第110話 防具作り
「服を何とかしないとな。取り敢えず私のを着ておくか。皆、服を持って無いからな。」
「え?なぜ持って無いんですか?」ハルが不思議そうに尋ねる。
「私以外は魔物なんだ。人に変身してるだけなんだ、ベリアルみたいなもんだ。私以外に服を持ってるのは獣人のララとロロだけだ。でも、ユニコとジャックは裁縫も得意だから服は作って貰えるぞ。」
3人共、え?魔物?ってどういうことって言い合ってる。
「どっから見ても人間にしか見えないよ。それに変身だから美男美女揃いだぞ。」
「それってズルくないですか?」
「ズルいよな、私もいつもそう思ってる。」はははは
ケンを私の部屋に連れて行き、私の服に着替えさせる。
やっぱり大きかったようだ。ケンはイチジロウぐらいだもんな。
「今晩はこれで辛抱してろ。明日はユニコには残ってもらって作って貰うようにするから。明日は防具を用意しておくし今晩だけだから。」
戻って来たら、ちょうど皆が帰って来た。念話でサジもこっちに来るように指示した。
サジ、モイチ、ハル、ケンを皆に紹介した。
「ケンの事は覚えてないか?」
ソラもココアもノアもミルキーも覚えて無かった。
弱い奴の事は覚える気も無いようだ。いいんだけどね。
「モイチとハルとケンは勇者なんだ。今では元勇者という事になるが、お前達よりも強くなるかもしれないぞ?でも強くしてやってほしい。仲良くもしろよ。」
皆あたたかく迎え入れてくれた。
「サジは悪魔なんだ。なんか大悪魔らしいぞ?」
ギラリ! ショーン、アゲハ、イロハ、ジャックの目が光る。
「え、いや、その、ちが。」
サジの顔が青くなって行く。
間違いなく、現時点で悪魔最弱はお前だよ。
悪魔と魔物と勇者のパーティってありか? 無しの様な気もするが、私の仲間という括りならアリだろ。
これで私を含めて33人+浮遊城のイチコとサブロウになった。もう誰の得意が何でとか覚えてない。覚えられないわ。名前もヤバそうだ。でも学校でも私の世代は1クラス40名を超えてたし大丈夫だろ。
今日のレベル上げは順調だったようで、赤ちゃん達のレベルは7人共45以上になってた。
普通に大人に成長しているし。今回も美男美女揃いだし。
そりゃそうでしょ。モンスターハウスだらけにS級のマスターが3体。上がらない方がおかしいって。しかも3回行ったって? もうダンジョン馬鹿でダンバカだね。次の子に名付けてやろうか?
明日は熟練度上げが中心らしいから配合は明後日だな。
元勇者の3人には防具は明日の朝までに仕上げるからと言って、作っておいた鎖帷子と額当てと胸当てと脛当てと小手をサイズ確認のために着て貰った。ララとロロ用の予備だ。
渡す時に身体に合わせ小さめに調整したララモデルを着たハルは、胸部分をもう少し小さくしてほしいと恥ずかしそうに言って来た。
やる気あるじゃん。普通は言えないらしいよ女の子には。
動きにくかったら実力を出せないからね。それだけの本気、受け取りましたよハルさん。
靴のサイズも聞いたし、これで3人の防具の寸法がわかったから、明日の朝に微調整すれば大丈夫だな。
その夜は防具作りに没頭した。
3人分のメタル系の武器防具を作った。ただ、私のイメージしている勇者の武器・防具は鉄色では無い。イメージとしては白系だな。黒や青や赤もあると思うんだけど、白系にしてみたい。勇者って特別枠で作ってあげたいじゃん。でもメタル色は鉄色にちかいからね。
色って変えれないのかなぁ。鍛冶屋の親父は知らないか?鍛冶屋の師匠なら知ってるかもな、刀を貰いに行った時にでも聞いてみよう。
ララとロロに着せてる、メタルの額当て、盾、胸当て、小手、脛当て、靴、異世界金属の鎖帷子。これで防御力が5000近くあるし格好もいいんだけど、私の中の勇者のイメージと違うんだよなぁ。3人分作っては見たものの納得がいかなかった。
やっぱり勇者は、兜・鎧・盾・剣っていうのがイメージだ。色も白や青がイメージとして似合う。
あくまでも私のイメージだ。
異世界金属の鎖帷子だけで防御力3000なんだから、後の装備は防御力を無視して格好良さ重視で作るか?
