第130話 湖底ダンジョン
夕食までまだ時間はあったが、アイテムについてチビにしっかり説明してやってたら夕食の時間になった。
チビを紹介すると皆暖かく迎えてくれた。
754歳と1歳児達なんだが気が合ったようですぐに打ち解けた。
明日は冒険者ギルドを休んで皆でダンジョンに行く話になったようだ。
もちろん許可したよ。チビが弱い事だけは念を押しておいた。
コーネライ湖のダンジョンの件は誰も知らないようだな。というより知らないふりをしてるように見える。
偶に私と不自然に目が合う者が多すぎる。なんか目が輝いてるしニヤニヤしてるし。イチジロウに目を向けるとすぐに目を逸らして隠れるし、これは皆知ってるな。
それでも何も言って来ないところを見ると内緒ということは伝わっているのだろう。
これぐらいはいいかな。
と思っていた私が甘かったようだ。次の日にダンジョン改造のためイチジロウを連れて湖の底のダンジョンに行ったら、すでに話しは出来ていたようで相当ハードなダンジョンが出来上がった。
浮遊城の洞窟ダンジョンをS級ダンジョンとすればこちらはSS級と言ってもいいだろう。
こちらは40階層。「ここのダンジョン核は弱いぞい、もう1個出してくれよい」って言うから私がダンジョン核を持ってるのを教えてたかな? とは思いつつ出してやった。
イチジロウはダンジョン核を2つ並べ、手を翳して念じる。
ダンジョン核は2つとも虹色に淡く輝き出す。
光が消えて落ち着くと1つのダンジョン核がもう1つのダンジョン核の周りを回りだした。1周して元の位置に戻ると今度は止まっていたダンジョン核が動き出しもう1つのダンジョン核の周りをまわり出す。その動きがずっと続いている。なんか今までと違い凄く強力そうな予感がする。
確かに思った通り違ったようだ。
ダブル核っていうのは単なる1+1ではなくて倍どころの話ではないらしい。
10階層20階層30階層のフロアマスターが全部向こうのダンジョンのダンジョンマスターのタイタンになっていた。
もちろん他のフロアはすべてモンスターハウス。しかもすべてAクラスモンスター。たまにSクラス下位の魔物まで混ざってる。
ダンジョンマスターはアジ・ダハーカというSSクラスの毒系の三つ首龍にしてあった。
そこまでしてもダンジョン核にはまだ余裕があるらしい。
騙された。
昨日の時点でイチジロウがバラシてしまったのはわかったが、ダンジョンの内容までリクエストを受けてるとは思いつかなかったよ。
しかも私の持ってたダンジョン核まで利用するとは。
試しに私がチャレンジしてみた。
流石にハードだと思ったので分身の指輪を8個付けたよ。私の分身が8体。結果は楽勝だった、時間もそんなにかかって無い。
モンスターハウスも全部の魔物をやっつけずに階段を見つけたらすぐに下に降りたよ。
お試しだし、私は戦闘狂でもダンジョンバカでも無いしね。
私にダメージは無かったが服はボロボロになった。途中で分身体の1人が部屋の中央で最大級の炎魔法を使いやがった。確かに火耐性はあるが、服は全部燃えてしまった。
私の分身だろ? もっと気を使えよ、とは思ったが「さっさとやっつけて早くクリアしろ」っていう命令しかして無かったからね。
8体もの分身を同時に操れる訳無いし。
1体か2体程度なら細かい指示も出せるけど、8体なんて無理です。
元になってるのは自分だしぼんやりとはわかるけど、しっかりと命令をしてやれば放置でも戦闘では問題無かった。
ここには敵しかいないけど、もし見方がいても問題無い感じだった。
イチジロウがずっと付いて来てたが被害は受けなかったから。
魔法で服を燃やされてからは「刀だけでやっつけろ。」も付け加えた。分身体は仲間が使ってるソニックブームも使えてたよ。私は一度も使ったことが無いんだけどな。
5つぐらいの同時命令までは問題無くやってくれた。それ以上は試してないのでわからないが、これぐらいできればいいんじゃないかな。後は見てるだけだったし。
こんな事を自分で言うのも恥ずかしいが、私ってこんなに強かったんだと再認識させられたよ。
魔法の威力もそうだったけど、刀を持っている時の私ってこんなに強かったんだと思った。簡単な命令だけだから純粋に魔物を排除するだけの分身たちは無駄な動きも情けも無く、ただただ排除するだけ。無茶苦茶強かった。
モンスターハウスよりフロアマスターやダンジョンマスターの方が楽だったね。
1体だから。
ついに私もダンジョンマスターキラーの称号を身に付けてしまったよ。
なんか後にWって付いてるけど。
ハードなダンジョンだけど、どうせ大勢で行くんだろうし死ぬことは無いだろう。
朝から行って昼過ぎで終わった。
チビの事も気になったので浮遊城まで転移した。
イチジロウはアジトの屋敷に帰って行った。
来たついでに城ダンジョンでイチコに葉や実を補充してもらった。
なぜかソラがいた。
「ソラ? お前は洞窟ダンジョンに行かなかったのか?」
「こっちの方が面白いんだー、もう1周はしたしねー。」
すでに1周はしてきたんだ。
「そういえばお前、尻尾は今何本なんだ?」
「8本になったよー、あと1本だねー。」
でもこいつカンストしてたよな、どうやって9本になるんだ?
