第12話 祠を目指す
「気になってたんだが、お前たちは薙刀ってどうやって持ち歩くんだ?」
「うちは小さくするよー、式具みたいにー」
そういえば偶に大きくしていたなぁ。太さも長さも自在のようだ。
「私は変身の応用で、尻尾のブレスレットにしておきます。」
「へぇ、そんなこともできるんだ。」
「いえ、すべて物もができるのではなく、主様よりいただいたものや自分の持ち物だけできるのです。」
色々と奥が深いね。
「じゃあ私も普段は収納をして隠しておこうか、町人や農民は誰も刀なんて下げてないしな。」
「別に持っていても構わないと思いますが、主様がそうおっしゃるんでしたらそれでもいいかと思います。」
「こういった町や村に入った時だけね、トラブルの元にならんとも限らないしね。」
「トラブルになったら、うちの出番じゃない―?やっつけるよー」
「そうならないように言ってるんだよ。」
「さあて、3日間することがないな、町の見物でもするか。」
「さんせー!」
「賛成です。」
まだ100両以上あるし、余裕かな。ただ、元の世界の時間の流れがこっちと同じだったら、クビになるかもなぁ。3日は無断欠勤決定だ。
まだ帰れるとも限らないし、どこに飛ばされるかもわからない。物々交換の経験もあるので、金目の物を買っておくことにする。ソラやココアにも櫛を買ってあげた。
私は木箱に入ったものが高かったので、金箔付の扇子や短刀、小さめだが金の固まりをいくつか。もちろん箸も購入した。
木箱入りだ。ココアにも買ってやると「うちもー」と言ってソラもねだる。
「お前は もうあるじゃないか」と言っても「まだいるのー」と言ってごねる。
仕方が無いのでソラにも買ってあげた。どんだけ箸好きなんだ。
ココアにしても箸の入った木箱を抱きしめて目を潤ませていたなぁ。
「これからは今まで以上に主様に尽くします」とか言って。
そんなに箸って重要なのか?よくわからん。
宿には大風呂もあったので、久しぶりの風呂を堪能する。
食事の方も味があり美味しかった。
ここから先はソラもココアもまったくわからないらしい。
この町にしてもソラは初めてだし、ココアも2回目だそうだ。
武器は必要になると考えていいだろう。
3日後、無事に武器を受け取り、山の祠を目指す。
その間も、祠に関する情報収集はしていた。
たいした情報は無かった。オオカミのおじさんが言っていたように、どこにつながっているかはわからない。帰って来た者がいないということだけがわかった。
ただ、祠に入ると必ず消えるというわけでは無いらしい。
そのまま出てくるものの方が多く、今まで消えたものは10人もいないそうだ。
それも確かな情報ではなく、あくまでも噂で。消えた者に関しても、この町や近隣の村の者ではなく旅人や流れで町に来て直ぐの者ばかりなので、本当に消えたかも怪しい話である。
ただ、場所に関してはある程度特定できていた。
「ソラ、ココア、私は自分の世界に帰りたい。だからってお前たちまで巻き込むことはしたくない。ここからなら帰れるだろうし、私の従者だからといって付いてくる必要はないんだぞ。」
「うちは行くよー、だってあの缶詰をまた食べたいモーン。甘い油揚げもー」
「私も連れて行ってください。あの缶詰は確かに魅力的ですが・・・・主様に付いていきたいのです。お願いします。」
食べ物に負けたか~、しかもたかが缶詰に。残念な娘たちだー。
でも嬉しいぞ!
「わかった、じゃあ一緒に行こう!でも、私の世界に帰れるとも限らんからな。それは覚悟しておいてくれよ。」
良い娘たちだー