第123話 ルーキーたちのミッション
「じゃあ、行き先を言うぞ。」
うん、注目してるな。
「まずダムダライド王国にムロとトータ。エンダーク王国にニコとゴロウ。マーメライメント王国にミコとセブン。サハラン公国にキュータとパーチ。タイスランド公国にヨッコとエイタ。アクアリア国にシロウとナナ。ツンザンブレーン連邦にムツミとイツミとサジで行こう。」
今回はくじ引きじゃなくちゃんと考えたよ。まず馬になれる者は必ず1人いるようにした。
もちろん馬になれる奴には馬車と簡易家を渡した。たくさん作り過ぎているのでまだまだストックがある。
全員が強いのはもうわかっている。誰と誰を組ませてもCランクぐらいにはすぐになるだろう。皆仲もいいしね。それでも一応は考えたよ。
ロンレーンの町もあるダムダライド王国に行くムロはカイン譲りの【結界】を持ってるし、トータは【添付】だ。
この【添付】ってユニークスキルは凄いのかどうかよくわからん代物だ。
何にでも付加効果を【添付】できるらしい。武器でも家でも石ころでも人や魔物にでも魔法やユニークスキルを【添付】出来るらしいが効果は1分間。
それも自分の魔法でも人のユニークスキルでもいいところが便利なんだが使いどころの難しいスキルだな。
例えば【結界】を持ってるムロに触り【添付】をすぐに発動して魔物に向けて【結界】を使える。ムロにそのまま使って貰えばいいって?その通りです。
武器にも自分の魔法を【添付】できるらしいから一時的な魔法剣にできたりするらしいけどね。
エンダーク王国に行くニコとゴロウはどちらも【錬金】を持っている。今回は冒険者ギルドだが皮製品が多く武器が少ない土地柄で武具を作れるスキルは大きいと思う。素材はたくさん持ってるだろうし、顔を売っておくのもいいだろう。
ゴロウの【幻術】はその名の通り相手に幻を見せる。効果は1日ぐらい続けられるそうだが、その場合は1人だけしか掛けられない。全体で【幻術】を使うと人数が多くなるほど効果も短くなるそうだ。
マーメライメント王国に行くミコとセブンは今は活気があるから依頼が少なくて大変かもな。
だた、トウベイ・スズーキ親娘を屋敷に住ませる予定なので、気配りができそうな2人ならうまくやってくれると思う。
サハラン公国はキュータとパーチ。サハラン公国はバンブレアム帝国の北東の隣国で広大な砂漠地帯の国だ。国力も弱く出る魔物は砂に潜ってるかオアシスや砂に擬態してる奴ばかりだというので、ペガサスコンビの【潜行】を持ってる2人にした。
この国は良い生地を産出するらしい。私も行く予定があるので色々と見て回りたい。
砂漠が多いのにどうやって生地を産出しているのかも気になる所である。
【潜行】はズバリ潜る。水はもちろん土でも岩でも砂でも木でもどこでも潜って移動できる。【潜行】してる時は攻撃を受け付けないが自分達からも攻撃できない。だから溶岩の中でも氷の中でも潜行できる。【潜行】出来る時間は息の続く限りだと言うから相当だろう。たぶん2人共1時間は余裕で息を止めてるんじゃないかな。
タイスランド公国はヨッコとエイタ。タイスランド公国はバンブレアム帝国の東、マーメライメント王国とをつなぐ中間にある国で、どっち付かずの弱小国だ。
特産品も無く、バンブレアム帝国とマーメライメント王国を行き交う人達の通行税や工芸品を売って稼いでいる国だ。だから武具やアイテムに付加効果を付ける術には長けている国でもある。
ヨッコの【監視】はクィン譲りだ。冒険者ギルド依頼になら使いどころもあるだろう。
エイタの【雲】は雲を作ったり操ったりできる。雷雲を作ったり雨雲を作ったり、小さな雲を作って乗ったり雲の中に相手を閉じ込めたり。色々工夫してやってるようだ。
