協定
今回は前回出てきた新キャラ様のバックボーンに迫ります。
さて、新キャラ様は一体どんな背景を持ってきたのでしょうか。
ーーーアルフレッド・ツォルフェライン。
ツォルフェライン国第一王子でメイン攻略対象カシムの腹違いの兄。第一王子ながら母が身分の低い側室であったため継承権は第二位。艶やかな赤髪に青い瞳の美青年で隠し攻略キャラ。バッド、ハッピー、トゥルーエンドを全て攻略した後に逆ハーエンドをクリアした後さらに色々した場合、ようやくルートが解禁される、そう前世の友人から熱く語られた内容を必死でアイリーンは頭の中から引っ張りだした。
そんな、彼が、何故女に?
「‥‥‥‥‥驚くのも、無理はないだろう。あ、楽にしてくれて構わない。私も素で話そう。」
「え、その?一体どういうことで?」
お茶菓子を机の上に置き、用意されていて冷めてしまった紅茶を、落ち着くためにエリザベス飲み、問いかける。それにアルフレッドは、否アルシアは答える。
「実はアルフレッドという名は私の双子の兄のものでな、この国で双子は、特に男女の双子は不吉なものとされている。
故に私は生まれた時から存在を母によって隠され、数少ない母の味方であった侍女以外と会話をすることも、関わることも許されない、そんな生活を5つになるまで送っていた。」
殺されなかっただけ、私は恵まれていた。そういい、アルシアは悲しげに笑って顔を上げた。その直後に、彼女は顔を強張らせる。
彼女が見たモノ、それはミスシアート一家のガチギレ顔であった。
「‥‥‥‥それで?」
微笑みながらも手に持っている白磁のティーカップにひびを入れながら穏やかにエリザベスは先を促した。ーーーその後ろに鬼子母神が見える、ということは言わぬが花である。
「え、その、あれ?」
「遠慮をなさらないで?アルシア様、お話、全てお聞かせ願いませんでしょうか?」
要約すると『サッサと吐きやがれてめぇ。』ということだ。
その慈愛の中にある鬼女の顔にアルシアは固まってしまう。
それを助けたのはアイリーンだった。
「詳しく、お聞かせください。アルシア様。」
「アイリーン嬢。」
「ハッキリ言いますとわたくしたちは今日この日まで“アルシア”という名の王女がこの国にいたことを知りませんでした。ですから、知りたいのです。」
その、真摯な瞳に心を打たれたのかアルシアはゆっくりと喋り出した。
「‥‥14年前の、ことだ。兄上が頓死された。しかし、その時はすでにカシムが王妃様の子として生まれ、母上の立場は微妙なものになっていた。そこで‥‥」
つまり、己の立場のために一度切り捨てた娘を取り戻し、王子として育て上げよう、と考えたということだ。
「‥‥ふざけてる。」
吐き気がすると言わんばかりのレオンハルトの言葉にヒューズは頷いた。
「ふふっ‥‥‥‥‥。ふははははは!!」
パリンッと音を立ててエリザベスが握っていたティーカップは粉々に砕け散った。それを間近で見てしまったアルシアの顔色は悪くなるばかり。ふつふつと煮えたぎり始めた怒りを抑え、アイリーンは問いかける。
「‥‥‥‥それを、陛下達はーーー」
「あ、いや知らないだろう。第一“アルシア”という名の王女は存在していないことに‥‥」
そこまで言ってアルシアは黙り込んだ。ーー目の前の者達の異様な程の怒気を受けてしまったから。
「「「「ふ‥‥‥‥‥‥」」」」
「え?」
「「「「巫山戯るなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」」」」
「え、あの?ミスシアート伯爵殿!?ご家族の方も如何した!?」
「なぁにが国王よ!!自分の子供の性別ぐらい把握してなさいよ!!!」
「そもそも家族を見ていたのか!?亡くなられた王太后陛下に申し訳ない!!!」
「だからこんなこと起こるんだよ!!国の前に家族を守れぇぇぇぇぇぇ!!!!」
「第一そんな母親ってどうよ!?子供のことを思うならこっそり養女にでも何でもするべきでしょう!!」
「お、落ち着いてくれ!」
上からエリザベス、ヒューズ、レオンハルト、アイリーンの順に叫びながら憤慨しているミスシアート一家にアルシアは必死で落ちつくように訴える。
そんなアルシアの手をエリザベスはガッチリと掴んで微笑んだ。
「安心してくださいね、アルシア様。わたくしたちが全勢力をかけてあのクソ王子と国王を滅ぼしてさしあげますわ。」
「え、あの?」
「まったくだ、今はまだ一応あのボンボン共だけにしてくれようと思っていたし、王太后陛下への恩義もあったからがまんしてた。だがもういい。この国は終わるべきだ。」
「伯爵ぅぅぅぅぅぅぅぅ!?」
ヒューズの淡々とした物言いにアルシアは絶叫する。
次いで言葉を紡いだのはレオンハルトだった。
「あいつ‥‥‥‥‥!実の姉を害するとは‥‥‥‥!」
「え、だから私は男だと思わ(ry」
反論を満足にいうことができずに肩を叩かれる。
振り向くととても美しい、意地悪そうな笑みをたたえたアイリーンがいた。
「アルシア様、これからはわたくし達がどうにかします。どうか大船に乗ったつもりでドンとご安心ください。」
「大船ではなく戦艦に乗ったような気がするのだが!?」
アルシアの叫びを無視して4人は考え込む。元々地に堕ちてた王族への好感度は最早マイナスだ。遠慮する必要はもう一切ない。
「わ、私は、もしや間違った相手に助けを求めてしまったのか‥‥‥!?」
アルシアの苦労は、始まったばかりである。
はい、苦労人、アルフレッド王子改めアルシア王女がパーティーメンバーに加えられました。
最早エリザベスママンからしてみれば娘同然です。
一気に家族の結束が強固になりましたね。
先に言っておきますと、アルシアは国に滅びて欲しい訳ではありません。ただ、継げる存在がいなくなるので滅びるだろう。とおもっているだけです。