第103話 世界樹の恵み
浮遊城に転移で着いたがアメーリアももう慣れたもんだった。が、城を見た途端
「なぜバンブレアム帝国のお城がここにあるんですか?」
そうだった。真似したんだもの。
「参考にさせてもらった。外見は似てても中身は全く違うからな。」
「タロウ様が建てたのですか?」
「まぁ、そんな感じだ。中に入ろうか。」
「また驚かされました。また今度何か考えておきます。」ウフフ
そういう事をしてる訳じゃないんだけど。
城の中に入ってみると聖なる気が充満していて心地良い気分になる。
それはアメーリアも同じだったようだ。
「すごく良い気に満ちていますね。この木はまさか世界樹なのですか?」
「そうだよ。よくわかったな。」
「こんなに大きな木は世界樹しか考えられません。見たことはもちろん無かったですが、世界樹の所へ行くともおっしゃっていましたし。」
「でも、あんまり驚いてるようには見えないぞ?」
「タロウ様といる時は驚くことは辞めたんです。驚いてる間に損をしますから。」
そんなに割り切れるもんかね。驚かれて話が進まなくなるよりいいけど。
「それでどうだ?クラスアップできそうか?」
「ええ、これだけ聖なる気が満ち溢れていれば大丈夫です。」
「どうすればできるんだ?」
「わかりません。」
「え?」
「あっ、少し驚きましたね?」ウフフ
そういうドッキリ大会では無いんだが。知らないのかぁ、じゃあ聞いてみるか。
「イチコ!いるか?」
「はい、なんでしょうか?」
イチコが世界樹の枝からスーっとゆっくり飛んで降りて来る。
「この娘はアメーリアと言うんだが、聖女なんだ。クラスアップできる方法を知らないか?」
「こちらのアメーリア様をクラスアップさせれば宜しいんですね?」
「ああ、できるか?」
「かしこまりました。少しお待ちください。」
「なんかできるみたいだぞ?良かったなアメーリア。」
「はい、大丈夫です。驚いてませんから。」
いや、だからドッキリ大会ではありませんから。
少し待つとイチコが木で作ったコップを持って来た。
「アメーリア様。どうぞ、これを飲んでください。」
アメーリアは躊躇なく渡されたコップを飲み干した。
「あ、おいしい。甘くておいしいです。」
アメーリアの身体が淡く光った。
魔物たちが覚醒する時に似てるな。クラスアップできたようだな。
「これは何なんだ?」イチコに聞いてみた。
「毎年穫れる世界樹の実のジュースです。私達ドライアドが穫って溜めているのです。私達が溜めているものは年数が経つほど人間には効果が高いはずです。今のは昨年穫れた実のジュースですが、アメーリア様には十分効果はあったと思いますが。」
「それって私も欲しいな。少しくれないか?私にも効果があるんだろうか?」
「かしこまりました。タロウ様にはクラスアップ効果はありません。」
そりゃ聖女ではありませんからね。私も飲んでみたが美味しかった。私には美味しいだけで効果は無かったがHPやMPの回復には効果があるような気がした。今はフルなので分からなかったが身体に力が漲って来た。
「その世界樹の実ってたくさん穫れるのか?」
「はい毎年たくさん穫れますので初めにタロウ様から頂いた収納の指輪にほとんど入れてます。3000年分ですから。私達の樹に保存しているのは1本で1000個ぐらいしか入っていません。」
いやいや、それでも凄いですから。今ドライアドって何本あるんだ?100本では利かないだろ?
「イチコ?今ドライアドって何本あるの?」
「今は500本ですが、世界樹が大きいですから、お世話をするのにまだまだ足りません。この倍は増やそうと思っています。」
500×1000が最低あって、それ以上が収納されてるってどんだけあるの?
「実のまま食べてもいいんなら少し分けてほしいな。仲間にも食べさせてやりたいし。」
「かしこまりました。もちろんそのまま食べても結構です。」
イチコは1万個出した。多いよ。でもこれでも収納されているほんの一部らしいから遠慮なく頂いて収納した。
「イチコ、これでアメーリアは聖大になれたのか?」
「いえ、アメーリア様はこれで聖人にクラスアップされました。」
「聖大にはなれないのか?」
「なれますが、宜しいのですか?」
「何か不都合があるのか?」
「はい、まず泳げなくなります。それと飛べなくなります。他にはブレスを吐けなくなります。それと針や爪などを飛ばせなくなります。あとは年に一度髪の毛が異常なくらい伸びます。」
えーと元々できない物ばかりだが、誰用の制限なんだ?