最近は、雲から雲に瞬間移動することハマまっているみたいだ。但し、自分の作った雲同士でないと移動はできないと聞いた。転送魔法陣の様なものだな。
アクアリア国にはシロウとナナだ。アクアリア国はこの大陸で唯一女王が治める国だ。
バンブレアム帝国の南南東に位置し、エンダーク王国とも少しは交流がある国で、湖や池が多く城の立っている場所は大きな湖の真ん中にあるそうだ。
その湖は非常に綺麗で透明度が高く、魔物も棲んでない。
城に入るには船で直接入れるようになっているそうだ。普段は長い長い橋も掛かっていて、そこも通れるそうだが、アクアリア国民は船を使うらしい。
ここの担当のシロウとナナはどちらも【隠形】が使えるからいいコンビプレイを出してくれるんじゃないかと思う。
ナナのユニークスキル【雷】は自分が雷に成る。実態が無くなるので武器でも斬れなくなる。ただ、帯電が納まるまで誰も近寄ってくれなくなるのであまり使わないみたいだ。しかしアクアリア国には水系の魔物が多いだろうから【雷】は効果が高いだろう。シロウの【ダンジョン】は戦いでは役に立たないだろうね。
最後にツンザンブレーン連邦だ。ここにはムツミ、イツミ、サジの3人にした。
まだ勇者も残ってるだろうし、最低でも3人は組ませたかった。
イツミの【変化】は環境を変化させることができる。効果範囲は自分を中心に最大で直径50メートル。ダンジョン内が毒部屋だったら正常な空間にしたり、土壌の悪い畑があったら良い土壌にしたりとか、真逆にしたり消したりするのではなく自分の意思でしたいように変化させるのだ。
ムツミの【冥界渡り】はまだ発動できない。発動条件として、1度冥界に行かないと使えないらしい。冥界には転送の魔法陣でも行けないらしいから恐らく短刀でも転移できないんだろう。私の情報収集リストにも冥王は入れてるので、一度行けたらいいとは思ってる。その時にはムツミに連れて行ってもらえればいいな。
サジと合わせて3人で頑張ってもらおう。
今回は行かせてないがアーバンライド共和国という国もある。
ツンザンブレーン連邦の東でマーメライメント王国の北西にある国で、この大陸で唯一王制を布いて無い国だ。本当は誰かを行かせたかったのだが、戦争の噂もあったので今回は辞めておいた。
2~3チームがクリアして来たら纏めて行かせようとも考えている。
ウルフォックスは大きくなりすぎて冒険者ギルドに行くとすぐに正体がバレてしまうので古参のメンバーよりはルーキーで少し活躍し出した者の方がいいだろうと思ったからだ。
さあ、皆頑張れよ。
翌朝、各チームに金貨1枚だけ渡して出発させた。
各国にもダンジョンはあるだろうから「依頼以外でダンジョンに行ってはいけないぞ」と命令しておく。
仮入門の際にお金は必要だから、それぐらいはこっちで用意してやろう。
あとは冒険者ギルドに登録して頑張ってくれ。偶には様子を見に行ってやるよ。
なぜこういうことを考えたかというと、各地に密着した時でないと分からない情報もあるだろうしウルフォックスがどういう風に周りから見られているのかを知りたかったのだ。
いくらSカードは秘密だからと言っても知ってる者もいるだろう。
最低でも各地のギルマスやギルドを支援してる爵位のある者は知ってるはずだからな。
何も無ければいいが、もし敵対する者がいるようなら注意しておかなければいけないからな。何でも情報は大事だよ。
けっして各冒険者ギルドへの御用聞きがイヤなんて思ってないからね。これは偶々の副産物です。
ノアがボソッと「あらぁ、これでだいぶ面倒も減りますわねぇ。」って言ってたけど聞こえないふりをしたよ。




