第119話 尋問
招待状を整理した。
オーフェンがうまく日程調節できるものを選んでくれてるようだった。
日程が重なっている物は断ってくれてるんだろう。
でも、3日後から毎日だぞ?ここには無いけどマーメライメント王国からも招待状は来る予定だし、宮廷作法を覚えないといけないんだろうか?私の場合は冒険者枠だからいいだろう。服も普段着でいいだろうしそれが嫌なら誘わなければいいんだよ。そうだ、馬鹿にするような奴がいれば帰ってくればいいだけだよな。そうすれば招待状も減るだろう。でも敵も作りたくないからなぁ。
順番はこうだ。
バンブレアム帝国の3名
ローゼッテン公爵
バームス伯爵
サンゼルマン子爵
エンダーク王国のグッサン伯爵。
エンダーク国王。
ツンザンブレーン連邦のシルビア―ナ国王。
サハラン国王
アクアリア女王
タイスランド国王
このバンブレアム帝国国王
だいたいバンブレアム帝国に近接している国々だったが、エンダーク王国とツンザンブレーン連邦は遠かった。シルビア―ナ国はツンザンブレーン連邦の中でも今回勇者召喚しているゴーレーン国と双璧をなす国で北の一番東側の国だった。
転送ポイントは全部皆が作ってくれてあったので行くのは簡単なんだが城に入るのが嫌なんだ。
私は元サラリーマンですから。今は冒険者か。それでも城とは縁が無いはずなんだけどな。
これって面白がって出している短剣のせいだよな。
なんなのだろうな。鑑定しても綺麗な短剣としか出ないし。攻撃力はゴミだし付加効果は光としか出てないからな。だから光ってるんだろうけどね。
次の日は昨日捕まえた野盗の1人を確認するためバンブレアム帝国に向かった。
商売人チームじゃなく、商人チームを送り出す時は煩すぎて居なくなって良かったと思ったよ。まずは北を目指すそうだ。
ピアが名付けたそうだが、その名も『ユートピア商団』と決めたようだ。
絶対に『笑団』や『一座』では無いそうだ。
バンブレアム帝国の冒険者ギルドで依頼があったみたいだから、ココアとリクとジョーカーと一緒に来た。
町の門に着くと見覚えのある馬車が待っていた。
御者を見るとアメーリアの執事のライラックだった。
向こうも私に気付いたので近寄って声を掛けた。
「執事さん、どうしたんだ?」
「タロウ様、まずは馬車にお乗りください。」
私が作った馬車だよなぁ。でも執事が御者ってことはアメーリアの馬車のはずなんだが。
3人には冒険者ギルドに行くように言って私は馬車に乗った。
「おはようございますタロウ様、お待ちしておりました。」
「え? なんでアメーリアなんだ? お前は外をうろついてたらダメじゃないか。」
「あっ、驚きました? 今日はいい事がありそうです。」
まだそれやってんのか? そりゃ驚くでしょーよ。
「バンダム騎士団長が今日はタロウ様が来るかもしれないって教えてくれたんです。」
「それも吃驚だ。騎士団長が何故知ってるんだ? お前は総本山に居る事になってるんじゃないのか?」
「騎士団長クラスまでは昨日王が知らせました。それで騎士団長がわざわざ知らせに来てくれたんです。」
執事と幼馴染とも言ってたしな、その辺で何かつながりがあるんだろうな。
「それはいいとして私はその騎士団長に用事があるんだ。」
「だからお迎えにあがりました。」
「アメーリアが連れて行ってくれるのか、それで待っててくれたんだな。それは悪かったな。」
「いいえ、それでは出発しても構いませんか?」
「それ、騎士団長も言ってたけど、もう出発してるぞ。」
「えっ? 本当ですね。この馬車揺れないんですよ。」
「知ってるよ、私が作ったんだから。この件も騎士団長とやったな。」
「えー、ずるいですね。私が話すことが無くなってしまいます。」
「別に無くならないと思うけど。」
騎士団長が取り調べをしている詰め所に到着した。
「ありがとう、あとは宮殿で大人しくしておけよ。」
