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第104話 ぬいぐるみ

「お前達、そろそろ勘弁してくれないか?付き纏われるのはウンザリなんだが。」

「そうは参りません。王にも許可を頂いてきました。この国にいる間は必ず護衛として付き従わせて頂きます。」

マジか?勇者トオルより面倒な事になってないか?さっさと用事を済ませてこの町から出よう。


「それなら提案なんだが、数を減らしてくれないか?そうだなぁお前達も責任があるから全員帰れとも言えないか。なら2人でいい。それと馬を1頭用意できるか?」

「2人は少なすぎます。せめて30人は必要かと。」

いらねえよ。大名行列か!医大の教授の回診でもそんなにいねーぞ。恥ずかしいんだよ。


「まず私は護衛が必要なほど弱くない。馬鹿にされてんのかと思うぞ。お前達は私を馬鹿にしてんのか?」

「そのようなことは決してございません。」

「じゃあ、さっさと馬を用意して2人に絞れ。」

馬はすぐに用意してくれた。さっきからじゃべってるのが騎士団長のベルギール・バンダムという名前でガタイの良い55歳の男だった。190センチはあるだろう。勿論横も大きい。パワー重視の重騎兵という感じだ。歩く度にガッチャンガッチャン煩い。


もう一人は25歳のワンダール・バンダム、団長の息子だった。身長は親父と同じぐらいだったが線が細かった。親父の半分ぐらいしかない。装備もフルアーマーではあるが、親父ほど重厚感がない。おそらく軽めの素材を使っているんだろう。


馬を3頭用意してくれたが、私が馬車を出し1頭だけ借りた。

御者には息子のワンダールにお願いしてベッキーの店に行くように指示して私達は馬車に乗った。あとの事は副長に任せたようだ。


「なんと!凄く広い!私が乗ってもこれだけ余裕があるとは。素晴らしい馬車をお持ちなのですな。」

団長は馬車を甚く気に入ったようだ。確かにこれだけ大きく鎧も付ければ乗れる馬車も限られてくるだろう。いつも窮屈な思いをしてるんだろうな。

確かに私の馬車に他人を乗せるのは初めてかもしれないな。でもロンレーンの工房のニーベルトが馬車ブームを作ったのでこっちでもあるんじゃないの?


「ロンレーンの町の工房に作って貰ったんだ。こっちには無いのか?」

「工房で、ですか。馬車は馬車屋だと決めつけておりました。私の知るかぎりバンブレアム帝国ではこのように素晴らしい馬車はございませんな。」

私が作ったんだけどね、そこまで褒められるとあげたくなってくるね。


道中は馬車の説明をしていた。

CかDランクの魔石を8個使っている事と設置場所や魔石の寿命などの説明してやった。


「そろそろ出発しませんとな。ワンダールそろそろ出発してくれ。」

「え?親・・団長。もう到着しますよ?」

「何を言っておる。馬車はまったく動いとらんぞ。」

話しに夢中になっていて外を見て無かったのか、窓に目をやり馬車が動いていることにようやく気付いた。


「な、なんと!この馬車はまったく跳ねたりしないのですか!?」

さっき説明したと思いますが、聞いて無かったか信じて無かったかだね。


「そうだ。だからロンレーンの町では馬車ブームで魔石が足らなくなってたぞ。」

「素晴らしい!是非とも取り寄せたい。」

「じゃあ、この馬車をやるよ。」

「い、いや、そんな訳には参りませんぬ。」

「いいんだ。その代り、私の護衛に来るときに使ってくれ。護衛もお前ら2人で十分だ。それ以外では馬車は自由に使ってもいいから。」

会うつもりも無いんだが、こう言っておけば敵にはならんだろ。


この馬車は妖精樹で四つの角の柱を作ってるので、今度は世界樹で作りたいと思ってたんだ。最近は転移が多くなって来たので、あんまり使って無かったけどな。


ベッキーの店で降ろして貰い、馬車を使わない時は魔石を外しておくように注意して、今日の所は何とか帰って貰った。

息子のワンダールも「(から)(うま)で走ってるみたいで馬もいつもより早いし全然疲れなかったみたいだよ。」と親父に説明していた。


さぁ、またベッキーだ。もうイヤなんだけど。でもぬいぐるみを頼んであるし、イチジロウの為にも取りに行くか。


店に入るとボイドがいた。

「お、ボイドじゃないか。ベッキーにぬいぐるみを頼んでたんだができてるか?」

「いらっしゃいませ、タロウ様。こちらに完成しております。」

「今はベッキーは居ないようだな。」

「今日の夜、団体の予約が入っておりまして、早くから夜の店の厨房に入っております。やはりママの事が気になりますか?」

「いいえ、まったく。」

代金は金貨2枚だった。結構取るんだな。日本円で20万円相当か。オリジナルだし、素材も良い物を使ってくれてるんだろう。フワフワで気持ちいい、大きいし。解析して自分でも作ってみよう。

サンゼルマン子爵のことも聞いてみたがボイドは知らなかった。

やっぱりベッキーに聞くしかないのか。


ぬいぐるみも収納し、遅くなったがまだ日も落ちてないしアラハンの所に行ってみよう。

町を出てロンレーンの町の屋敷に転移した。依頼も無いだろうし帰りも屋敷からの方が楽だ。


冒険者ギルドの受付でアラハンを呼び出して貰う。

すぐにマスタールームに通された。


「この前のブラックチキンのメンバーはちゃんと帰って来たか?」

「はい、無事帰ってきました。ありがとうございました。しかし誘拐犯達が来ないのです。別の町で自首したとも連絡は来てませんので、もしかしたら逃げたのかもしれませんね。」