「元々できない事はどうなるんだ?アメーリアは飛べないしブレスも吐けないし爪も飛ばせないぞ?」
「私達精霊や古龍がクラスアップする時の制限ですので、元々できない者はこれからできなくなるだけです。」
だろうな、人間に関係あるものは泳ぐと髪の毛ぐらいか。
「泳げなくなるって水に入れなくなるのか?」
「いいえ、泳げなくなるだけです。」
それならメタルフロッグの指輪をすれば海でも入れるじゃん。
「そうらしいぞアメーリア。これはクラスアップ決定だな?」
アメーリアは何か凄く悩んでるようだ。何を悩む必要があるんだ?
「アメーリア?どれで迷ってるんだ?泳げないってやつか?それならいい方法があるから悩まなくていいぞ。」
「飛べなくなるのは困りますよね・・・。服もこんなのだし。」
いや、あなた元々飛べないでしょ?飛べる気でいたの?
「お前って飛べたの?」
「いえ、飛べませんが条件に入ってるんでしたら今後飛べるようになるかもしれませんし。」
いや、無理ですから。こんなに抜けてる娘だっけ?
「わかった、それも解決してやる。あと関係あるのは髪の毛ぐらいじゃないのか?」
「髪の毛が伸びるのは問題ないです。宮殿でも毎日髪の手入れをしてくれる者もおりますから。」
そうね、お嬢様でしたね。じゃあ、何も問題ないじゃないか。さっさとクラスアップして帰ろうよ。服ももういいでしょ、クラスアップには関係ないじゃん。
「クラスアップするという事でいいんじゃないか?儀式をする訳じゃないから服も別にいいんじゃないか?」
「そうですね。では、お願いします。」
「イチコ、頼むよ。」
「かしこまりました。」
イチコはまた何か取りに行った。
戻って来た時には手に実を持っていた。さっきの世界樹の実と同じ形ものだがオーラが違う。金色に光り輝いてる実だった。
「凄い実だな。なんだそれは?」
「これは世界樹が1000年に一度100個しか作らない実で、種も持っていますので貴重なのです。まだ300個しかありません。」
いやいや、十分な数だと思いますが。300本の世界樹っていらないと思いますが。
アメーリアは黄金に輝く実を渡されると実を齧った。
3口目の時にさっきと同様に身体が淡く光った。クラスアップできたようだ。
残りもしっかりと食べて種はイチコに返した。
「これで聖大にクラスアップできたようだな。さっき心配してた件は、今解決してやるよ。」
飛行の指輪をアメーリアに渡した。
「タロウ様から指輪を頂けるなんて、とても嬉しいです。」
「それは飛行の指輪だから填めると飛べるはずだぞ?填めてみてくれ。」
アメーリアは飛行の指輪を填めて飛んだ。私も飛行の指輪を填めて2人で世界樹の天辺まで飛んでみた。そこには1輪の大きな白い花の蕾があった。
イチコは下にいるから念話で聞いてみた。
『イチコ、世界樹の天辺に白い花の蕾があるぞ?これは採ってもいいのか?』
『ええっ!白い花の蕾があるのですか!?素晴らしいです!その花が咲くと世界樹から新たな命が誕生するのです。蕾はそのままにしておいてください。決して摘み取らないでください。』
『わかった、このままにしておくよ。』
私達は下まで降りて来てもう一度イチコに蕾の事を説明して浮遊城を後にした。
後の管理はイチコがやってくれるそうだ。誕生したら知らせてくれると約束してくれた。
「あ、忘れる所だった。イチコ、世界樹の樹液と樹皮って貰えないか?」
「かしこまりました。」
いいんだ。ホント何でもくれるね。
少し待っていると大瓶ぐらいの木製の樽に満タンの樹液と1辺50メートルぐらいの樹皮を持って来た。程度ってものを知らないのか?
「こんなに大丈夫なのか?」
「はい、樹液はこれで数滴ですし、樹皮もほんの僅かな一部ですから。」
確かに規格が違うよな、世界樹は。ありがたく収納した。ギルド提出用に樹液は小瓶5個と30×30センチに切った樹皮を先に用意して収納した。
砂糖が欲しくて始まった世界樹創りだったが、色んな所で波紋を起こしてるな。
枝、杖、葉、薬、樹皮、樹液、実、クラスアップ、新たな命か。
薬と言えばアラハンにはまだ言って無かったな。アメーリアを送ってぬいぐるみをベッキーに貰ったら行ってみようか。
アメーリアと宮殿に転移で戻って来た。執事が来たので伝えておく。
「アメーリアは聖大にクラスアップできたみたいなんだ。また祝ってやってくれよな。」
「せせせせせ聖大ででですか?」
「ああ、そうだ。聖人にクラスアップしてから聖大になったよ。」
普段は冷静沈着な執事が大慌てしている。そんなに凄い事なのかな?実を2個食っただけなんだけど。確かに身を纏うオーラの質は格段に上がったようだがな。
なんか【鑑定】をするのも悪い気がしてしてないんだよな。別に戦うわけでもないしさ。
宮殿中大騒ぎになってるので、その隙に宮殿から出た。
まだ騎士達が待っていた。




