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第126話 短剣の秘密

勇者トオルは捕えられ短剣はアメーリアが急いで取りに行った。

私の所まで大事そうに持って来てくれた。アメーリアが持っても光らないんだな。


「タロウ様、どうぞ。」笑顔で渡してくれる。

「皆なんでそんなに短剣に拘るんだ?」短剣を受け取りながらアメーリアに尋ねる。

「アメーリア、タロウ殿にまだ話してなかったのか。」

「お兄様・・・。」

ローゼッテン公爵の問いにアメーリアが俯く。


「じゃあ、私から説明するぞ?」

「い、いえ、それは・・・。」

「アメーリア、もう観念しなさい。其方(そなた)の気持ちもわかるがタロウ殿にも説明はしないとな。儂から説明しよう。」

「王様・・・。」


「タロウ殿、短剣の秘密をどこまで知っておる。」

「アメーリアの婚約者の意味があるとはギルマスから聞いたな。」

「それも間違いではないが、ほんの一部の話しでついでに付け加えたものだ。真実を告げてもよいかな?」

「ちょっと待ってくれ。さっきから聞いてると大陸の平和だとか話しが大きいんだが、そんな話ならいらないぞ?短剣を返してもいいか?」


「返されるのか、それも致し方ないのかの。しかし、話しを聞いてからでもよいのではないか?」

「話しを聞いた後でも返していいって言うなら聞こうじゃないか。」

「ふぉっほっほ、そういう考えだから選ばれたのかもしれぬの。儂らには有り得ぬ考えだ。これではアメーリアも言えぬはずだ。」


王はバームス伯爵達貴族に退席を命じたので、ココア達にも席を外してもらった。

王族だけとなった所で話し始めた。

ここに居るのは、王、ローゼッテン公爵、アメーリアと第2継承者のアムール公爵と私の5人だ。



話しというのはこうだった。

1300年前、現在のロンレーンの町の東にある祠より1人の勇者が現れ世界を平和に導いたという話しだった。


当時のこの大陸は4体の王によって恐怖支配されていた。


北の魔王、南の魔王、東の海王、西の冥王。

当時は中央のブレアム国だけが勇者召喚を行なっており、なんとか人間の生活圏だけを守れていたが、幾つも町や村が滅ぼされ国も幾つも滅ぼされ、もう人間達の抵抗も最後と思われた時に1人の勇者が2人の従者を連れ現れた。


現れた勇者は強かった。従者も強かった。

召喚されていた勇者も従者に加え、まずは北の魔王を滅ぼし、次に東の海王を倒した。そして南の魔王を倒して最後に西の冥王を封印した。

そして、この地に国を再興しブレアム国から現在のバンブレアム帝国となった。

王族は初代帝王となった勇者の子孫なのである。


一時期はその勇者は東の国から来たとも西の祠から来たとも中央で召喚されたとも言われていたが、学者が文献や祠やその当時建てられた石碑を読み解き、現在ではどちらの説も正しいとされて、西の祠から現れた東の勇者となっている。


その勇者が残した短剣が今回の短剣であり、短剣に光を宿らせられる者こそ真の勇者の後継者である。という伝承があるそうだ。


『この世が災いに覆われる時、短剣に光を灯す勇者が現れこの地に光を(もたら)せる。』


これが王家に伝わる伝承だそうだ。


そして勇者は当時の聖・大ビクトリアと結婚しこの地でバンブレアム帝国初代帝王を名乗り3人の子を作り、帝王を次代に譲った後は姿を消したと伝わっている。

祠の近くの石碑に祭られたというのが学者達の最有力の見解だった。



バンブレアム帝国にも今まで短剣に光を灯らせた王はいた。

その王は帝王を名乗るが帝王はすべて短命だった。授かった力が大きすぎて身体が耐えられなかったのだ。

歴代の王は現国王の様に短剣に光を灯せない者の方が大多数を占めており、その者たちは『帝王』を名乗ることは許されず『王』を名乗ることになる。

だから王位継承権は長子からではなく、短剣を光らせる事が出来る者が『帝王』となるが、対象者がいない場合は長子からの順になる。


帝国を国名としていることでもわかるように、この大陸のすべての国はバンブレアム帝国が治めていた。

しかし帝王が在位しないことが多く、しても短命であったことから段々各地への支配力も低下して行き、現在の様な状況になっている。勿論人口も増え新しく国が建国されている例もある。