「あいつら逃げたのか。見つけたら捕まえてやるよ。ちゃんと言い聞かせたんだがな。」

「ああいう輩は強かですからね。自首はしないでしょうね。」


「そうか、悪かったな。実は薬屋ギルドのギルマスと知り合いになったんだが、少し頼みごとをされてね。直接アラハンさんに言うように伝えてあるんだ。もし来たら聞いてあげてくれ。」

「依頼をされたんですか?そう言う事はこちらでお願いしますね。」

「だから今言ってるだろ?」

「それで依頼の内容はどういうものですか?薬屋ギルドですから薬の素材ですか?」

「さすが勘がいいな。世界樹の葉だ。これだがな。」

と10枚出してやる。


「な!え?あれ?なに?・・・」

アラハンはゆっくり深呼吸した。


「油断していました。タロウさんですからね、わかりますわかります。」

何か自分に言い聞かせているようだ。大分免疫ができてきたな。


「世界樹の葉ですよね?初めて見ました。」

「ああ、世界樹の葉だ。もし来たら渡してあげてほしい。売値っていくらなんだ?」

「葉1枚で金貨100枚ですね。達成料は最低でも金貨1000枚は行くでしょう。精霊界など行ける者などいませんから。」

「フェリアスさんの場合は達成料抜きで売ってあげて欲しい。」

「いいんですか?」

「ああ、フェリアスさんには世話になったからな。依頼ボードに載せる訳にも行かないだろ?」

「当り前です!わかりました、手配しておきます。」


意外というか予想通りというか高かったので樹皮と樹液は出すのが躊躇われた。

この前の薬屋ギルドでの話だと葉以上に希少のようだからもっと高いと思うし。

でも、今回は初めだからいいか。次から直接言って来るようならその時に対応しよう。


「アラハンさん、追加だ。」

樹液の小瓶5個と30センチ角の切れ端の樹皮を出した。


「んんん!!!」スーハースーハースーハースーハー

アラハンは深呼吸している。

「また油断していました。まさかとは思いますがタロウさんですからね。世界樹の樹液と樹皮で宜しいでしょうか?」

「合ってるよ。大分免疫が付いて来たな。」

「褒め言葉と受け取っておきます。」


今日の所はこれで終わりだな。あとは帰ってイチジロウにぬいぐるみを渡してやるか。



夕食も終わり、デザートに世界樹の実を出してやった。

皆、気に行ったのか何個も食べた。

「これはいいですねぇ、美味しいし力が漲って来ます。」

「ホント美味しいね。」

「美味しいですわぁ。ダンジョンの疲れも癒されますわぁ。」

「美味しいねー。」


あれ?ダンジョンってワードが出たのに皆食いつかないぞ?

なーんか怪しいなぁ。いつもならココアも付いて来るのに今日は来なかったし。

なんかやらかして無いだろーなぁ。


皆それぞれ部屋に戻った頃を見計らって、イチジロウの部屋に来た。

コンコン。「イチジロウ?」

「はい、なんですかい?」

イチジロウが出て来た。


「部屋に入ってもいいか?渡したい物があるんだ。」

「い、い、いや、へ部屋はマズいですねい。食堂に行きましょうかい。」

ん?怪しい~

無理やり部屋に入ってやった。


「なんだ?これはー?」

部屋中ぬいぐるみだらけになっている。

大きいのから小さいのからスライムやオークやホエーラーや私まである。


「イチジロウ。」

イチジロウはこそーっと抜け出そうとして、ビクってなる。

「説明してくれるんだろうな?お前は前の時にぬいぐるみって知らないって言ってたよな。どういうことかな?」

「はいー!!」


イチジロウは全部説明してくれた。

まず、リク・ヒナタ・ロロの悪ガキ3人組がぬいぐるみを持ってお願いに来た。

浮遊城に作ったダンジョンのレベルを上げてくれと頼みに来たそうだ。

イチジロウはすぐにやってやったそうだ。次にララ・ヒマワリ・ユニコ・クインがぬいぐるみを持って来て同じことを頼んだ。もちろんすぐにやってやった。


ぬいぐるみは初めは何人か別々でベッキーの所へ行って作って貰ったらしい。

後はユニコの裁縫とリクの【錬金】とショーン・ララ・ロロの研究で意見を出し合い、新作のぬいぐるみが出来る度にお願いに行っていたそうだ。意外な事にここで悪魔の新入りジャックが裁縫で活躍したらしい。


皆が同じように何度もやって来て、その度にダンジョンのレベルも上がって行き、階層は30階層と少なくなったが、少なくせざる理由があった。

10階層20階層のフロアマスターはSクラス下位のキマイラとヘルハウンドになっており、30階層の最終フロアはSクラスでも中位以上はあるだろうタイタンになっていた。


それ以外のフロアは、すべてモンスターハウスになっており、メタルハウスまであった。

出てくる魔物も最低でAの設定になっていた。魔物レベルが高いのとモンスターハウスが多いという事でこれ以上の階層にできなかったらしい。

いくらダンジョン核があるとはいえ、毎日何回も行けば魔物も中々復活してこない。

だからダンジョンで獲った魔石はキャッチ&リリース。持ち帰り厳禁にして魔物もわざわざ捕まえて来てダンジョンに吸収させたりしていたらしい。


馬鹿か!こいつらは!全員集合だ!

念話で全員食堂に集合させてやった。


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