第127話 アーリー
城を後にして私達は冒険者ギルドにやって来た。
オーフェンに完了の報告だけでもしてやらないとな。
忙しいんだったら伝言でも構わないと思いながら、オーフェンを呼び出してもらった。
すぐにマスタールームに通された。
何かあったかな?こういう勘はいつも当たってるよな。
「タロウさん、ようこそ。他の皆さんもようこそいらっしゃいました。」
「今日で貰ってた招待状を全部済ませたんで報告に来ただけなんだが。最後がこの国の城だったんでな、ついでに寄ったんだが何かあったか?」
「はい、1件急を要する案件が出ました。本当に寄って頂いて良かったですよ。」
勘が当たってしまったか、今日は6人で来てるし大丈夫だろ。
「内容は?」
「はい、以前にお願いした依頼でコーネライ湖の件がありましたが、このコーネライ湖がある森の中で異変が起こっておりまして、うちのSカードを1チーム行かせたのですが連絡がありません。斥候を先に出した時には蜘蛛の魔物が大量発生しているという情報がありましたので、火魔法が得意のチームを行かせたのですが戻って来ないのです。」
コーネライ湖っていうとジョーカーがいた所だな。奴は今でも主のようだが、湖も毒化を浄化して綺麗になっているはずだが何があったんだろう。
「行ってみないとわからないな。ちょっと行って来るよ。」
「お願いします。」
オーフェンは今日来た3勇者とは初見だったようで、勇者の装備が気になっているようだった。
「その方達は初めてですが、ウルフォックスメンバーですよね?胸にチーム名も入っているようですし。」
「こいつらはマーメライの冒険者ギルドでSカードにしてもらったよ。いい鎧だろ?自慢の一品だ。」
「え? タロウさんが作ったのですか?」
「そうだよ、格好いいだろ?」
「何でもできるんですね。私は好きですね綺麗ですし。でも冒険者には白は向きませんね。」
「白はダメなのか?」
「ええ、冒険者は戦場で戦う訳ではありませんので白は向いて無い色に入りますね。ダンジョンや森の中に入ると目立ちますから、夜でもそうですね。だから黒系が好まれますよ。」
そんなのがあったんだ、いいじゃないか強いんだからそのぐらいのハンデ。
格好良い方がいいに決まってるよ。私の知ってる勇者は白を着てるんだよ、ゲームの中だけど。
勇者には白なんだよ。
私の作品にケチを付けるんじゃない。
ほらみろ、そんなこと言うからもう脱ぎたがってるじゃないか。
「本気用だよ。」ボソッと呟いた。
単なる負け惜しみだ。
だが、効果はあったようだ。それからしばらくは白装備の勇者達だったから。
バンブレアム帝国を出てリクに馬車を引いてもらった。
主であるジョーカーも呼び出し町の外で合流した。何か情報を持ってるだろう。
ジョーカーの情報では少し面倒な魔物のようだ。
「蜘蛛の魔物が大量にいるという事はブロースパイダーがいると思います。この蜘蛛の魔物は多くの卵を産みます。その卵や成体を狙ってアーミーアントが巣を作るんです。この女王もたくさん卵を産みます。それだけなら数が多いだけですので排除するのは簡単なのですが、もしそれらが大量にいることでアンプラリアが居付いていれば面倒な事になります。人間だったらまず勝てないでしょう。」
ブロースパイダーもアーミーアントもDクラスの魔物で女王でもCクラスらしい。
ただ数が多いのと蜘蛛の巣が面倒なだけで、それさえ気を付ければ簡単に倒せるらしい。
厄介なのがアンプラリアという植物系の魔物で幻術を使って魔物でも人間でも食ってしまう。しかも植物系のくせに火耐性を持っている。Bクラスでも上位に位置する魔物だ。
それが大量に発生していた場合、人間の場合は同士討ちをするか魔物を可愛い動物に見せられるか花園を見せられてそのまま食われるか。いずれにしても無事では済まないそうだ。知性が高い者に程、幻術は効果が高いから人間には効果的なスキルだな。
幻術か、私達は身体異常耐性を今日来てる全員が持ってるから問題ないな。
森に辿り着き少し奥まで入ると、もう所々に蜘蛛の巣が確認される。
「ジョーカー、こいつらって1体でも残すと大量繁殖するのか?」
「この辺りにいる奴は大丈夫ですね。ただのブロースパイダーしかいませんからある程度数を減らせば全部排除しなくても問題無いでしょう。問題はCクラスのバロースパイダーです。ブロースパイダーからたまに進化するんですが、こいつが大量の卵を産むんです。」
森を奥に進んで行くと蜘蛛の巣に引っ掛かっている小さめの魔物や動物が目立って来る。
更に進むとこれ以上進めないぐらいの蜘蛛の巣が張ってあった。
蜘蛛の巣は火魔法ですぐに焼き尽くせた。ついでに何体ものブロースパイダーも排除しつつ更に奥へと進む。
すると急に蜘蛛の巣が無くなった。奥の方を見てみると向こうの方には蜘蛛の巣があり、この空間は蜘蛛の巣で覆われた空間になっているようだ。
その中央にアンプラリアがいた。大量に発生していた。100体以上はいるだろう。
食虫植物の魔物が100株以上。見たく無いです。
「火耐性があるって言ってたよな、纏めて排除する方法は無いのか?」
「「「「任せてください!」」」」
え?
