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第102話 勇者トオル2

受付でカードを見せるとすぐにマスタールームに通された。


「ようやく来てくれましたか。連絡はしたはずなんですが。」

「ああ、聞いてたよ。こちらも断ると伝えたはずだが。」

アメーリアのお披露目式に出てから、私宛に貴族からの招待状が冒険者ギルドに来ていると聞いていたが、すべて断ると伝えていた。


「断るとは伺っていますが、数が多すぎるので困っているのです。こちらからは断りにくい貴族の方もおられますからね。」

そう言ってオーフェンは招待状が山のように入った箱を出した。


「凄い数だなぁ、よくもまぁこれだけ送って来れるもんだなぁ。何人分だ?」

「貴族や臣下の方からで、63名から来ています。他国からもありました。何度も送って来られている方もいますから、これだけの招待状が溜まっています。何とかしてください。」

「なんとかって、なんともならんよ。断っといてくれ。」

「そもそもタロウさんが短剣など受け取るからこういう事態になっているんですよ。この処理はご自分でお願いします。」


「そうだ、気になってたんだ。短剣って何か意味があるのか?」

「タロウさんは知らないのですか?知らずに受け取ったのですか?王家の女性から送る短剣とは婚約者の意味を持つんですよ。しかもアメーリア様は今一番注目されている王族ですよ。しかも王様にまで認められたと伺ってますよ。」


「流石に情報には詳しいな。あれは違うんだ。アメーリアのドッキリなんだよ。」

「ドッキリ?とは?」

「私を驚かせるためだけに仕組んだだけだ。王様も私が勇者を追い払ったんで認めてくれただけだと思うぞ。」


「勇者様との決闘も伺ってますが、タロウさんを驚かせるためだけってどういうことですか?」

「こっちがアメーリアを驚かせてばかりだから仕返しがしたかっただけみたいだ。」

「そうなんですか?気持ちはわかります。」

「ん?だから招待状も困るんだがな。元々そういうのは行きたくないし。」

「わかりました、もう一度断りの手紙をこちらから出しておきましょう。」

何か同調できる部分があったのだろう、納得してくれたようだ。


「すまんな、頼むよ。それからあれはどうなった?。」

「何の事でしょうか。」

「ダンジョンでマルコシアスに付いていた衣服の切れ端の件だ。誰だかわかったのか?」

「はい、調べは付いています。一族全員が国に処刑されていた貴族の物でした。この一族は誰も残ってはいませんが、関わりがあった貴族なら・・・・これです。この方とは関わりがあったようです。」

招待状の山の中から一通の招待状を取り出した。


「関わりがあったと言うだけで、今回の処刑に関わりがあったかどうかまではわかりません。もう誰も生き残ってませんからね。これ以上は調べようが無いですね。うちも慈善事業ではありませんから、何らかの報酬が見込め無いと動けませんからね。」


