第124話 マナーの練習
昨日、エンダーク王国のギルマスと約束をしてあるので、ショーンとヒマワリとヒナタに行ってもらった。
イチジロウも同行させ先に食堂地下のダンジョンを元に戻すように念を押しておく。
イチジロウには冒険者ギルドの仕事は無理だから、それが終われば帰って来いと言っておく。
私は3勇者とココアとリクを連れてマーメライに一旦寄ってからバンブレアム帝国にやって来た。
トウベイ・スズーキに宮廷作法を教わるためだが、親娘をマーメライの屋敷に連れて行くためでもあった。
人選としては、ココアはどこでも付いて来たがるだろうし1人は馬車が引ける者が欲しかったのでリクを選んだ。勇者たちは鎧が着れるので護衛として連れて行ったら格好が付くんじゃないかと思ったからだ。
実際、私の作った鎧は格好いいと思うよ?職人の私が自分で言うのもなんだけど。
特に白のフル装備がイチ押しです。
いつから職人になったんだって?今からだよ。
トウベイ・スズーキ親娘を馬車に乗せ町の外に出た。
転移の説明だけして、マーメライの町の外に転移した。
これから屋敷の留守を預かってもらうので、屋敷にも転送ポイントを作りたいし転移は話した上で秘密にしてもらった方がいいと判断した。
短刀は流石に秘密にしたかったので、転送魔法陣で転移した。
その為に一度マーメライに寄って、魔法陣を作っておいたのだ。
私もまだ行ったことが無い屋敷だが、場所は知っていたので屋敷には迷わず到着した。
ロンレーンの屋敷の倍ぐらい大きな屋敷だった。それでもアメーリアの宮殿には全く及ばないな、大きさを競っている訳では無いんだけどね。私は1部屋とキッチンと風呂トイレがあれば満足なんです。
到着すると屋敷の庭に転送ポイントを作っておいた。
親娘と屋敷に入りココアには馬車を片付ける振りをしてもらい馬車はリクが収納して人型になると私達と合流した。
今から6人で宮廷作法を教えてもらう。
屋敷の中の調度品は揃えてくれていたので、これで十分練習はできる環境にあると説明してくれた。
初めに挨拶を教えてくれた。
挨拶にも色々あるようで、一通り実演してくれた後に私達は反復練習をさせられた。
元々私はロープレが苦手だった。なんかママゴトをやってる気分にさせられて調子が出だすのはいつも後半になって慣れて諦めてからだった。
今回もダメ出しを何回も食らい、最低ラインのオーケーを貰ったのは5番目だった。
ココアには負けるだろうなとは思ってたが、ココアも苦労をしてたようだ。
意外だったのが3勇者だ。彼らは召喚されてから城住まいだったから慣れたもんだった。
リクがいてくれて良かったよ、ビリにならずに済んだ。
食事の方は大丈夫だった。周りに気を使う日本人で良かったと思ったよ。
給仕が来るタイミングや食べる順番さえ教われば後は簡単だった。
給仕役は娘のルリコが買って出てくれた。娘の名前はルリコだった。
どこまでも古いぞ、もう誰も知らねーって。歳は15歳だと言っていた。
一番苦労したのは以外にもココアだった。
私達の食事は私が行儀に口煩いものだからリクもある程度出来ていたから食事に関してはまだ早くマスターした方だ。
ココアはいつも箸で食べているものだからナイフとフォークが少々苦手だった。
私も箸で食べているが元の世界の経験があるからね。
箸と言っても私が作った物なので式具の様な効果は無い箸だ。
1日目のマナー教室が終わり、私とココアとリクはグッタリだった。
魔物と戦っている方が楽だった。
腹の立つことに勇者は3人共すぐに合格していて平気な顔をしている。
1日目の終わりにトウベイには今後の為にと報酬として金貨100枚を渡した。
これは屋敷の維持費も入っていると言い含め、無くなったら言ってくるように言っておく。
この屋敷に住んでもらうだけで、私としては助かっていたから。
城への言い訳にもなるし転送ポイントも作れるしね。
その日はアジトの屋敷に戻りぐっすりと寝た。
次の日もマーメライの屋敷に来て昨日のおさらいと続きだった。
私の場合は騎士としてのマナーと爵位の立場としてのマナーと庶民としてのマナーを学ばなければならなかったから覚えることが多かった。
主に挨拶だった。大勢の前での形式ばった堅苦しい挨拶は苦手です。
挨拶以上に苦労したのがダンスだった。
初めはルリコが相手をしてくれて途中からはハルも相手をしてくれた。