それは私の職人としてのプライドが許さない。いつから職人になったって?今からだよ。
白ねぇ。あと青ねぇ。青は水龍の刀が青かったよな。もしかして龍の牙とかなら色が付くのか?
いつも作ってるけど付いて無い気がするが。明日、ノアの爪でも貰って試すか?
あいつなら起きてるかもしれんな。ドラゴン連中ってあんまり寝ないよな。
まだ12時回ってないし、ドラゴン連中を集めよう。
ノア(神龍)カイン(青龍)デルタ(蛇神)ヒマワリ(雷龍)リク(メタル)ジョーカー(フェニックス)エース(ゴールド)クィン(オーロラ)ジャン(アイランド)ニコ(黒龍)ミコ(灰龍)ゴロー(龍狐)ヨッコ(暗龍)ムロ(暗龍)
ドラゴン系だけ来てもらい竜になって貰って牙と爪を斬らせて貰った。
もちろん痛くも無かったし全回復薬で元に戻ってた。
しかし多いなドラゴン系。リクは違うから13体いたよ。まだ増えるな。
兜の解析はしてるけど作ったことが無いので練習がてら兜を作って試してみた。
予想通り兜には色が付いた。いつも作ってるドラゴン系武具はレベルも低くランクもB以下のドラゴン系だったからだろう。うちの仲間たちの牙や爪なら特徴通りの色が付いた。
今後欲しいのはノアの白と、カインの青と、ジョーカーの赤と、エースの金と、ジャンの緑かな。少しクィンの虹色とニコの黒も欲しいな。
今日貰った分でも勇者の防具100着分は余裕だけどね。
白をベースに青と赤のアクセントの付いた格好良い防具が出来上がった。
兜・鎧・盾・靴。ドラゴンシリーズだ。
鎧はインナーに異世界金属の鎖帷子を着せるから薄目にして軽量化にできた。これなら歩いてもガチャガチャと音もしないだろ。左胸にWOLFOXというロゴまで入れてやった。盾にも大きくロゴが入ってる。
白ベースと青ベースと赤ベースに色違いのラインにしてみたり15パターンを3人分作ってしまった。
鎧だけで防御力800、兜で200盾は400靴は100。素材はレベルの高いうちの連中のだからね。
薄くしてこれだから、通常の厚さにしたらメタルの防御力を超えるかもね。
朝に1着ずつ試着してもらい、サイズが合ってることが確認できると全部渡してやった。
1着目の時は「凄ーい!強くて格好良いー。やっぱりタロウさんの従者になってよかったー」って感動してたのに全部渡したら「無理です。こんなに着れません。」って言ってた。
収納を持ってるんだからいいだろ。
武器も今まで作っていたドラゴン系を渡してやった。3人共、熟練度がまだまだだから剣と槍と弓と杖を持たせてやった。杖はもちろん世界樹の杖だ。この装備には似合わないな杖って。
本当は私も付いて行ってやりたかったが、やらなければならないことがあるので、今日も別行動だ。ユニコとジャックにも残って貰い、3勇者と私の服作りをお願いした。
エンダーク王国で獲ったシープラットも渡しておいた。
今日は飯係りもいらないだろうし大丈夫だろ。
エンダーク王国の昨日の後始末だった。
イソッチもあのまま置いて来てるし、【魅惑】もサジが解いているはずだから大丈夫だとは思うけど、解かれた後って何も覚えてないようだし様子を見て来ないとな。
ここまで関わってるし無視できないよな。勇者の事もあるし。主に勇者の件だけど。
エンダーク王国に行く前に、ロンレーンの薬屋ギルドも気になるので先に寄ってみた。
「おはようございます。突然来たけど良かったかな?」
「いらっしゃいませ。ええ、どうぞどうぞ。こちらも丁度お声掛けしようと思ってたんですのよ。先日の杖のお礼もキチンとしないままでしたから。」