「はい、わかりました。」
「ここで待ってても驚かないからな。」
「あ、バレてしまいました。」ウフフフ
「頼むよ執事さん。」
「かしこまりました。」
アメーリアが乗る馬車を見送って詰め所に入った。
詰め所に入ると何人かいたが騎士団長の息子のワンダールを見つけて声を掛けた。
「昨日の野盗はどうなった?」
「今親父・・・いえ団長が尋問しています。」
「身元はわかったのか?」
「はい、わかりました。エンダーク王国の元貴族でトウベイって名前でした。」
「まさかタチバナってんじゃないだろうな?」
「いえ、トウベイ・スズーキです。タチバナって知り合いでもいるのですか?」
「いや、気のせいだった。」
「代々コーヒー園が多い領地を治めていた貴族だったようです。」
そっちかい!遠すぎてわかんねーよ。仮○ライダーのおやっさんがコーヒーショップやってたけどね。それすら古すぎてわからねーよ。
「エンダーク王国の元貴族がなんでこんなとこにいるんだよ。遠すぎるだろ。」
「それを今取り調べて居る所なんですが、中々口が堅くて。」
「こっちに誰か知り合いでもいるのか?」
「それが・・・」
「またやりやがった!誰か回復魔法が使える者を!」
騎士団長の親父が飛び出して来た。
「またって昨日の奴か。」
「おお、タロウ様。そうなんです、また自害を謀りやがってもう3度目です。ちょっと目を離したすきに。」
「私が行こう。」
野盗の貴族に回復魔法を掛けてやった。
失われていた顔色もドンドン血色が良くなって行く。
「またやったんだってな、でも残念だったな回復させてもらったよ。いくらでも自害してくれ、まだまだ回復薬はあるから。」
机に50個回復薬を出してやった。男は絶望に叩き落されたように肩をうなだれた。
回復薬は私が1回とこっちでも1回使っているはずだ。効果は使った者が一番わかっているだろう。
「トウベイ・スズーキ、私が聞きたいのは何故エンダーク王国の元貴族がバンブレアム帝国にいるのかと、何故野盗といたのかということだ。それさえわかれば私はお前に用は無いんだ。野盗をやってたと言うがまだやって無かったんだろ?それを私が弁護してやってもいいぞ。」
どっちも同じ理由でやってたような気がするんだ。こいつにバックがいて、その黒幕が何か大きなことをやろうとしている気もする。ただの勘なんだが、これだけ色んな事に関わってきたら違和感があると分かってしまうんだよな。
エンダーク王国の元貴族がバンブレアム帝国の勇者と野盗を組む。これだけでもうおかしい。更にこれだけ口が堅いと重大な何かを隠しているのだろうと思ってしまう。
誰かがバックにいないと理由が付かない。
「ダメだ、やっぱり言えない。」
観念したのかようやく黙秘から言葉を発した。
「何が言えないんだ?」
「言うと・・・・。」
そこで話すのを辞めた。
「なんだ、人質でも取られてるのか?」
トウベイ・スズーキがバッっとこっちを見る。やっぱりそうなのか分かりやすいな。
「その人質を私が助けて来てやろう。そうしたら全部話してくれないか?」
「本当ですか?娘を助けて頂けますか?」
「娘か。わかった、どこにいるかわかるか?」
「わかりません。サ、サ、サンゼ・・やっぱり言えません。」
言ったよな、今。サンゼルマン子爵だろ?ここは惚けるべきか。
「わかった、悪いようにはしないからもう自害はするなよ。娘を助けて来るから。」
詰め所に騎士団長と戻り、聞いてみた。
「爵位を持ってるものでサンゼから始まる人物の名前はわかるか?」
他にもいるといけないからね。
「サンゼルマン子爵だけですな。」
「やっぱりそうか、連れて行ってくれるか?」
「何か閃いたのですな!わかりました、自慢の馬車で送りましょう。」
どこを突っ込めばいい?一緒に取り調べしてたよね。私の馬車だよね。
騎士団長と一緒にサンゼルマン子爵の屋敷の前を馬車で通って貰った。
