第101話 調合
アジトの屋敷に戻って屋敷がある森から出てソラに世界樹の葉付き枝を見て貰った。
「すっごくいい葉っぱだねー、ご主人様この葉っぱ貰っていいのー?」
「ソラにあげようと思ってたんだ。どんな薬ができるんだ?」
「すっごくいいお薬ができるよー。」
「例えば?」
「そうだねー、どんな怪我でも治るお薬もできるしー、死んだ人も生き返るかもしれない―。」
「そんなに凄い薬ができるのか!作れるのか?」
「やってみるー。」
ソラが何かやってる。葉を1枚持って集中しているソラだが作れなかったようだ。
「ご主人様ー。ダメだったー。」
「そうか、誰か作れそうな人を知らないか?」
「おばーちゃんなら作れるかもー。」
「そのおばあちゃんに教われるか?」
「うーん、聞いてみるー。」
「この葉っぱ全部持って行け。私は枝の部分だけあればいいから。葉はまだまだあるから欲しい人に少しだけなら分けても構わないぞ。その代りに他に作れる薬があれば教えて貰うんだぞ。」
「わかったー。カードをくれたおばーちゃんに聞いてみるー。」
枝に付いていた葉をソラに全部渡した。枝1本分といっても青々とした葉は1000枚以上付いていた。それが10本ある。葉だけでもすごい数だ。
出したついでだからデルタの杖を作ってみた。もちろん枝だから杖の量だけの使用になった。魔石はたくさん持ってるから中央の大きな所にフォルファクスの魔石をはめ込み、他の所も別の種類の魔石で埋めた。
凄く格好良い。弱い風魔法を使ってみたが森の木が何本も折れた。凄い増幅力を持っている杖だった。私も1つ欲しくなったし、ついでだから多めに10本作って1本をデルタにあげた。
デルタに杖を渡した時は「おおおおおおおお!!」しか言わなかったよ。
私とココアとイチジロウが城ダンジョンに掛かり切りになっていた時に全員がダンジョンに嵌まっていた事は言うまでもない。
確かに少しはわかるよ私も。魔物を倒せるし、倒した魔物の後始末はしなくていいし、魔石だけ回収すればいいだけだからね。回収や解体の面倒もないし。でもそこまで嵌まるほどの物でも無いと思うんだよ。ね、皆さん。
夕食時、イチジロウに話し掛けた。
「イチジロウ、今回は大活躍だったな、見直したよ。何か褒美を考えてるんだが、なにか欲しいものはあるか?」
「本当ですかい?じゃあ、ボクは可愛いお人形が欲しいねい。」
キラーン!え?このタイミングで目の光る音が来た?
振り返ったが、誰もこっちを見ていない。
気のせいだったか?
でも人形かぁ、ぬいぐるみの方が良くないか?この世界で見たこと無いしなぁ。作ってみようかな。
「イチジロウの聖獣の姿をモデルに作ってやろう。他にも何か考えて作ってやるよ。ぬいぐるみなんか良さそうなんだけどなぁ。」
「本当ですかい?ぬいぐるみって何かわからないけど楽しみだない。」
試しにドライアドの切れ端を【創生】でイチジロウの聖獣の姿で作ってみた。
リアル過ぎて可愛くない。小さく作ってみたら多少は可愛くなったがイマイチだ。
やっぱりぬいぐるみがいいな。誰なら作れるかなぁ。
!!!!!嫌な奴を思い出してしまった。他に道は無いか?ユニコなら作れる腕はあるだろうが、ぬいぐるみを知らないだろうからなぁ。
「やっぱりベッキーしかいないか・・・・。」ボソっと呟いた。
キラリーン!え?また誰かの目が光った?やっぱり誰もこっちを見ていない。
なんなのだろう?