全員一斉にソニックブームを発射!
ダンジョンで使ってた奴ね、はいはい。根の部分まで綺麗に土魔法で耕すんだ。
ハルの【音】で作ったやつが一番デカかったな、流石ユニークスキルってとこか。
ハルは「虫はイヤー!虫を食べる草はもっとイヤー」って張り切ってたもんな。
勇者も強くなったもんだ。
ここに何か植えたいな。あ、米か。魔物もそこそこいるだろうし、いいなそれ。
でも後だな。今はアリとクモだ。
この場所を中心に7人で7方向に別れて手分けした。外側に向かいながら火魔法などで冒険者を確認しながら蜘蛛の巣と魔物の排除していった。
バロースパイダーも何体か確認され、すべて排除。ブロースパイダーも粗方排除された。冒険者の手掛かりは無かった。
アーミーアントの巣は私の担当した方向にあった。
巣か、入れるぐらいの大きさの穴だし入ってみるか。
巣に入るとアーミーアントが続々出て来る。私は別に苦手という程では無いがこれだけいると嫌いになりそうだ。
排除しては収納を繰り返し、最後の女王の間だと思う所に辿り着いた。
『助けてください』
ん?念話か?こいつ念話ができるのか。
『お前、念話ができるのか。助けてくださいって命乞いか?』
『はい、助けてください。人間も保護しております。私達はブロースパイダーを餌としているだけで、人間は食べません。保護している者にもそれを分かってもらえず監禁していますが食べるつもりはありません。』
え?そんな魔物もいるんだ。これって人間の味方って感じじゃないの?
誰も知らないと思うけどな。
『わかった、助けてやるよ。じゃあ、従者にしてやろう。私の仲間になるか?』
『はい。』
私の額が光った。
こうやって『念話』が使えれば一緒に別の奴を巻き込むことも無いんだろうけどな。わたしの『念話』は従者にしかできないからな。今後の課題だな。
こいつを仲間にしたのは考えがあったんだ。今回は本当に考えがあったんだぞ。
名前だ。それは忘れてた。最近順番で付けてたから私の中から抜けてたよ。
アリで女王か、クィンはもういるしアリだからアーリーだ。もうこれでいいだろ?
「お前の名前はアーリーだ。」
アーリーは淡く光って覚醒した。
名前: アーリー♀343歳 虫系 (アーミークィーン)LV33
HP 877 MP:5344 攻撃力767 防御力753 素早さ644
スキル:【変身】【痛覚無効】【再生】【周辺探知】
ユニークスキル: 【統率】
称号: アーミークィーン
「これで私の従者になったわけだが、お前にはこの森に残って仕事を任せたい。」
「どんな事でございますか?」
話せるようにもなってるな。人型に変身もできそうだな。
「さっきアンプラリアは全部排除した。そこに木を植えたいんだ。その木の管理を任せたい。米が生るはずなんだが、その世話だな。餌の魔物を周囲に撒いたり米が出来たら収穫して保管したり。」
「それぐらいお安い御用でございます。」
「ブロースパイダーなど、排除した魔物は置いて行ってやるよ。」
「ありがとうございます。」
巣から出ると、もう全員待っていた。
「ここの女王は仲間にしたからもういいぞ。さっきのとこに戻って木を植えるぞ。」
「仲間ですか?」
「ああ、ここに米の木を植えて管理してもらうんだ。」
「それはいいですね。」
ココアもご飯が好きだから賛成してくれた。
アンプラリアがいた所まで来て、米の木の魔物の種を創った。さっき土魔法で耕してるからちょうど良かった。
元になる素材としてテストもしたかったので、ドライアドとニンフでまず作った。
世界樹の枝は辞めて、葉と実で1つずつ作った。
4粒の種を植えて魔力を込め木を育てた。
ドライアドとニンフで作った木は食堂地下ダンジョンの木と同じぐらいの10メートル程度で高さの成長が止まった。
世界樹の葉で作った種は20メートルまで伸びた。世界樹の実で作った種は50メートルまで伸びた。
やっぱり素材で違うもんなんだな。勉強になったよ。
葉の時に1回、実の時に2回MP回復薬を飲んだよ。世界樹系はなんでも凄いね。