さすがに直接乗り込むのはマズいだろう。一旦行き過ぎて馬車が見えない位置に来たところで止まってもらった。
助けたら乗り物もいるし騎士団長には待てるように伝えて馬車から降りた。
馬車の死角になった所で透明の指輪を填めた。念の為、偽装+隠蔽の指輪と飛行の指輪も填めた。城に潜入した時と同じだ。
門まで辿り着くと勿論門は閉まっていた。軽く壁を飛び越え屋敷に近づく。
扉の鍵が閉まっていたので、どこか開いて無いか屋敷を1周する。
窓も開いて無かった。中に人の気配はするので誰かいると思うのだが厳重過ぎる。
サーチで確認。1階に5体2階に1体いるようだ。2階の奴が赤い点が一番大きいな。
しかし人間では無さそうだな。
強硬で入ろうか。
裏手のドアをコピーで同じドアを作る。刀でドアを斬って穴を開ける。鍵を開ける。ドアを外して収納。ドアを付け替えて完了。
ドアが少し新しくなってしまったがいいだろ。潜入完了。
やはり中には悪魔が居た。もしかしたらフォルファクスが召喚した生き残りかもしれない。
目の前にいるだけで5体の悪魔達。ショーン達と同じアークデーモンと呼ばれる悪魔だった。
悪魔だから排除でいいだろ。透明の指輪の効果で消えたまま死角になる者から斬っては収納、斬っては収納で、サクサクっと5体排除した。
今度は人間をサーチ。屋敷内に人間はいないようだ。
2階に上がって1体の悪魔を見つける。1階の奴らよりは強そうだ。
逃げられても面倒な事になりそうなので先に手足を斬って指輪を外して姿を見せた。
「おい悪魔、ここの人間はどこに行った。」
ぐわあああ!痛みで叫んでいる。そりゃそうか、でも回復薬は回復し過ぎるから回復魔法だな。回復魔法をかけて痛みを和らげてやる。
「これで痛みも和らいだだろ、さあ答えろここの人間はどこにいった。」
「ぐぐぐ、誰だ貴様。」
斬った所を刺してやる。
「ぐおおぉ、何をする貴様!」
「私の質問の答えじゃない。」
「貴様どこから現れた!下の奴らはどうなった!」
また別の所を刺してやる。
「それも違う。」
「ぐわあぁ、わかった、ここに居た人間どもは厩の地下にある牢に閉じ込めている。」
そこまではサーチを広げて無かったな。
「生きているんだろうな。」
「生きている。」
「お前達の仲間は何体いるんだ?」
「8体だ。」
「2体足りないじゃないか、どこにいるんだ?」
「エンダーク王国にいる。」
「エンダーク王国? エンダーク王国の誰かの屋敷に同じように居るのか。」
「そうだ。」
「誰の屋敷だ?」
「知らない。」
すかさず別の所を刺す。
「ぐおぉ、そういう意味じゃない、名前を知らないがここの人間が親しくしてた奴の所だ。」
「お前もしかしてフォルファクスに召喚された奴か?」
「そうだ。」
「フォルファクスは死んだぞ?もう他に仲間はいないのか?」
「フォルファクス様が死んだのは知っている。だから我らは勇者を操る計画を立てていた。エンダーク王国に居るベリアルに協力をしてもらおうとエンダーク王国に仲間を送ったのだ。フォルファクス様に召喚され残った者は我らだけだから最後の者達だけで計画していたのだ。」
なるほど、つながったね。それでトウベイ・スズーキも利用されてたんだな。
ベリアルはもういないけどね、私の仲間になってるし。
しかしまたエンダーク王国か、色々悪魔に利用される国だね。魔王より悪魔を討伐するべきじゃないのか?
「ありがとう、良い情報だったよ。」
止めを刺してやった。
悪魔はこちらの世界で殺されても精神体は残るから元の世界に戻るだけだってショーン達が言ってたな。ジャックみたいに運が良ければすぐに再召喚されたりするみたいだし、人間界に来て暴れたいだけなんだろ。
上手く利用できればいい戦力や護衛になるんだけどね、大体は逆に利用されてるよね。
サブタイトル名 変えました。