次の日、ソラは言ってたカードをくれたおばあちゃんの所に行って世界樹の葉っぱを1枚渡した。
「どどどこで手に入れたのソラちゃん。」
「ご主人様に貰ったのー、少しならあげてもいいからお薬の作り方を教えてもらいなさいーって言われたよー。教えてくれるー?」
「わかったわ。どれにしましょう、1枚ですものね。あれがいいか、いやこれがいいか、いやそれとも・・・」
「そんなにあるのー?じゃあ、これで足りるー?」
ソラは葉っぱを10枚出した。
「ななな何枚持ってるの?」
「いっぱいあるよー、でも少ししかあげちゃいけないってー。」
「いいいいえ、じゅ10枚でじゅ十分よ。少し待ってね、落ち着くから。一生に1枚も見れないギルマスも多いのよ。それが10枚。ソラちゃんのご主人様って何者なの?ソラちゃん以上に凄い人なのね。」
「そうだよー、ご主人様は凄いんだー。」
回復・解毒を纏めて行なう回復薬、蘇生薬、一時的に体力や攻撃力を2倍にする促進薬、パーティ全員を纏めて回復する薬、MPの回復薬、HPを全回復する薬、状態異常を全快する薬。
ソラはすべて教えて貰った。
ただ、それらは専用の道具が必要なので、流石のソラもやり方は覚えたができそうになかった。しかも道具は高いし希少。手持ちのお金では足りなかったし譲っても貰えそうになかった。
「ご主人様を連れてくるー。」
と言ってソラは出て行った。
ソラは屋敷まで戻り、アジトの屋敷まで私を呼びに来た。
事情を聞いて私も一緒にロンレーンの町の薬屋ギルドまでやって来た。
「初めまして、この娘の主のタロウと言います。冒険者です。よろしく。」
「こちらこそ。ここのギルマスのフェリアスです。いつもソラちゃんには驚かされっぱなしで。今日も世界樹の葉を持って来られて驚いていたんです。」
「それは申し訳なかった。ソラは何を言ってるかわからない時がありますからね。ソラ?お礼は渡したのか?」
「渡したよー。あ、でもさっき使っちゃったねー。」
「じゃあもう少し渡してあげて。」
「わかったー。」
ソラは葉っぱをまた10枚出した。
フェリアスはまた目を丸くしている。
「ソラに調合方法を教えてくれたそうですね。その道具を見せてもらえませんか?」
「これですが。」
出された道具を私は一つ一つ解析していく。
「調合方法を私にも見せてもらえませんか?ソラ、あと10枚出してくれるか?」
「わかったー。」
と更に10枚出した。
「何枚持ってるのですか!?世界樹の葉は精霊界にしかない貴重な葉なのに。たまにしか出会わない樹の精霊か妖精が稀にドロップするしか私達には入手方法がありませんのに。」
「入手方法は秘密ですが、今後も葉ぐらいなら幾らでも入手できそうです。必要であればお回ししますよ。この町の冒険者ギルドのギルマスに直接言って貰った方がいいですね。依頼ボードに世界樹の名前が出るのは避けた方がいいでしょうから。」
「葉ぐらいって、幾らでもって。ソラちゃん以上に驚かされますわ。」
フェリアスは私とソラを何度も交互に見ていた。
「調合方法を私にも見せて貰えますか?」
「わかりました。今から調合いたしますので横で見ていてください。世界樹の葉が入手できるのなら是非頂きたいので冒険者ギルドのギルマスにも連絡をすることに致しますわ。あと、樹皮や樹液もあればいいのですけどねぇ。流石にそこまでは無いでしょうね。」
「え?えー・・・。」
「あるんですね。本当に凄いご主人様だこと。」
「今は持ってませんが、多分大丈夫ですよ。」
「もし手に入ったら少しで結構ですので是非分けてくださいね。」
「わかりました。」
ひと通り調合方法を見せて貰った。
「道具は貴重なようなので、どこかで手に入れることにします。今日は貴重な体験をさせてもらってありがとう。大変優秀なギルマスのようだ。ソラとあなたとの出会いに感謝したい。」
道具の解析は終わってるので自分で作ればいい。
「こちらこそ滅多に出会わない世界樹の葉を頂いてしまって。感謝の言葉もありませんわ。」
「帰るのー?」
「ああ帰ろう。あと10枚置いて行こうか。あ、フェリアスさんは魔法は使えますか?」
「わかったー。」
あと10枚ソラが世界樹の葉を出した。
「ええ、勿論、使えますわ。」ソラの出した世界樹の葉から目を離さず答える。
「では今回の出会いに感謝してこれをプレゼントします。世界樹の杖です。妖精樹ではありませんからね。」
さっき世界樹の枝で作った杖を渡してやった。もちろん魔石付きで。
驚きで口も目も開きっ放しで固まってしまったフェリアスを置いて薬屋ギルドを後にした。
調合方法は見せて貰ったので覚えたし道具も解析させてもらった。この薬は今後、私達には非常に役立ちそうだったので、本当に感謝の意味でプレゼントした。
驚かそうとは少ししか思ってない。思ってたのかい!って突っ込みが聞こえたぞ?
