転機:中
お久しぶりです‥‥。
ようやく少しだけ時間ができました‥‥。
ほんとはもう少し早く投稿するはずだったんですが、操作ミスで全て消えてしまって遅くなりました‥。
本当に申し訳ありません。
「‥‥いま、なんて、」
ルキンソンの言葉に、アイリーンは顔を青ざめさせて問い返した。その後ろでは不快そうに顔を顰めるゼクスとレオンハルトがルキンソンを睨みつけている。
「‥‥ですから、彼はカシム殿下の不興を買い、側近を外されました。」
「そこじゃねぇ。巫山戯ているのか。」
わざととぼけたルキンソンの言葉をゼクスはバッサリと切り捨てる。その言葉に、ルキンソンは大きくため息を吐いた。
「‥‥二度も、説明するのは嫌なんですけどね。まあ、いいでしょう。ーーことの発端は2ヶ月前、リヒャルトが行方知れずとなって3日後のことです。突然ハルドゥーク男爵令嬢‥‥いえ、あの雌豚が『リヒャルトさんがいなくなったのはミスシアート家のせいです。』とカシム殿下にのたまったことから始まります。」
「‥‥それで?」
「急かさないで下さいよ。‥‥どこまででしたっけ。ああ、ーー雌豚の証言をバカ正直に信じたカシム殿下は私たちに証拠を集めることを要求してきました。ミスシアート家を陥れるために、です。
しかしいくら探してもそんな証拠など出てこない。それに焦ったカシム殿下はミスシアート家の悪評を流すことにしました。ご丁寧に偽りの証拠まで用意して。それに待ったをかけたのが彼、レオーニです。」
そこまで一息に喋った後、いつもの飄々とした表情を崩し、泣きそうに顔を歪めた。声を掠らせながら、彼は続ける。
「‥‥ほんとにバカみたいに、まっすぐこいつはカシム殿下に反論しました。『ここまで証拠を探しても何も出てこなかったのに、なぜミスシアート家を貶めようとする? 寧ろ、証拠を探せば探すほど、シュトラウスが裏の組織に繋がっていたという今まで知りもしなかった情報が沢山出てきた。これは最早俺たち学生の手に負えることではない。陛下に直訴し、しっかりした公的機関に任せるべきだ。‥‥そもそも、ユリアはどこからミスシアート家が関わっているという情報を手に入れたんだ?』とね。そこからはまあ、察してください。」
そう言い終えるが否や、ルキンソンは下を向いて黙り込んだ。アイリーンの顔は青を通り越して白くなっており、ゼクスは決まり悪そうに頭を搔きむしる。そんな中、レオンハルトが動き出した。
「‥‥失礼します。」
そう言うやいなやレオンハルトはセドリックの服を脱がしにかかる。一瞬、時が止まった。
「え、ちょ!?」
「若様ぁぁぁぁぁぁ!?」
「!? 止めておいたほうが‥‥!」
慌てて止めにかかる三人を無視してレオンハルトはセドリックの服を剥ぎ取った。そして、アイリーンは息を呑む。そこには、
「‥‥だから、止めておいたほうがよいと、言ったでしょう‥‥!」
そこに、あったのは、あまりにもひどい暴力の痕であった。青を通り越し、紫色に変色した腹部に火傷によって引き攣った皮膚、無数の血が滲む傷跡が痛々しく存在を主張している。
「‥‥傷があることは予想してたっすけど、ここまでとは‥‥。」
「ハッキリ言うと俺もここまでとは予想していなかった。‥‥こことここ、骨に罅が入っている。なんでこんなになるまで放っておいた。」
戸惑うように呟くゼクスにレオンハルトは答えながら治療を開始する。レオンハルトの問いかけに、セドリックは自嘲しながら答えた。
「‥‥このぐらい、たいしたことない。大した理由も無しに婚約者を捨て、確固とした証拠も無いのに一人の令嬢を貶めた。レティシアやアイリーン嬢が受けた屈辱に比べれば、この程度など。」
「いや、そこまで私望んでない。」
そりゃ確かに腹立ったしいつか絶対復讐してやるとは思っていたけどここまではさすがにない。思わず素で返答してしまったアイリーンだが幸か不幸かその言葉はセドリック達には届いてはいなかった。
「‥‥大人しくしてください。」
これまた姉の言葉が聞こえていなかったレオンハルトが高性能治癒能力向上術をセドリックにかけ始める。痣が少し薄れた、という所で術を止め、口を開く。
「ひとまず一気に治ったら怪しまれるから骨と内蔵のダメージのみを癒しておいた。あとは自分の治癒能力でどうにかしろ。」
ゆっくりと立ち上がりながら呟かれたその言葉にセドリックは戸惑いながらレオンハルトを見上げる。足元に座っているセドリックを睥睨しながらレオンハルトは再び口を開いた。
「勘違いするな。お前が姉さんにしたことを忘れた訳じゃぁない。絶対に、許さないし、許せない。」
「なら、なぜ‥‥?」
「簡単なこと。」
セドリックの言葉を鼻で嗤いながらレオンハルトは続ける。いつも通りの無表情にほんの少しの怒りと、悲しみを滲ませながら。
「‥‥謂われのない暴力で苦しんでいる人間を見捨てるのは、お前たちと同じだろう。それに、お前は身を挺してミスシアート家を貶める噂を可能な限り広まらないように手を尽くしてくれた。ーーこれは、その礼だ。他意はない。」
そう言いきると、レオンハルトはゆっくりと背を向けて歩きだした。まっすぐに去っていくその背中を、セドリックは呆然としながら見つめる。
レオンハルトがいなくなった頃を見計らい、アイリーンはセドリックに話しかけた。
「‥‥わたくしからも、お礼を。ミスシアート家を守ってくれて、ありがとうございます。‥‥そして、気づくのが遅くなって、申し訳ありません。」
「‥‥!? 俺は、当然のことをしたまでで‥‥! 寧ろ、俺のほうがあなたに‥‥!」
手を前に出し、アイリーンはセドリックの発言を遮った。そして、ニッコリと微笑んだ。
「罪悪感を抱いているのならば、わたくしの言うとおりに動いてくださらない? わたくしからしてみても、お母様のかつての部下の息子を見殺しにするのは心苦しいの。」
その言葉に、戸惑いながらもセドリックはゆっくりと頷いた。満足げに微笑みながらアイリーンはルキンソンとゼクスに話し掛ける。
「まずは、レオーニ先輩の安全を確保しなくては、ね。まず、トゥンヤイ先輩はレオーニ先輩を彼のお父上に引き渡す準備を。ゼクス。あなたはその間のレオーニ先輩を守りなさい。」
「‥‥了解しました。」
「分かりました。最善を尽くしましょう。‥‥アイリーン殿、ありがとうございます。」
ゼクスとルキンソンの言葉に頷いて、アイリーンは歩き出した。
ーーその身に、今までに感じたことのない激情を宿しながら。
ようやくセドリックと和解?しましたね。
また次の話を投稿するのに時間がかかると思います。大学の先生のレポートチェックってなんであんな厳しいんでしょうかね‥‥。