お蔵入りか。ジャックにもまだ聞いて無かったな。でも、もうフォルファクスも居なくなったし王家も犠牲者はたくさん出たが落ち着きを取り戻したようだし、もういいか。


「私もこの件は掘り下げるつもりも無いから、次にまた動きが出たら考えようか。でもこの招待状だけは貰っておくよ。」

「そうですね。それがいいでしょう。最後になりましたが、先日の盗難の件では大変お世話になりありがとうございました。」

「その件はもう終わったことだ。気にしないでくれ。」

「タロウさんの予言通り、臨時ボーナスもいただきました。」

「へ~いくら出たんだ?」

「金貨2000枚頂きました。大金過ぎて。どういうことだったんでしょう?」

「さあ、それは本部に聞いてくれ。私が知ってる訳無いじゃないか。」

「確かにそうですね。タロウさんなら何か知ってるのかもと思っていましたが、確かにそうですね。」

「今度、飯でもおごってくれよ。」

「はい、いつでもお声掛けください。」

そんなに出したんだな。500枚かと思ってたよ、やるな本部も。


話しも終わったので冒険者ギルドから出て来たら、また会いたく無い奴に出会った。というか私が出てくるのを待ち構えていたようだ。


勇者トオルだった。

取り巻きに騎士を大勢連れてきている。

私が冒険者ギルドに入ったことを確認させていたようだ。


「やい貴様!今度こそ逃がさないぞ!今日こそお前を僕が倒す!」

「・・・・・。」呆れて何も言えね。


「貴様の持っている短剣を僕に渡せ!素直に渡せば許してやらんことも無い。」

「お前の基準がどうなってるのか知りたいもんだ。お前この前、尻尾を巻いて逃げてったよな?それがどうして逃がさないぞになるんだ?もう関わるなとも言ったはずだが?」

「ぼ僕が逃げる訳無いだろ!王様の前だったから一時休戦にしてやっただけだ!」

「ほぅ、そこまで言うなら私も面倒になってきたし、私は逃げないからお前を斬ってもいいんだな?」

「ぼぼぼ僕がきき貴様にき斬られる訳が無い!みんな!奴を倒して短剣を取り戻せ!」


「取り戻せってこれの事か?お前から奪った訳でも無いのに取り戻せってのもおかしくないか?アメーリアから貰っただけだぞ?」

アメーリアから貰った短剣を出して見えるように目の前に付き出してやった。

すると短剣が一瞬キラーンと光輝いた。


「また呼び捨てに。そそれが短剣か。よーしそれをこっちに寄こせ。」

「お前なんかにやる訳無いだろ、これ以上追いかけられるのも面倒だから斬ってやる。そこを動くなよ。」

短剣をしまい刀を出した。

「みみみんな!やってしまえー!」


周りに居た騎士たちは全員平伏して動こうとしない。

「どどうしたんだ?なんでみんな動かないんだ?おい!勇者の命令だぞ!」

「この方は短剣に選ばれた方のようです。我らは王家に仕える者、短剣に選ばれし者に向ける(やいば)はございません。」

「ななななんでだ?なんでなんだよー。」

そう言うと勇者はまた逃げて行った。


「・・・・・。」

また来そうだな、あいつ。


私はそのままアメーリアの宮殿に向かった。

なぜか後ろからゾロゾロ騎士団が付いてくる。私が止まると騎士団も止まる。振り向くと平伏す。何故付いて来るのかと尋ねると「護衛です。」と言うだけ。

「護衛はいらん。」と言っても「そういう訳には参りません。」といってずっと付いて来る。

走って巻いてやろうかとも考えたが、私の力を見せるのも躊躇われたし、転移も見られる訳にもいかずアメーリアの宮殿までずっと付いて来た。すっごく恥ずかしかった。


宮殿に着くと守衛に短剣を見せた。これで入れるはずだからだ。

その時も短剣はキラーンと光り輝き、騎士団からどよめきが起こった。

なぜか守衛も平伏した。

なんなんだこれは。もう短剣を返してやろう。


案内役にアメーリアの所まで連れてきたもらった。


「ようこそいらっしゃいました、タロウ様。」

「久し振りだな、アメーリア。少し聞きたい事があったんで寄らせてもらったよ。」

「はい、なんでしょうか?」

アメーリアはすごく良い笑顔で答える。


「短剣の事なんだが、騎士団が纏わり付いて困ってる。何とかならないか?なんなら返そうかとも考えてるんだが。」

「それは困ります。お願いですから持っててください。」

アメーリアは泣きそうな顔で訴えて来る。

なんでそこまで拘るのかなぁ。もうドッキリも終わっただろうに。王様への言い訳にも必要なんだろうか。