私の分の杖はまだあるしね。
早速道具を【創生】で作った。素材は魔力を良く練れるものが良いという事だったので世界樹の枝で作った。
2セット分作って、1セットはソラにあげた。
ソラは早速世界樹の葉で薬を作っている。私も試しに教わった全部の種類の薬を作ってみた。
入れ物が無かったのでココアに小瓶や小さな壺を町に行ってたくさん買って来て貰った。
出来栄えをソラの作ったものと比べたが、私の作った薬はそれなりの効果はあるもののソラには及ばなかった。
悔しかったのでココアが買って来た入れ物が無くなるまで作った。
技能に【調合】は付いたがソラの作ったものにはまだまだ及ばなかった。
途中、ココアも作りたいと言うのでココアの分も道具を作った。
私と一緒に作ったココアの薬の方が出来栄えが良かった。
それもまた私のやる気に拍車をかけた。
今まで作った分は大瓶に種類毎に分けて纏めて、空になった入れ物が全部無くなるまで薬作りに没頭した。それを何度も繰り返し熟練度Maxになった時に、ようやく最初にソラが作った薬と同レベルになった。
世界樹の枝の5本の葉が無くなっていた。もう何日やっていたか覚えてない。
薬作りに没頭していたので、後回しにしていたぬいぐるみの為にバンブレアム帝国のベッキーの店にやって来た。来たくは無かったが仕方が無い。
「あらいらっしゃ~い、久し振りね~。」
今日もいるじゃないか、今日はこいつに用があったのでいいんだけど、ボイドの奴は何やってんだ?
「残念ながら来てしまったよ。来たくは無かったんだが頼みたい事ができてしまったんでな。」
「まーなによその言い方。そんな事言うなら何も聞いてあげないわよ。」
「すまんすまん悪かった。実はぬいぐるみを作って貰いたいんだ。これの。」
前に作ったイチジロウの聖獣の木像を出した。
「あなたもぬいぐるみなの~、最近多いわねぇ。今流行ってんの?」
「流行りって?私は持って無いが?持ってる奴を見たこともないし。」
「どういうことかしらね、最近ぬいぐるみの注文が多いのよぉ。あなたんとこのユニコさんも作り方を聞いて来たわよぉ。」
「そうなのか、それは知らなかったな。私には関係ないからわからないな。それで、この木像をモデルに可愛く作ってくれないか?」
「わかったわ。大きさはこれぐらいでいいのね。」
リアル大の木像を指さして聞いて来た。
「できればもう少し大きくできるか?」
「わかったわ。今日の夜には仕上げておくわ。」
「そうか、じゃあ頼んだぞ。」
そう言い残し、さっさと店を出た。
偶にはオーフェンの顔でも見に行くか。と冒険者ギルドに来てみた。