「それは良かった。じゃあ、そっちの話からどうぞ。」
「今回の冒険者ギルドのアラハンさんから回して頂いた物はすべて薬屋ギルドで引き取らせていただきました。ありがとうございました。それで噂を聞きつけた国々から連絡がありまして、もう少し用立てて頂けないかと思いまして。」
「それは凄いですね、アラハンさんから値段を聞きましたが、おいそれとは買えぬ金額でした。」
「金額については安いぐらいです。それほど貴重な物ですから。」
「わかりました。何を何個必要なんですか?」
「こんなに用意できるかどうか。今こちらに問い合わせが来ているだけで、葉が500枚、樹液が1樽、樹皮が200平米。なんです。」
「はははは、凄いですね。」
「そうでしょ、こんなにあるはずが無いのに各地からの問い合わせるとこんなになってしまって。」
「いや、そうでは無くて、今私が持っている数に相当近いので笑ってしまったんです。」
「ええ!あるんですか!言ってる私が言うのも変ですが凄いですわ。」
「はい、どこに出せばいいですか?」
「本当に!?ではこちらにお願いできますか?」
倉庫に案内されて葉は木箱に、樽と樹皮はそのまま出してやった。
「また仕入れに行かないとダメですね、無くなってしまいましたよ。樹皮は少し多めかもしれませんが、先ほど言った200平米の計算で結構ですよ。」
「本当に凄い方なんですね、ソラちゃんのご主人様は。」
「いや、たまたまですよ。」
「たまたまで持てる訳無いんですけど。代金の方は1週間ぐらいかかりますが宜しいですか?」
「大丈夫ですよ。またソラか私が来ますので、今度は樹皮と樹液の調合を教えてください。」
「それぐらい、お安い御用です。道具は見つかましたか?」
「ええ、良い物が見つかりました。薬も非常に良い物が出来たみたいで、この前なんか切れた腕が2本とも生えましたからね。」ハハハ
「ええ?いくら世界樹の葉でもそこまでの効果は無いはずですわ。」
「魔物でしたが実際に斬られた両手が生えましたからね。斬られて落ちた手は地面に残ってましたし。たしかHP全回復の薬でしたよ。ホント良い物を教えていただき感謝しています。」
「え、え、ええ。おかしいですわね。」
「こちらからのお願いと言うのはこれなんです。」
世界樹の実を出した。
「え、え、え、み、み、実ですわよね?世界樹の?」
「ええ、そうです。これは食べたりジュースにしたりするだけで非常に効果が高かった。知らないかもしれませんが、聖女が聖人にクラスアップすることもできました。これで薬を作ればどれほど薬が作れるのかと思いまして。」
「こここれはわかりません。だって、世界樹の実なんて見た事がある人なんていませんもの。見た事も無い物は作れませんわ。」
そうなんだ、見た事ないんだ。イチコはすっごく持ってるんだけどな。
「無理ですか。」
「でも、今は各国から問い合わせが殺到していますから、知ってる人がいないか聞いてみる良い時期かもしれません。あまり期待はできませんが、少し時間をください。」
「わかりました。では5個置いて行きます。また来ますのでお願いします。」
さ、こっちは終わったしエンダーク王国に行くか。でもその前に浮遊城に寄って補充しないとな。
浮遊城でイチコに、前に来た時の倍の量を貰った。もちろん実も。
イチコに調合の事を聞いてみたが、調合に付いては全く分からないらしい。
「イチコこの樽に使ってる木って。」
「はい世界樹の樹皮です。」
だよね、さっき言って無かったわ。




