだ。

まだ1か月も経ってないよな? 私も城巡りで頑張ってたよ。



向こうの話しも終わり、ピアとユウトがこっちにやって来た。

「タロウ兄さん、今日はお願いがあってやってまいりました。」

「なんだ?どんな願いだ?協力はさせてもらうぞ?」

「結論から申し上げますとぉ、砂糖を分けておくれやす。」

「砂糖か、構わないがどれぐらいだ?」

「ココアねーさんから持ってはるのは聞いとりましたが、どのぐらい持ってはるんですか?」

「そうだな、100メートルのサイコロぐらいの大きさを持ってるよ。」

「そらぁ凄いですなぁ、それを全部頂くわけには行きまへんやろか。」


ココアもイチジロウも今言った半分ぐらいは持ってる。

今はガジュマルも10体になってるし、月に10メートルの立方体ぐらいの砂糖鉱石は取れる。私が持ってても使う時は別に無いからね。協力させてもらうか。


「別に構わないぞ。誰に渡せばいい?」

「収納担当はイロハねーさんにやってもろてます。イロハねーさん、よろしゅう頼んます。」

「わかりました。」

「じゃあ、外で渡そうか。」

「あっ!その砂糖やけど、大きい固まりやのうて1メーターぐらいにしてもらえまへんやろか。」

「小さく切ればいいんだな?」

「そないだす。」

「わかった。」


確かに収納は便利なんだけど、収納中に中で分けれないのが不便なんだよな。

大きいまま収納すれば、その状態じゃないと出せないんだよな。

屋敷の前で大きな砂糖鉱石を出し、小さく斬ってやった。

それをイロハが収納した。


「ピア、これでいいのか?」

「おおきに~、これでユートピア商団もAランク確定や!」

「おいおい、それは言い過ぎだろ。砂糖ぐらいでAランクになれないだろう。」

「そんなことありまへん。うちの計算で行くと、この砂糖のおかげであと3日もあればAランクになれますねん。」

「ほんまか姉ちゃん!それやったらわても聞きたおます「なぁ!」」


どうして二人で一緒にこっちを見る! 何のお約束だ? お前達はどこを目指してるんだ?


「なぁ、タロウ兄さんも聞きたいやろ?」

「聞きたいけど聞きたくない。」

「どういうことなん?」

「どういうことか知りたいが、イロハから聞くよ。」

「タロウ様、申し訳ありません。私にはわかりません。」

「ほらぁ、イロハねーさんも言うてるやん。うちが教えたるさかい、よぉー聞いとき。」



今回の旅の始まりはツンザンブレーン連邦の1国であるサラーズ国から始まった。

サファイアの産出国で連邦の7国でも下位の国であった。

ピアが初めに目を付けたのが連邦内で安く見られているサファイアだった。


装飾品としてしか価値がなかったサファイヤを加工して工芸品にした。

今まで装飾品としてしか見られなかったサファイアが、クリスタル工芸品として売り出されるとブームが巻き起こった。


まずは金貨1000枚でサファイアを購入する。

この世界ではサファイアは安いから20トンのサファイアが購入できた。

この国の2年間分の産出量に当たる量だったが、商人ギルドBランク会員だったからすぐに購入できた。


そのサファイアを持って指輪細工が得意な隣のアライドン国に行く。

小さい魔物をデザインしてもらって10種類のクリスタル像を作ってもらった。

別の店では龍のデザインでポーズを変えて5種類作って貰った。

それを見本としてバンブレアム帝国に持って来て、工房で100体ずつ1500体を時間重視のため別々の店で作って貰った。大きさも大を20中を30小を50と作ってもらった。

