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第106話 潜入

次はバンブレアム帝国だな。さて、どっちから行くか。ベッキーはなるべくなら避けたいなぁ。でも、今は皆で子育て真っ最中だから私が行くしかないのか。もう直接エンダーク王国に行ってみるか?先にサンゼルマン子爵の情報だけでも手に入れておきたいよな。

でも、バンブレアム帝国に行きたくないんだよなぁ。


よし、エンダーク王国に行こう!皆が手分けして作ってくれた時に転送ポイントはできてるし。

決めた。でも何も伝手が無いのも困るし、バンブレアム帝国の冒険者ギルドに来てた招待状でエンダーク王国の物が無いかだけ確認しておこうかなぁ。いや、バンブレアム帝国は今は嫌だ。



町を出てエンダークの転送ポイントまで転移した。

ここも海は近いんだなぁ。門では鍛治ギルドのカードで入門した。

門を入るときに鍛治ギルドの場所だけ聞いた。詰め所にある換金所で金貨500枚をここの通貨にしてもらっておく。


先に宿を取り、1週間分前払いしておく。泊まるのはアジトの屋敷に帰るんだけどね。

転送ポイントを宿に登録しておけば転移も見られないし町の中に作れるのが大きい。

部屋に転送ポイントを登録し鍛冶屋ギルドに向かった。

鍛治ギルドに到着し、カードを見せる。鍛冶屋の場所も聞いて中の展示物を見て行く。

皮系の防具が非常に多かった。受付で聞いてみると、この辺りは鉄の産出は無くずっと鉄不足に悩まされている土地柄だという。魔物も牙や爪が武器素材になる物も少ないらしい。その代りに皮の素材になる魔物が多く、防具によく使われているらしい。