ただ王家の伝承は他の貴族にも伝わっており、現在の各地の国でも同じ様に伝承されている。しかし正確に伝わっている国はなく短剣を光らせる事が出来る者はバンブレアム帝国の中枢の権力者であるという程度のようだ。


勇者召喚も、魔王を倒す勇者ではなく短剣の適合者探しの勇者召喚であるため、召喚された勇者はあまり魔物退治をしない風習が生まれてしまった。

その事に業を煮やした南のエンダーク王国が勇者召喚を初め、北でも勇者召喚が行われるようになった。


これは王家だけの秘密でどの国にも正確には知らされていない史実である。

その一部が所々漏れ伝わり各地での言い伝えとして残っている。


短剣を婚約者に贈るという事については歴代の王家で男子の跡取りがいなかった時に王女が短剣を贈って王を迎えた時からの風習だそうだ。



重い、重すぎる。私には重すぎるな。ただのサラリーマンには荷が重すぎる。

短剣は返そう。このままでは帝王にされそうだ。


王、ローゼッテン公爵、アメーリア、アムール公爵が私に注目する。

言い辛い。でも言わなければ帝王にされてしまいそうだ。

それだけは絶対に避けなければ。


「凄い歴史だな。真の勇者に帝王か。」

「そうだな、儂も一時期憧れた事もあったし自分が帝王に成れぬもどかしさもあったが、今では十分に満足しておる。」

「私も元々は王位継承権12位でした。王位は諦めておりましたしバンブレアム帝国の悲願である帝王誕生の為であれば・・・」

「ちょーっと待ってほしい。」

さあ、ここで勢いに任せて言ってやろう!


「私は帝王なんて全くなる気は無い。短剣も返すぞ。」

ピカーン!短剣を出すと今までより更に大きく光った。


おおおっとどよめく3人。アメーリアは驚かず淋しそうな顔をしていた。

「返すとはどういうことでしょうか。」

「帝王に成らないとはどういうことでしょうか。」

2人の王子が言い寄って来る。


「言葉通りだ。私は国や城には興味が無い。だから辞退させてもらう。」

短剣を机の上に置いた。

それを見たアメーリアが泣き崩れる。


短剣よりもアメーリアを見ていた王が尋ねてきた。

「タロウ殿、儂からの願いを1つ聞き届けてくれぬか。」

「なんだ?帝王以外なら聞くかもしれないが。」

「その短剣だけは持っていてくれぬか、帝王には成らずとも構わぬ。」

「なんでそんなに拘るんだ?」

「この子が不憫でならぬ、この子は其方(そなた)に惚れておるようだ。儂らが持っていても光らぬのであれば意味が無い、其方は短剣に選ばれた勇者だ。この子の為にも持っていてはくれぬか。」


王様はまだ騙されたままなのか?アメーリアも早く本当の事を言ってやればいいのにな。

アメーリアも別に泣くほどの事でもないだろう、短剣を返しても遊びには連れてってやるぞ。そんなに遊びに出たかったのか?今は隠れて暮らしてるからなぁ。


「王子達もそれでよいか?」

「はい、私は構いません。」

「私もそれで結構です。父上のお考え通りに。」

「タロウ殿、どうであろうか。」

「そこまで言うなら持ってるよ。念の為に言っておくが城の事には関わらないからな。」

「それで結構だ。」


「それから聞いておきたいんだが、やり方は秘密だがアメーリアには今、総本山に分身体がいるんだ。」

「それはアメーリアから聞いて知っておる。」

「それでアメーリアを遊びに連れて行く場合は、どの程度ならバレないんだ?」

泣くほど遊びに行きたかったんだから聞いておいてやらないとな。


「総本山に行かぬ限り大丈夫であろう。他国の城でも大丈夫だ。」

じゃあ、どこでも行けるじゃん。


「そうなのか、じゃあ近いうちに遊びに連れて行ってやらないとな。それでいいか? アメーリア。だからもう泣くんじゃないぞ?」

「はい。」

涙はまだ拭けて無かったが笑顔でアメーリアが答える。


やっぱり相当遊びに行きたかったんだな、いいことしたなぁ私も。自画自賛だわ。


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