第100話 世界樹
翌日の朝食が終わり片付けも終えたころ、誰も居なくなったことを確認してイチジロウに聞いてみた。ココアはいるけどね。
「イチジロウ、浮遊城ってダンジョン化できるのか?勿論ダンジョン核はあるぞ。」
「できるよい。簡単だよい。100階ぐらいならすぐにできるよい。」
「いや、大きな大きなワンフロアを作って欲しいんだ。そこに世界樹を育てたいんだ。」
「おっほー!!世界樹!!本当ですかい!?」
「知ってるのか?ちょっと意外だけど。」
「知ってるよい!ボクが育ったところにもあったよい。懐かしい~い。」
懐かしいってお前まだ13歳だし、こっちにきてから何か月も経って無いんじゃないのか?1日でも離れれば懐かしいって感じは無くは無いけどな。
「じゃあ、世界樹の大きさはわかるか?」
「わかるよい。」
「その世界樹が余裕で育てられるぐらいの大きさと、小山を1つ作って欲しいんだ。小山は洞窟みたいに。できるか?」
「大丈夫だよい。」
「魔物もガジュマルって奴だけにしたいんだができないか?」
「それは難しいない。選べるけど他の魔物も少しは出したいない。」
お前の都合か?できそうだな。
「これは世界樹の為でもあるんだぞ。他に出したい魔物があるんなら昨日作ったダンジョンに出せばいいじゃないか。あ、ドライアドなら出してもいいぞ。」
「わかったよい。」
イチジロウとココアを連れて浮遊城に来た。
城の中に入りイチジロウに確認する。
「ダンジョン核ってどの辺に配置するんだ?」
「入り口と反対の奥に部屋があるのがいいよい。」
「じゃあ、あの部屋が良さそうだな。洞穴に付いてなんだが、中からも外からも共通する部屋に作ることはできないか?あの部屋がそうなんだが。」
そうすれば態々魔物部屋に入らずに砂糖の鉱石が採れるもんな。
「できるよい。まだ条件はあるのかい?」
「小山も大きい岩山にしてくれれば大丈夫だ、それで頼む。」
ダンジョン核を奥の部屋で出してやった。
昨日と同じように両手を翳した。今日の方が時間が掛かっている。結局10分ぐらい掛かった。その間ダンジョン核もずっと虹色に輝いていた。昨日は一瞬だったのにな。
「今日は時間が掛かったな、何が難しかったんだ?」
「広い大部屋は難しいんだよい。だからモンスターハウスなんかは中々作れないんだよい。」
ダンジョン核も落ち着いたようなので部屋に出てみた。
余りの広さに驚いた。元々の部屋もかなりの大きさがあったが、この広さはドーム何個分だ?世界樹ってそんなに大きいのか?天井も何キロあるんだ?
「驚いたよ、イチジロウの力は凄いなぁ。世界樹ってこんなに大きいんだな。知らなかったよ。」
「私も驚きました。こんなことができるのですね。世界樹も大きいんでしょうねぇ。」
「ちょっと頑張り過ぎたよい。ここまでは大きくないよい。」
ガクッってなりそうになった。広い分には問題無いだろ。後は私の仕事だな。
「後は世界樹を育てるのとガジュマルとドライアドを召喚するだけなんだが、イチジロウはまだ付き合うのか?」
「昼は誰も帰って来ないって言ってたし、見てるよい。」
「私も見てます。」
まずは妖精樹の枝を出す。解析をした。解析が終わり【創生】で種を作り出す。
【創生】でも、何もない所からは作り出せない。今回はドライアドをベースにして【錬金】の要領で種を1粒創った。
これだけ広ければ部屋の中央でいいか。
種を部屋の中央に蒔く。【マジックフリー】で種の時間を早める。私の魔力がどんどん吸い取られていく。MPが1000を切った所で中止した。
世界樹はもう高さ100メートルぐらいで太さも直径30メートルぐらいになっている。
【マジックフリー】のタイムマジックで魔力を消費した訳じゃないな。少しは消費しているだろうが、世界樹の成長の為に吸い取られたんだと思う。
次やる時は魔力の代わりになるものを使わないと効率が悪いな。
あ、小判か。それもアリだが、魔石でもいいんじゃないかな。
「イチジロウ、世界樹はもっと大きいと思うんだが、どれぐらいなんだ?」
「この前私達が見た妖精樹はこれぐらいでございましたが。」
「世界樹はもっともっと大きいぞい。まだ子供ぐらいの大きさだぞい。全然聖なる気も出してないよい。」
じゃあ、成長の為の栄養を取らせないとな。
「イチジロウ、世界樹の餌というか食べ物というか養分は何か知ってるか?」
「知らないねい。」
普通に考えたら植物だから太陽と水と肥料だよな。
「イチジロウ、ここに太陽と川を作れないか?」
「できるよい。でも何か元になる物が欲しいよい。」
「光り魔法のライトボールでもいいか?水はココア頼めるか?」
「わかりました。」
「それでいいよい。」
私は直径5メートルぐらいの大きなライトボールを作り、ココアも同じぐらいのウォーターボールを作った。
イチジロウがダンジョン核の間に入り調整すると天井の一番高い所に太陽の様なものができ、幅20メートルぐらいの川ができた。
どちらも本物みたいだ。本物と同じ効果もあるのだろう。弱いくせに凄い奴だよイチジロウは。
後は肥料なんだが、フォルファクスの地下で排除した魔物は使えないかな?