勇者に関することも聞いてみた。

ベッキーの情報を上回る情報は聞き出せなかった。ただ、魔導士派が勇者召喚を強く推しているということは噂になっているらしい。

魔王についても聞いてみたが、あまり知らないようだ。

冒険者ギルドに行くしかないかな。鍛冶屋を覗いてからだな。


鍛冶屋では珍しくドワーフでは無く人間がやっていた。海が近いせいだろう。


「いらっしゃい。防具をお探しですか?」

「いや、武器なんだがここにはあまり置いて無いな。」

「この町は鉄が無いですからね。鍛冶屋も少ないんですよ。」

「あ、このフワフワの毛皮のフードいいな。何の魔物の皮なんだ?」

「それはシープラットと言いまして、この町の北側に良く出る魔物です。ネズミの様な大きな魔物で、よく群れでいるようです。」

これは獲っておきたいな。目ぼしい武器も無さそうだし、まずはシープラットでも獲りに行くか。ぬいぐるみ用にいいよな。


「勇者ってこの町に居るんじゃないの?」

「今はいないね。勇者様は亡くなったって噂だよ。」

ベッキーたちの事だろうか?生きてるけどね。


シープラットを獲るため町の外に出て北を目指す。1人だから手分けもできないし、1つ1つ片付けて行こう。


サーチで確認。

群れって言ってたな、こっちに群れがあるな。行ってみよう。

いたいた。100体ぐらいの群れだった。

サクサクっとやっつけて収納。思ってたより、大きいくせに素早い奴だった。

目的も果たしたのでさっさと町に戻って来た。このフワフワ手触りの皮、いいよな。ぬいぐるみもいいけど上着をユニコに作って貰おう。


さぁて2択だな。冒険者ギルドか城。

一度忍者みたいなこともやりたかったし、城に忍び込んで情報が無いか探ってみよう。目的は勇者関係がわかればいいな。後はサンゼルマン子爵の情報があれば有り難いな。


偽装+隠蔽の指輪をもう一つと、透明の指輪と飛行の指輪を付けておこう。

【那由多】に人間も魔物も悪魔も全部サーチに掛かるようにして周囲を見張らせる。

完璧でござる。誰にも見つかるわけが無いでござる。城門は閉まっているから城壁を飛び越えた。気分はもう忍者でござる。


弱い結界があったが、問題無く城内に入れた。

飛んだ状態でそのままの高さの所の窓が開いていたのでそこから潜入。3階だった。

城に潜入するとさらに上へと進んだ。

城の構造はマーメライで謁見の間に行ったことはあるし、バンブレアム帝国風の城も作ったから、上の方だと思うんだけどな。


中央の最上階に王の間があった。ここまで誰にも会って無い。

文官たちもいるようだ。大臣なんかじゃないのかな。

技能の遮断も使ってるし、指輪の効果もあるから部屋の真ん中で確認する。

誰もこちらに気付いてない。


「王様!どうやら曲者が忍び込んだようです。」

魔導士の服を着た男が走り込んできた。


「曲者とな。どのような奴じゃ?」

「まだわかりません。」

「いつ頃の話じゃ?」

「つい先ほどです。」

「なぜわかったのじゃ?」

「門の上に張ってある感知系の結界に引っかかりました。」


結界って感知系だったのか、失敗だったな。


「鳥では無いのか?前にも間違ったことがあったではないか。」

「今回は間違いございません。しかもタイミングが良すぎます。イズミン侯爵の手の者ではないでしょうか。」

「イズミン侯爵は勇者召喚反対派であったな。」

「はい。」

「では、魔導士イソッチに命ずる。魔法陣を守るのだ。」

ブッ!あ、やべ。少し吹き出しちまった。イズミンであれっ?て思ったが、イソッチって完全に日本人のあだ名だよな。意表を突かれたよ。

念の為少し移動しておこう。上でいいか。


飛行の指輪の効果で高い天井付近まで上がった。

下を見る限り気付かれなかったようだけど気を付けないとな。ここには結界は無さそうだけど。


「ふはははー、王様!曲者がおりましたぞ。皆!出会え!」

気付かれてたか。でも移動したから大丈夫なんじゃ。念のため盾を出しておこう。

兵士がゾロゾロ入って来た。ただ、文官たちに逃げる様子が無い。


「そこだー!」魔導士は叫んで火系の魔法を飛ばした。

私はいつでも動けるように身構えた。耐性はあるといっても、服までは耐性がない。

兵士と戦闘になって殺すことになっても嫌だし、その時は短刀の転移で逃げよう。


しかし、火魔法は私の所でも私がさっきまで居た場所でも無い、全く関係ない所に向かって飛んで行った。誰も居ない方向へ飛んで行った火魔法が壁に当たって弾けた。

「逃げられたようです。兵よ、すぐに探し出せ!」

兵士は入って来た入り口から全員出て行った。が、慌てて出て行く感じでは無く来た時同様訓練の様に淡々と慌てず急がず出て行く。


何がしたいんだ?


「王様、やはり曲者はいたようです。すぐに探し出して捕えてみせます。」

「魔導士イソッチよ、頼んだぞ。」

「はっ」

魔導士イソッチは出て行った。後を追いかけようとしたが王様が話し始めたので少し待ってみた。魔導士イソッチをサーチでロックしておく。


「大臣よ、侵入者は捕えられるかのぉ。」

「無理でしょう。」

「城の警備を増やさねばならぬのう。」

「それは必要無いかと。」

「うむ。」


・・・魔導士の一人芝居?しかもここの連中は関係なさげというか無関心と言うか、どういうことだ?

しかも慌てた様子が無い。文官達も何事も無かったように業務を熟している。どうもおかしい。


さっきの魔導士をサーチで確認し追いかけた。


魔導士を追いかけるとすぐに見つかった。そのまま尾行する。

魔導士イソッチはどんどん降りて行き、1階よりまだ更に降りて行く。

地下2階までは部屋があったが、地下3階に降りると地下通路になっていた。


更に地下通路を進んでいく。初めは石で作られていた壁も土に変わり明かりも無くなる。

魔導士イソッチはたいまつに火をつけ更に進む。

最後に到着したのは研究室だった。

天井は高いが学校の教室程度の部屋で中央には大きな魔法陣が描いてある。


【那由多】に鑑定させると召喚魔法の魔法陣だった。

研究室の奥にも扉があり、イソッチは奥の扉に入って行く。

その部屋は居室空間になっており、1人なら寝られるようにベッドまであった。

イソッチはそのままベッドに入って眠ってしまった。


え?魔法陣を守るとか侵入者を探すとかしないのか?眠ってしまったぞ?