「9本になったらどうなるんだ?」
「どうなるんだろうねー、わかんないー。」
そうだ、ソラだった。
「チビの様子はどうだった?」
「うん、すっごく燥いでたよー、楽しそうだったー。」
仲良くできるじゃないか、元々はそういう子なんだよ、いい子じゃないか。
「それでソラはここで何してるんだ?」
「調合してるんだー、ここってすっごくいいお薬が作れるよねー。」
ソラって薬を作ってるけどいつ使うんだ?どのぐらい作ってるんだ?
私が武器や防具を作るのと同じ感覚かな?
「最近、フェリアスさんの所へは行ったか?」
「昨日行ったよー、ご主人様にお話しがあるって言ってたー。はいこれもー。」
大量の金貨も渡された。
「そういう事はちゃんと言ってくれないと。」
「忘れてたー。」
「フェリアスさんは急ぎの用って言ってたか?」
「んー、えーと、別に言ってなかったかもー。」
これは行った方が良さそうだな。
チビも問題無さそうだし、ロンレーンの屋敷に転移して薬屋ギルドにやって来た。
「こんにちは。」
「ようこそタロウさん。ソラちゃんがちゃんと伝えてくれたんですね。」
「ええ、まぁ。」
「ではお願いできますか?」
「何をでしょうか。」
「ソラちゃんは伝えてくれて無いんですね。追加の注文なんです。」
フェリアスはやっぱりという顔をした。
「すみません。聞いてませんが、持って来てますよ。この前と同じでいいですか?」
「はい、お願いします。」
倉庫で葉と樹皮と樹液を前回と同じだけ出してやった。
「いつもありがとうございます。本当に助かってます。おかげで各地からもお礼の連絡が止まりません。」
「それは良かったですね。それで実の調合方法は何かわかりましたか?」
「それはまだです。ただ、ツンザンブレーン連邦のユニコーンの生息地あたりに住んでいる賢者様なら知ってるのではないかと何件か報告はありました。ただ、賢者様とは全く連絡が取れないのです。」
ユニコなら何か知ってるかもな。
「ヘッケラー様という賢者様なんですが、生きてるかどうかもわからないのです。」
ヘッケラー・・・聞いたことがあるような・・・・。
【那由多】わかるか?
――アイスゴーレムの加護にあった名前です。
あー、そんなのあったなぁ。アイスゴーレムは私達が倒してしまったから会っても怒られるかもしれないなぁ。ダンジョン核まで持って来てしまってるし。
いない方がいいなぁ。いたら会いに行かないといけないだろうし。
行くと怒られそうだ。
でもアイスゴーレムって100年以上守ってるってユニコが言って無かったか?
「タロウさん?今更ですが、薬屋ギルドのカードを発行させていただきたいのですが、宜しいですか?」
「もうたくさん持ってるので別にいらないのですが、ギルドのカードには結構助けてもらってますからね、いただけますか?」
「ありがとうございます。本部からずっと言われておりまして、ようやく渡せてホッとしました。これはソラちゃんに渡したカードと同じものでAランク3つ星カードなんですよ。」
そう言って薬屋ギルドのAランクカードを渡してくれた。
「ソラもこれを持ってるんですね、ありがとうございます。」
「たくさん持ってるとおっしゃいましたが、どこのギルドにはいっているのですか?」
「冒険者ギルドと鍛治ギルドと商人ギルドですね。鍛治ギルドと商人ギルドはAランクをもらいましたよ。」
「それは失礼しました。それでも薬屋ギルドのカードも持っててくださいね。役に立つこともあると思いますから。」
お礼を言って薬屋ギルドを後にした。