「仕方が無いな、わかった持ってるよ。今日はその話じゃないんだ。ただ、騎士団は何とかならないものか。」

「ありがとうございます。騎士団は私が何とかします。お話しとはなんでしょうか。」

「ん、頼むよ。この招待状の貴族なんだが、何か知らないかと思ってね。」

招待状を出して見せた。


「サンゼルマン子爵ですね。何度かお会いしていますが、詳しくは知りません。じいは知りませんか?」

「サンゼルマン子爵ですか、その方は国内より国外との付き合いが多い方ですね。特に南側の国との外交が得意な方です。」

「南と言うとエンダーク王国あたりか?」

「はい、そのようです。」

またベッキーか。もう誰かに行かそう。デルタ辺りでいいんじゃないか?あ、ユニコに聞いてもらおう。


「あとは調べてみるよ。ありがとう。」

「タロウ様?折角来て下さったんですからお飲み物でも用意させますね。」

「そうだな、頂くよ。」

執事が用意するように手配する。


アメーリアと向かい合わせで座った。

「でも、こうやって改めて見てもアメーリアって美人なんだな。あの勇者が執着するのも分かる気がするよ。」

「え?タロウ様?・・・・ありがとうございます。」アメーリアは顔を赤らめながら答えた。


良いとこのお嬢様だし、王家だからね。洗礼を受けたって言ってたから歳は16歳ぐらいか。スタイルもいいし、なんたって美人だよな。良い相手が見つかればいいね。心配しなくてもすぐに見つかるだろうな。ただ、勇者トオルだけは辞めた方がいいと思うな。


用意された紅茶を飲みながら、コーヒーって無いよなぁ好きなんだけどなぁと考えていた。

「コーヒーって知ってるか?」

「ええ、知ってますわ。コーヒーがどうかされたんですか?」

え?あるの?


「いや、こっちに来てから飲んだことが無いと思ってね。」

「え?コーヒーって飲み物なんですか?気付け薬か香料だと思うんですが。」

そういう使われ方してるのね。なら、焙煎すれば行けるんじゃないか?


「私の国ではコーヒー豆を乾燥させて煎って粉にして湯で漉すんだ。私はその香りが好きでね。どこにあるんだろ?」

「どこでしょう?じいは知ってる?」

「たぶん鍛冶屋か薬屋にあると思いますが。鍛冶屋は魔物の皮の匂い消しに使ってると思いますし、薬屋は気付け薬の調合に使っていると思いますが。」


「へぇ、今度見に行ってみるよ。それよりアメーリアって聖女なんだよな?」

こっちが今日の本題だ。


「はい。」

「神精気って世界樹の聖なる気とどう違うんだ?」

「同質のものですが、聖なる気には及びません。総本山でもたくさんの神聖樹があるので聖なる気の代わりができているのです。それで聖女にクラスアップする洗礼の時には総本山に行かなければならないのです。」


「ん?でも行ったのは活発期で神精気はバーミリオンが全部取ってしまうので無いんじゃなかったか?」

「総本山ではいつも神精気を溜めていますので、いつ行っても大丈夫なんです。神精気は溜めて集約しておかないとクラスアップには役立ちませんから。」

「聖女の上にクラスアップはできないのか?というか何かあるのか?」

「はい、あります。女性でも聖人にクラスアップはできますし聖大というクラスが一番上位に当たります。王家からはまだ聖人までしか出たことがありません。」


「もし濃い聖なる気の所へ行けば、聖人や聖大になれる?」

「たぶんなれると思いますが、そういう所は精霊界にしか無いと聞いてます。」

なれるんだ。ふとした思い付きだったけど、良い勘してたな。


「それは多分世界樹の所の話だと思う。今から行ってみるか?」

「ええ!本当ですか?それは是非お願いしたいのですが、こんな格好では。儀式用の衣装も今はありませんし。どうしましょう。」

「いいんじゃないか?別に何度でも行けるし、まずは見学に行ってみるか?」

「そういう事でしたらお願いします。」

「執事さんも行くかい?」

「タロウ様がご一緒でしたら心配も必要ございませんので、本日はご遠慮させていただきます。」

「何か気を使ってんのか?本当は行きたいんだろ?」

「いえ、大丈夫でございます。」


「まぁいいか。それじゃ行って来る。」

短刀でアメーリアと天空城へ転移した。

「いってらっしゃいませ。」と執事が言ったときにはもう消えていた。


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