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第1話 始まりの部屋

遅咲きの冒険者 佐藤太郎の部屋が異世界とつながり、現代へ帰れなくなる。

東の国から始まる冒険は どこで終わるのか?帰ってこれるのか?

ゴールデンウィークの始まりの日。

私は、これから始まる長期大型連休のために、以前から計画していた【まったく家から出ないぞ! 作戦】を決行するため、ようやく買い出しを終え、家にたどり着いたところだった。


インスタント食品や缶詰を買い漁り、飲み物も多めに購入し、入り口は大きい白い買い物ビニール袋の山となっていた。

「ふ~重かった~。手がちぎれそうだ。」


名前は 佐藤太郎 50歳 ×(バツ)1(イチ)独身で一人暮らしの私は、基本的には自炊しているのだがこの連休中は基本、米だけは炊くがおかずは簡単なもので済まそうと考えていた。

最悪 漬物だけでもいいし、もっと最悪焼き肉のたれやマヨネーズを掛けるだけでもいいかと考えていた。


どうせ家から出ないし、腐るものは卵だけだし、先に軽く掃除だけを済まそうと考え押入れを開けた。



どうしてこうなった?

どこだここは?

・・・・・・・・?

後ろを振り返ると、見慣れた自分の部屋がある。

しかし、前を向くと薄く黄色い膜が張られたような感じの先には森が広がっていた。

大きな黄色い風船の中にいるような感覚。

その外側の風景は薄暗い森。


「いやいやいやいや、見なかったことにしよう。」と私は押入れに戻るとダッシュで部屋に入り押入れを閉め、押入れのふすまにもたれ掛け おおきく深呼吸をひとつ。

『ふ――――、なんだったんだ!今のは?』

ゆめ?・・・では無いな。幻覚?かもしれん、最近疲れてたしなぁ。

だからこの連休中は誰にも会わず、どこにも行かず、家に籠ると決めてたのだから。


買い物に出ていく前に飲み残していたグラスに入れていた常温になってしまったコーヒーを一口飲む。

ふう―――


まず考えよう。


帰ってきた。

押入れを開けた。

そのあとが原因か??

中学になってからはやったことは無いが、小学生の頃は何度かやったなぁと思い出し押入れの上段に入れてある布団の上に乗ってみた。

ほんと、ただの気まぐれで。

こんなの誰にも見せられないが、今は一人だし誰も来ないしいいか。

まだまだ運動神経には少しだけ自信がある。少しだけだけど。

「おぉ!猫型ロボットみたいー」少しテンションが上がった。

――【亜空間収納】獲得しました。


『ん?隣のテレビかな?』

文化住宅だから隣との壁は薄い。テレビの音が聞こえてくることぐらいあるだろう。

「猫型ロボットって主人公のナビなのか?オペレーターなのか?それともただの友達?」

――【ナビゲーションシステム】獲得しました。

――【オペレーションシステム】獲得しました。

――【仲間機能】獲得しました。

――ナビゲーションシステム・オペレーションシステムを統合し、スーパーコンピューターシステム【那由多】に進化しました。


「なんか派手なバラエティ要素たっぷりのクイズ番組でも見てんのかな?

しかし、はっきり聞こえるねー。押入れってこんな感じだっけか?そうだったような気もする。」

そりゃ40年も前のことなんて忘れてるしね。

「最近は独り言も多くなってるなぁ」

まぁ、そこそこの年になってきたし、一人暮らしも長くなってきたから普通だよねー

――【言霊】獲得しました。これによりすべての系列の魔法が使えるようになります。

『・・・・もう突っ込まない。』


ん?奥の壁の柱になんか貼ってあるなぁと目を細めて見てみる。

普段は眼鏡をかけているが、最近は老眼も少し入ってきて近くのものを見る時なんかは眼鏡をはずしてみるようになってきた。

――視認システム【鑑定】【スキャン】獲得

【スキャン】を【那由多】に統合しますか?

Yes/No


いきなり目の前に表示される。

なんだ?と目を瞑り思い切り頭を振る。

Noと認識され表示が消えるが、目を瞑っている本人にはわからず消える。

目をこすりながら目を開け何か見えたところを確認するが何もない。

なんだったんだろう?でも、貼ってあるものも気になるので再度見てみた。


(おふだ)だったが、見たこともない文字が書かれていた。

梵字?ギリシャ文字?アラビア文字?を不思議に思いながら、手で触れてみる。

その瞬間!押入れの奥の壁が無くなり、外の風景が現れる。

「おお!?」

固まること10秒ぐらいだったか、やっと我を取り戻し頭だけ外に出し外を確認する。

周りには特に気配が無さそうなので一度外に出てみた。


で、今は部屋にいてコーヒーを飲んでいるわけだが、思考が追い付かない。

夢では無かった。靴下が土で汚れていることも確認。

たしか空気は澄んでいたような気がする。深い森特有の濃い咽かえる青臭い匂いのような感覚があった。


ドンドンドンドン!


押入れのふすまが中から誰かが叩いている。


ビクッ!

恐る恐る押入れに目をやる。

お化けか?


ドンドンドンドン!

さらに中から叩かれる。


もう何年もこの部屋に住んでいるが、こんなことは当たり前だが初めてだ。

開けるか?開けないか?

そう考えていると、何も音がしなくなった。

ん―――――、見なかったことにしよう。

というわけにもいかず、1時間様子を見てみたが、あれから襖を叩く様子も無く、開けられるわけもなく何も起こらなかった。

草野球で使っている金属バットを片手に少しずつ少しずつ音を立てないように襖を開けてみる。


まずは奥の壁の確認。

『うん、壁はある!』

『布団もさっきのまま』

『お(おふだ)は・・・・・無い!』

そのまま襖を全開にしてみたが、普段と何も変わったところは無さそうだ。

「ふー、何だったんだろう」

念のため押入れの下段も確認するが普段通り変わりなし。


まだお昼を少し回ったところなので、お化けが出るには早すぎる。

いきなり押入れを叩かれると心臓に悪いので、襖は開けたまましておいた。

パソコンで調べてみるが、よくわからない。

調べる時間はたっぷりあるし、まずは飯にしよう。

人に言うには情報不足だし、もう少し手がかりがほしい。


今日購入してきたインスタントラーメンがいいか。

基本は袋ラーメン派だが、うどんに関してはカップ派。

しかもきつねうどんが一番好きだったので、あったかいものを食べて落ち着こうと、きつねうどんのカップ麺にお湯を入れセットをしてできるのを待つ。

たまに様子を伺うために押入れを見るが変化が無いようだ。

出来上がったカップきつねうどんを、まずは食べよう。

暖かいものを食べると落ち着くだろうし、なにかいい考えもでてくるかもしれない。

油揚は最後に食べる派なので、まずは麺からフーフーしながら押入れに目をやる。

!!!!!!!


押入れの布団と布団の隙間から女の子がこっちを見ている。

動けない。金縛りとかの類では無いが、ビックリしすぎて麺を箸で持ったまま動けないでいた。

「ねーおなかすいたー、その油揚げが食べたいー、入っていい?」


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