決意
今回は転生一家視点です。
感想でご指摘頂いたので、文体を変えてみました。
ーーよし、この国潰そう。
アイリーンの突然の朝食での宣告に、思わず皆目を丸めた。余談だがミスシアート家のご飯は基本お米だ。今日のメニューは白米に目玉焼きにコンソメスープ。
「‥‥‥‥突然どうしたんだ?お前は‥‥」
平和に、暮らしたいんじゃ無かったのか?
そう言う父、ヒューズにアイリーンは無言で手紙を差し出した。怪訝な顔をしながらも、ヒューズは手紙を受け取り、読み始めた。
ーーどのくらい、たったのだろう。不意にヒューズは顔を上げたーー満面の、笑みで。
付き合いが長い家族になら分かる。これは、ヤバイ。
「‥‥‥‥‥アイリーン。」
「はい。」
「お前が手を出す必要はない。俺が殺る。」
うっかり前世の口調に戻ってしまっているがそれに突っ込むものは誰もいない。
「‥‥‥なにが、書いてあったの?」
エリザベスの言葉にヒューズは紙を放り投げた。それを難なくキャッチして、エリザベスは読み始めた、そして破り捨てた。
「‥‥‥‥‥ざけんじゃねぇよあの愚王子がぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
叫びながら目玉焼きにナイフを突き立てる。ドロリと黄味が割れ、中身が流れ落ちるが誰も気にしない。皿まで割れてナイフが机に突き刺っていても気にしない。
「なぁにが『父上と母上に言われて仕方なくお前と婚約してやる。感謝しろ。拒否権はない。』よ!!!こちらこそ熨斗つけてお返し致しやがりますわぁぁぁぁぁ!!!!」
ザクザクとナイフで繰り返し卵に、しいては机に攻撃をエリザベスは仕掛け続ける。哀れ机。
「姉さんと、婚約‥‥‥‥?あの、似非王子が?」
ポツリ、とまるで地を這うような声が聞こえる。皆が一斉にその方向を見ると、顔を青くし、目が死んでいるレオンハルトがいた。ヤバイ、完全にイっている。
「は?するわけないでしょ?あんなモラハラ男。」
「ですよね。」
キッパリサッパリ言い切ったアイリーンの言葉に少しだけレオンハルトは回復した。輝かしいばかりの笑顔を見せている。若干荒んでいるように見えるのは、きっと気のせ‥‥
「にしても本当にふざけてるな‥‥‥‥父さん、母さん、姉さん、いい?殺って良いですよね?いい?分かりました。」
気のせいではなかった!!
「落ち着いて、私だって腹立ってるわ。けど、今は駄目。」
「何でですか?」
そう悲しげに訴える弟にアイリーンは少しだけ微笑んだ。しかし、目は全く笑ってはいない。
「あのね、その手紙の最後に、なんて書いてあったと思う?『貴様も貴族なら王家の命令に従え。さもないと貴様の家族が不幸な事故に巻き込まれるかもしれないぞ。』ですって。」
「なにそれ、思いっきし脅迫じゃないっ‥‥て、あらやだ破いちゃった。」
不愉快だと言わんばかりに紙くずを睨みつけるエリザベスにアイリーンは笑っていった。
「大丈夫。それは写しだから。」
「なら本物は取ってある、と?」
ヒューズの言葉にアイリーンは頷いた。
「第一、あの王子は馬鹿?こんなことしたら、“色々”と不味いって分かんなかったのかしら?」
呆れたように紙切れを見下ろしながらエリザベスは呟く。
「あの似非王子は何だかんだ言って自分の思い通りにならないことはないって素で信じているような奴だから。」
嘲笑いながらレオンハルトはエリザベスの問いに答える。
「うっわ最低。」
とても貴族らしくないその会話に恐らく突っ込めるものは誰もいないだろう。ズズッと音を立ててアイリーンはスープを飲んだ。
「‥‥‥と、言うわけで、私は宣言通りに、あいつを滅ぼす。あいつだけは、絶対に許さない。」
自分だけならまだいい、だって、自分が切り捨てられるのはゲームのシナリオ通りに進めば必ず起きたことなのだから、没落のために頑張れた。けど、
「あいつは私の逆鱗を素足で踏み込んだ挙げ句に荒らし回った。だから、私は、あいつに復讐するために、夢を捨てる。」
家族を盾にとり、自分に夢を捨てさせた罪は重い。
そういって、アイリーンは凄絶な、憎悪に濡れた笑みを浮かべた。
「姉さん、キレてるとこ悪いけど、言葉の使い方間違ってる。」
正確には逆鱗に触れて土足で踏み込む、だよ。
そう、レオンハルトの訂正に少しだけ場が和やかになった、その時だった。
「だ、旦那様!!大変です!!」
「‥‥‥‥どうした。」
突然、外に待機させていた侍女が顔を青ざめて飛び込んできた。それを見て、ヒューズは眉をひそめる。
「だ、第一王子様が、アルフレッド様が、旦那様とお嬢様にお会いしたいと、参られています!!!」
歯車が、ゴトリ、と音を立てて動いた、気がした。
なんか、展開が早いかも‥‥‥‥‥。
‥‥にしても、カシム馬鹿ですね。書いてて腹立ちます、こいつ。