【鑑定】してみようか。



【鑑定】

名前: タケーシ・イソッチ

年齢: 37

種族: 人族

加護: なし

状態: 睡眠・混乱(魅了)

性別: 男

レベル:42

HP 205/205 MP:345/345

攻撃力:174 防御力:140 素早さ:124

魔法: 火(6)・水(4)・闇Max・召喚(2)・精神(5)

技能: 杖(5)・錬成(3)

耐性: 熱・

スキル:

ユニークスキル:なし

称号: なし

従者: なし


混乱してるぞ。どういうことだ?王とのやり取りや兵や文官もいつも通りって感じで慌てた様子も無かったし、さっきの所まで戻ってみよう。


戻ってみるとさっきと変わらぬ風景で、皆淡々と業務をこなしているように見える。


王も大臣も文官も全員【鑑定】してやった。

全員、状態:混乱(魅了)だった。なんだここは、全員混乱してるじゃないか。どうなってるんだ?いつからなんだ?


他の部屋も調べてみたが、全員業務を熟しているように見えるが全員混乱していた。

城中混乱しているのだ。しかも(魅了)。誰かに操られている?

でも、操られて誰かを攻撃するわけでもなく、淡々と業務を熟している。


誰が操っているのか調べたいな。世界樹の葉で作った薬なら状態異常を回復できるから誰かを正常に戻せば情報を聞き出せないか?

1人で別の所にいて邪魔が入らず話が聞ける。しかも情報に詳しそうな奴。

さっきのイソッチじゃん。


イソッチの所にもう一度行き、寝ているイソッチを確認した。

起きて無くてもいいだろ。口の中に状態全快薬を入れてやった。


ゴボッ。ゴホッゴホッゲーゴホ。

イソッチは咽て起きた。【鑑定】したら状態異常は治ってる。優秀な薬だな。


「むぅ、ここは?研究室か?」

私はまだ指輪を外していない。イソッチが動くまで待った。


イソッチは起きると魔法陣のある部屋に行き魔法陣を確認している。

私は入り口のドアの横に立ち、その様子を見ていた。


「なぜ私だけがここにいる?他の者はどこに行ったのだ?」

説明が必要だな。指輪を外して声を掛ける。


「魔導士イソッチ、聞きたい事がある。」

急に声が掛かりイソッチは吃驚してこちらに振り向く。

「貴様は誰だ!」

「私はタロウと言う冒険者だ。イソッチ、お前に聞きたい事がある。」

イソッチは火魔法を出そうとした。さっき見た魔法だな。

魔法が出る前に素早くイソッチに近づき軽く軽くボディーブロー。

イソッチは咽て呼吸困難に陥り魔法どころでは無くなった。


「いきなり攻撃か、急に知らん奴が自分の部屋にいれば仕方が無いのかもしれないが助けてやったんだ、話ぐらい聞いたらどうだ?」

「助けた?」

「そうだ、お前は誰かに操られてたんだ。それを私が治してやったんだぞ、なぜ攻撃されなければいけない。」

「操られて・・・。」

思い当たることがあるのだろう、イソッチは黙って考え込んだ。


「思い当たることがあります。申し訳ありませんでした。」

「もう聞いても大丈夫か?」

イソッチは頷く。


「色々聞きたいんだが、順を追って聞いて行こうか。まず、なぜ魅了されていたかわかるか?お前もそうだが城中の全員が王も含め魅了されているのはなぜかわかるか?」

「思い当たることはあります。恐らく私達が召喚した悪魔ベリアルがやったことではないかと思います。」

「ベリアル?」

「そうです、ベリアルです。勇者召喚で召喚した勇者を操るために召喚したんですが、私達も操られていたようです。召喚者を操るとは思えなかったのですが間違っていたようです。」