元が人間かもしれないと思うと食べることもできずに持っているだけだから処分したいんだよな。
「イチジロウ、死んだ魔物ってダンジョンに食われるのか?世界樹の肥料で使いたいんだが。」
「大丈夫だよい、吸収されたものは世界樹の栄養になるようにしてあるよい。」
ダンジョンに関してだけは頭も回るよな。こんなことができるんなら弱くてもいいか。
フォルファクスの地下で排除した魔物を出していく。
「あ!マルティムだい!あ!あ!あ!」
「ん?どうした?」
「一緒に召喚された奴とフォルファクスさまの所にいたマルティムと、あとマルティムと一緒に居た悪魔達だよい。」
「え?」
そうだったのか。知らないうちに排除できていたんだ。もし残っていても少ないだろうから安心だな。
今日はこれぐらいにして、後は明日様子を見てからだな。聖なる気ってイチジロウも言ってたけど、魔力で育てすぎると聖なる気を出さないような気もするからな。
「今日はここまでだな。後は明日以降の様子を見ながらやろうか。」
「タロウさま、明日って言っても何も変わってないと思うよい。時間を早めようかい?」
「そんな事までできるのか!?じゃあ、やってくれ。まずは明日までに1000年ぐらいってできるか?」
「簡単だよい。」
本当かよ、できるんだ。ダンジョンに関してだけは凄いよ、こいつは。
翌日来てみると、世界樹になっていた。
イチジロウに言わせるともっと大きくなるということだが、聖なる気は放出していた。
もっと魔物に溢れていると思ってたら世界樹が出す聖なる気で魔物は一体もいなかった。
まずはガジュマルを召喚。
イチジロウがイチロウとジロウを取ってしまったのでサブロウと名付けた。
世界樹もまだ成長途中なので、1本限定で寄生するように命令しておく。
砂糖の鉱石を作る場所として用意していた部屋を指示する。こっちの部屋もイチジロウは大きく作ってくれていた。立方体の部屋なんだが、一辺300メートルはあった。その半分に岩山を作り洞穴を作ってくれていた。高さは天井まで届いていた。
あとはガジュマルが出す魔素なんだが、砂糖鉱石を作るためには出すしかないらしい。まだ砂糖鉱石は少なめでいいから魔素の出す量を押さえてもらうようにする。そうすれば世界樹の出す聖なる気で中和されるだろう。
ここまでで今日は終わりにしよう。また明日だな、1000年後だ。
10分でも入っていれば時間の影響を受けそうだが、イチジロウといれば影響を受けないそうだ。
ドライアドも1体召喚した。女だったので名前はイチコ。
イチコもサブロウもこの城ダンジョンからは出ないから名前なんてわかり易けりゃ何でもいい。私かイチジロウが呼ぶぐらいのものだ。少し残念そうなココアはいましたが。普通の名前なんだけどなぁ。
【那由多】が言ってた通り、精霊門を作れる解析は完了していた。
また次の日も世界樹の所に行ってみる。
昨日の倍以上大きくなっていた。2000年目だからな。
砂糖鉱石も満タンになっていた。少しずつとはいえ1000年分だからね。
ココアとイチジロウの2人に半分ずつ持たせた。そっちも料理で使うだろうしね。食べる側としても美味しい物の方がいい。今でも十分美味しい物を作ってくれてるんだけどね。
もうこれだけ砂糖があれば一生困らないだろうが、ここまで来たら世界樹を育ててやろう。
ドライアドも大きくなっているんだが、世界樹が大きすぎて大きく感じない。
ドライアドには増えてもいい許可を出した。
もう1000年様子を見ることにして、今日は帰った。
また次の日覗いてみた。3000年目だ。更に昨日の倍の大きさになっていた。
入って来るだけで心地いい気で溢れていた。
世界樹には葉にも効力があるらしいし、もちろん枝も欲しかった。葉が付いた枝を10本切り落とし収納した。枝と言っても私が伐ったドライアドやニンフの5倍の大きさはあった。
砂糖鉱石は収まり切れず、洞穴から少しはみ出していた。今日は私が貰うことにした。
別に私はいらないんだが、持っていてくださいということだったので必要な時は言うように指示して私が管理することにした。昨日の分だけで大丈夫だろうけど。
枝も伐ったことだし、あと1000年経過させることにした。
次の日来てみると、世界樹はまた昨日より大きくなっていた。もう天辺は霞んで見えない。太さも直径1キロ以上はあるだろう。イチジロウがこの部屋を作った時、大きすぎるだろうと思ったが、そんな事は無かったな。
砂糖鉱石は洞穴からかなりはみ出していたので砂糖鉱石は収納。これだけ聖なる気に溢れていると砂糖鉱石の生産性も上がるらしい。
昨日伐った枝も完全に治っていた。そこから新たな枝が昨日以上の大きさで生えていた。
ドライアドは世界樹の周りに沢山出来ていた。ドライアドの精霊も世界樹の枝にたくさん確認できた。
ガジュマルが寄生している枝も凄く大きくなっている。この大きさなら10体までなら別の枝に寄生しなくて済むとのことなので、10体までなら増えてもいい許可を出した。
結局4000年と私が最初に魔力を注ぎ込んだ何百年分かで、時間を通常の時間にした。
ふとアメーリアがここに来れば得るものが大きいのかなぁと思った。
軽い思い付きだったが、今度アメーリアを連れて来てやろうかな。