素材は持ち込みなので工賃として全部で金貨1000枚出すことになった。


出来上がり品を見せてもらったが、かなり出来は悪い。が、愛らしいと思える作品になっている。

ピアに言わすと態とアバウトな出来にして簡易化する事で、可愛らしさと制作時間の短縮を狙ったそうだ。

龍の方は差別化をはかり、リアルな仕上がりにしている。

もちろん、高額設定。


狙いは正解だったみたいだな。


私もイチジロウの木像を作ったが、リアル過ぎて欲しいとは思わなかったものな。


私が出した金貨の事はエースの【金】があるのであまり心配はしてなかったらしいが、これで失敗したら自分には商才が無いと商人は諦める覚悟だったらしい。


ピアの目論見は当たった。


初めの1500体はバンブレアム帝国で販売し、すぐに売り切れた。

大を金貨5枚、中を金貨3枚、小を金貨1枚で売り出して2日で完売した。

素材を入れても倍以上の売り上げである。

サファイアはまだまだあるので加工の為の工賃に売り上げも回し10000体作らせた。

今度はバンブレアム帝国だけではなくツンザンブレーン連邦内でも売り出した。


それも正解だった。

町の特産品として各領主が目を付けて買占めが起こった。

すぐに在庫が底を付き更に量産することになる。

売り出してもまずは地元の者が買ってしまって土産物屋にも並ばないほどの盛況ぶりだ。


今度はサファイアも更に買い占める。

そうすることでサファイアも数が少なくなりサファイヤ自体の価格も高騰する。


ここまででサファイヤを初めに購入してから10日。

早すぎだ。


制作中には見本を持っての営業や、貴族同士のつながりの把握などをしていたとは言うけど、行動力が凄いな。

イロハやララやココも手分けして売り込みの営業をさせられたし、エースはアッシーとして濃き使われたそうだ。

立ってる者は親でも使え。だそうだ。


後は持っているサファイヤを売るだけでも相当な儲けが出るのだが、昨日サファイアの価格がさらに上がった所で、ピアは大量に持っていた半分のサファイアを売って残った分で50万体発注した。売れ行きの遅い種類を減らして新しい種類の物を入れたりもしている。


サファイアを売った分だけでももう十分儲けが出ている。

後の売れた分はすべてプラスになる。

その頃にはブームも終わってるというピアの計算だからその次の発注はしないそうだ。


しかもここで更に付加効果があった。

国王から国の活性化の貢献者として認められそうなのだ。

ここはサファイアの国だ。そのサファイアを広め価値も上げた事は、まだ短期間とはいえ貢献度も大きい。

もし認められればAランクカードになれる。

そこで更にもうひと押しする意味で砂糖をサラーズ国で流通させて一気にAカード奪取を狙う計算らしい。


砂糖は貴重というか元々この世界には無いから少しずつ出して城にもわかるように領主に噂を流させる用意もしてあるみたいだ。

ケーキはイロハが作れるから見本を見せる意味でも丁度いいだろう。


砂糖が無くなるまでにはAランクカードをゲットできる計算らしい。

私もそう思うよ。


別物語で聞こうと思ってたのに全容がわかってしまったな。



別の件になるがピアから教えてもらったのが武器ギルドだ。

確かに今まで見た事が無いのに武器ギルドがあるのを不思議には思ってた。

武器は鍛冶屋で作ってるしね。


武器ギルドというのは商人が武器を売買するためだけのギルドで表立った活動はしていない。

武器ギルド会員にならないと商人は武器の売買をすることができない。という事は、普通の商人は余程利益の継続が見込めないと手を出さないらしい。


鍛冶屋は鍛治ギルドに加盟した時点で武器ギルド会員にも自動的になるそうだ。

鍛冶屋の救済のためのギルドだな。やっぱり鍛冶職人は商売が下手な奴が多いんだろうな。


ピアとユウトは武器ギルドにも入ったそうなので、私が暇潰しで作っている攻撃力の低めのオーガソードなど、メジャーなところを何本か渡してやった。


こちらも年会費や更新はあるが、商人ギルド会員でAランクに成れば武器ギルドも更新不要、年会費無料になるそうだ。


これは1人前と認めるのが早くなるかもな。

ちゃんと商人を目指してくれてるようで安心したよ。



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