利用しようと思って召喚した悪魔に自分達が操られてた?この世界の奴は間抜けが多いのか?悪魔を甘く見過ぎだろ。


「今まで操られてたんならベリアルがどこにいるのかも知らないだろうな。」

「申し訳ありません。」

「いつ頃の話だ?どこまで覚えている?」

「勇者がいなくなって・・。あ、助けて貰った恩もあるので話しますが内密でお願いできますか?」

ここまで話して気付いたようだ。勇者を操るって言ってしまってるもんね。

気付いてない感じで私は頷く。


「この国の勇者は4人召喚されましたが3人逃亡したのです。それから2年半は勇者探しをしていたことは覚えています。」

「じゃあ、多分半年前まで覚えてるな。勇者が逃げたのは3年前だ。」

「なぜ貴方が勇者が逃げたことを知っているのですか?しかも時期まで。」

「これでも優秀な冒険者なんでね。それで逃げた勇者はどうなったんだ?」

「1人は捕えました。1人は恐らく死んだでしょう、追い詰めた崖から落ちましたから。あの高さでは助からないと思います。後1人は行方知れずです。」

この世界では死んだと思ってても生きてる勇者って結構いるからな。っていうかほぼ生きてる気がするな。案外生きてて復讐に燃えてるかもな。


「勇者の名前は?」

「ケンジ、ハルナ、浦辺清、山本一郎の4人です。」


「その捕えた勇者ってどこにいるんだ?」

「ハルナを捕えて西の棟の最上階に幽閉したはずですが、半年前の記憶ですから今はどうなっているか。」

じゃあ、崖から落ちたのは山本一郎か?


「崖から落ちたのは?」

「ケンジです。」

生きてたよ、その人。私が殺しちゃったけど。復讐に燃えて悪魔召喚してたのかもな。それでも悪魔召喚に生贄を使ってたみたいだし、もっとベッキーみたいにレベル上げとか鍛えれば良かったのにね。道を間違ってたよ、ケンジ君。


「山本一郎は?」

「初めにベリアルに操らせたのが山本一郎です。いつも王のそばにいるように命令していました。」

「さっきはいなかったぞ。」

「では今はわかりません。」

ベッキーの話と合わせて全員の居場所がわかったな。ベッキーは行方不明扱いになったんだな。まだ捕獲依頼が来てるってことは一部の者だけしか知らないのかもな。

しかし、こんなに勇者関係についてベラベラしゃべってもいいもんかね。私にはありがたいがね。


「まずは協力者が欲しいな。城中全員が魅了されているからな。今は淡々と業務を熟しているようだが、襲ってくるかもしれんしな。」

「そういうことなら打ってつけの男がいます、イズミン侯爵です。正義感の強い彼なら協力してくれるはずです。」


さっきの芝居に出て来た名前だな。

「イズミン侯爵ってお前と敵対してないのか?」

「彼とは歳は離れていますが親友です、なぜ敵対する必要があるのです?」

「さっき見たんだが」

さっきの芝居のことを話してやった。


「えっ!そんな恥ずかしいことをさせられていたのですか。」

「王も大臣も魅了されてたから覚えてないとは思うけどな。けどどうやってイズミン侯爵の所へ行くんだ?どこにいるかもわからいだろうし。」

「いえ、全員業務をさせられていたということはイズミン侯爵もいつも通り業務をしているでしょう。場所はわかりますから。」

「あんたはいつもああやって王様に報告していたことになってるな。そうなのか?」

「そ、それは、違います。私は召喚の研究員だから、召喚の研究をさせることはしなかったんだと思います。報告は1度したからそれをさせられてたんだと思いますが。」

さっきもすぐに魔法攻撃してきたから、どこでも魔法をつかいそうだな?こいつは。


「他の研究員はいなかったのか?」

「いえ、居ましたが、ここにはいないようです。メンバーは私を入れて11人です。」

「今はいないし、それは後だな。まずはイズミン侯爵の所まで城を通らずにどうやって行くかだな。」

「それなら大丈夫です。この地下道を城と逆に行けば彼の務める領館の近くに出ますから。私の家もそこから近いんです。城の外だし、イズミン侯爵は魅了もされてないかもしれません。」


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