やはり勇者達にはできるようだった。
なんとか最後には全員トウベイからの合格をもらい2日目が終了した。
一夜漬けだが、正解を一度経験しておけば後は慣れだろ。
帰る前にこのマーメライの冒険者ギルドに寄り、ギルマスのメリアーナに勇者3人をSカード登録してもらった。これで少し前に登録したジャックも入れてSカードは23人になった。
イチジロウはSカードにはしてないのでウルフォックスメンバーは24人だ。
従者は全員で43人になっているから半分ちょっとなんだが23人のSカードは多すぎるな。
今後は別枠で何か考えよう。今回各地に行かせた奴らの結果で何か見えてくるかもね。
マーメライメント王国国王からの招待状も来ていたようでメリアーナからは文句を言われたが当日は付き合ってくれると言ってくれた。怒ってた割りには嬉しそうに見えたな。
私のライバルになりそうな期待のルーキーも現れたとも言ってたよ。
ここの担当はミコとゴロウだったか、まだ2日目のはずだが何をやったんだ?あいつらの事で間違いないだろうしな。
全員、毎日夕食には帰って来てるようだし聞いてみようか。1週間後に全員集めて経過を聞いてみようと思ってたけど、これは早めに聞いた方がいいかもな。
夕食時、ルーキー達も全員いることだし経過状況を聞いてみることにした。
「お前達、冒険者ギルドの方は順調か?」
「ボクはもう終わったよ。」「私もー。」「楽勝ー」「簡単だったよー。」「私・・・・・
え? まだ2日目ですよ。全員達成? でも私も初日でCランクになったか。次の日にAランクパーティでも受けられない依頼を受けさせられたっけ。
「「「「「「ダンジョン!!!」」」」」」
あ、そうだった、約束したよな。ミッション完了したら作ってやるって。
場所をまだ決めてないんだよな。どこがいいだろうな。浮遊城の横にまだ洞窟はあるんだが同じ場所っていうのも面白くないしな。
「すまん、実はまだ場所を決めてないんだ。場所さえ決まればすぐにでもイチジロウに頼むよ。その間に先輩達がやってるように別のギルドにもう1つ入ってくればいい。」
「じゃあ、私商人!おおきにーってやるの。」
「ボクは料理かな。」
「ボクは鍛治に決めてるよ。」
「同じくー」
「私は・・・・・・・
なんとか誤魔化せたようだ。早く場所を見つけないとな。
「お前達、何ランクになったんだ?」
「「「「「「Cー」」」」」」
そう言ってカードを見せてくれた。あれ?あれあれ?『+S』が付いてる奴がいるぞ?
「ナナ、お前Sカードになったのか?」
「そうだね、なんかギルマスがそう言ってたね。」
「何をやったんだ?」
「依頼にあった城の建ってるとこの大きな池の魔物をやっつけただけだよ。Fランクの依頼で討伐に行ったらAランクの依頼の魔物もついでに排除してしまっただけだよ。」
シロウがフォローする。
「やっつけただけって、あれはやり過ぎだよ。タロウ様にやりすぎちゃいけないって言われてたのにー。」
「だって【雷】なら楽勝だったしさ、あんなに弱い魔物ばっかりだと思わないじゃない。」
FのついでにAって・・・。なんとなくわかった。湖だからね、そんなとこでナナの【雷】なんか発動させたら魔物も全滅するでしょ。収納の指輪も渡してるから全部収納して冒険者ギルドの倉庫で全部出したんだろうな。私の様に目立たない精神も無いし、目立ってるかどうかも興味ないだろうしね。
倉庫係りとギルマスの驚きようが目に浮かぶようだ。顔も知らないけどね。
「早く精算してよー」とか言ってたんだろうな。
だいたい皆同じだった。BクラスやAクラスの魔物を何体も冒険者ギルドの倉庫が満タンになるぐらい出したようだ。そりゃすぐにCにはなれるよな。ギルマスだってお抱えの冒険者に高ランク依頼を任せたい者が欲しいだろうしね。
Sクラスの魔物の排除依頼が出て依頼達成したら、全員Sカード行きだな。
なるだろな。
「まだ皆Cみたいだから先に言っておくがAランクになったらギルマスの言いなりになるからな。」
なんでなんでの大合唱。
Gランクからだから入会する時に冒険者ギルドの規則の説明受けてるだろ。
みんな興味なかったんだろうな。
「それが冒険者ギルドのルールなんだ。Aランクになったらギルマスからの依頼は絶対に断れない。でもBやAに上がるのは相談ってなってたと思うぞ。」
全員「断ろう!」って言ってた。
それが正解だな。




