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親子

今回は新キャラ出ますよー。


 「ハハハハハハッ!!」


 「アッハッハッハッ!」


 目の前で笑い合う二人の男。しかしその空気は不穏で、今にも互いに襲いかかる寸前に見える。

一人は黒髪に紙のように白い肌を持つ人形めいた美しい黒装束の男。

一人は白いボサボサの髪に眼鏡を掛けた精悍な顔つきの執事服の男。

 アルシアはそんな二人から若干距離を取り、目を逸らしている。まさか、ヒューズに連絡をとったと思ったらこん変な男がきたのだから、当然だろう。「私は、ここにいて良いのだろうか。」と遠い目をしながらアルシアはこの話死合いに参加している。その姿は実に涙を誘うもののだった。

 一方のアイリーンとレオンハルトはゼクスと男二人の胃に悪い光景を間近で見ながら静かに震える。うん、


 ど う し て こ う な っ た ! !

え、なんでこの人が来るの!? 頼むから他の人にしてよ!! ゼクスとこの人会わせるとか嫌がらせかこんちくしょう!!


 「あ、ヒューズから伝言。『今回勝手に危険な所に突っ込んで行ったんだから少しぐらい苦労して反省しろ、そして二度とすんな。』だって。全く、まるで僕が厄介者みたいな言いぐさだよね。失礼しちゃう。」


 「こんのクソ親父!! 旦那様を呼び捨てにすんじゃねぇ!! そしてテメェは間違いなく厄介者だ!! 後目ぇ開けんじゃねぇよ!! テメェが目ぇ開けると軽くホラーなんだよ!!」


 くるりとこちらに顔だけ向かせ、カッといつもは閉じている左右色違いの瞳を開き、まるで同意を求めるかのように微笑みながら尋ねる男。しかし目は一切笑っていない。その様は不気味で、それを見てゼクスは吠える。

 ‥‥見えないかも知れないが、この二人は親子だ。義理とはいえ。男の名前はエレボス・アランソン。ゼクスの育ての親であり、様々な技術を教えた師匠でもある。


 だが、この二人、ものすごく、仲が悪い。


 「全くさー、ゼクス。君はほんとーにダメな子だねー。証拠品虫の息にしちゃーダメでしょ。つーかするなよ。僕の楽しみ無くなる。」


 「テメェの“楽しみ”はどーせ拷問じゃねーか!! なんで俺がテメェなんぞのためにんな気遣いしなきゃならねーんだよぉ!!」


 片や不気味に笑いながら、片や額に青筋を浮かべながら互いを罵るその様子にアイリーンは半泣きになる。レオンハルトはどこぞへ魂をトリップさせており、アルシアは「‥‥あれ? 私は確か部外者なはず‥。」と呟いていた。安心しなさいアルシア。あなたはもう立派な身内。ようこそ我が暗部へ。

 そしてもうなんでもいいから誰かどうにかしてくれ。父よ、なんでこんな奴を隠密頭にした。いつか裏切りそうで怖い。


 「裏切らないよー? ヒューズが僕を失望させない限り。」


 まるで心を読んだかのようにエレボスは笑った。下を向いていた顔を上げると、信じられないほど近くにエレボスの顔がある。

 黄金と紫闇の瞳を細めて、笑うエレボスは信じられないほど美しいのに、どうしようもないほどに怖気がした。


 「いちいちいちいち近ぇーんだよテメェはぁ!!」


 ドゴォ!! という音とともにゼクスの鉄拳がエレボスの頭にめり込んだ。おいお前絶対肉体強化魔法使っただろう!!


 「全く、手癖悪いな-。親の顔が見てみたいよ‥‥て、僕か。」


 そして何事もないように立ち上がるエレボス。無傷で、しかもダメージが入ったようには一切見えない。


 「あれー。おかしいーなー。ゼクスの肉体強化魔法で強化した拳骨って確かワンパンでドラゴンを沈めるはず‥‥。」


 「姉さん、落ち着いてくださいそして帰ってきてくださいお願いだから!!」


 「わ、私は何も見ていない、何も見ていない!!」


 真っ青になって震えながら言葉を交わす姉弟に必死で現実からフライアウェイしようとするアルシア。それらを無視して親子(エレボスとゼクス)は会話をする。


 「まあ、色々言いたいことはあるけどそれは置いといて、情報を交換しよう。」


 「あーそーだな。言いたいことはたっくさんあるけど。」


 情報交換、その言葉にアイリーン達は一斉に気を引き締める。お互いに情報は毎日交換しているものの、やはり隠密独自の情報というのも存在する。生憎アイリーン達はそちらの方に詳しくは無かった。


 「一応確認だが、敵対してる貴族は御姫さんの話からもシュトラウス公爵。味方はレオーニ騎士団長。だけどあくまで個人的な味方だから組織が味方だと思わない方がいい。今の騎士団のほとんどは貴族派で一枚岩とは言い難い。国王と宰相は一応中立。そして王族派と貴族派では貴族派が優勢。‥‥だよな。」


 「うーわさすが僕の義息子。賢い賢い。‥‥けどね、それだけじゃあないんだ。」


 その言葉に心底嫌そうに顔をしかめながらもゼクスは首を傾げる。そして、アイリーン達も。

ーーそれだけじゃあない? どういうことだ?


 「それだけじゃあない、とはどういうことだ?」


 そう尋ねたのは、アルシアだった。不可解そうにキョトンとしてエレボスに問いかけている。勇者がここにいる。エレボスと当のアルシアを除いた皆の心がその瞬間一つになった。あのエレボスに質問することが出来る人間がいるだなんて。


 「あーうん。そうなんだよねー。アルシアちゃんだっけ?」


 「あ、はい。」


 あのエレボスが、優しいだと‥‥!?

アイリーンとレオンハルトは呆然とそれを見つめる。雇い主の子供(じぶんたち)にすら優しくしたことないのに!? 思わずゼクスを見ると物凄い顔が青くなっていた。大丈夫か。


 そんなことを気にもせずにエレボスは続ける。半死となった男達を担いで、微笑みながら、これは、分かったばっかだからヒューズにも教えていないんだけどねー。と言葉を紡ぐ。


 「ツォルフェラインには、存在を抹消された落胤がいるんだよ。先々代の落胤でねー。認知はされていないけど。ーー名前は、アーサー、アーサー・ハルドゥーク男爵。

‥‥あの、ユリア・ハルドゥークの、実の父親だよ。」


 色違いの瞳を楽しげに煌めかせながら、エレボスは人形のような笑みを浮かべた。


 

中々良い性格してますねエレボスさん。

そして隠密頭なのに忠誠心あるのでしょうかこやつ。

ようやく黒幕の名を明かせました。

これからどう絡めるか‥‥。

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