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襲撃

 ーーここは、どこ?

ぐらぐらとする頭を覚醒させて、アイリーンは目を開けた。

 開けたのにも関わらず、相も変わらず暗い世界が広がっていることから、目隠しをされていることを理解する。

 身じろぐしてみると、手首や足等に鈍い痛みが走った。

そのため縛られていること、口に異物の感覚があることから何か布のような物で物理的な口封じをされている、ということも理解する。

 これはーー


(‥‥誘拐、ね。)


 心の中でハアッとため息をついて脱力する。

ーーそもそも、何があったのか、痛みを訴える後頭部を無視しながらアイリーンは思考の海に沈んでいった。







 ーードガァァァン!!

アルシアとレティシアが離れていって一息ついた時、それは起こった。

 至近距離で爆音を聞いてしまい痛む耳を抑えながらそれを見据える。

 間一髪レオンハルトが張ってくれた結界のお陰で怪我人は一人もいなかった、というのが不幸中の幸いだった。


 「姉さん!! 後ろに下がっていてください!!」


 その言葉に頷いて、アルシアとレティシアの方へと走り、合流する。

 そこでは既に、混乱状態に陥っていた住人達を避難させるために指示を出していたレティシアがいた。

 住人達は慌てながらも信頼する“レティ”の指示のせいか思ったよりもスムーズに動き始めている。


 「アルシア!!」


 「!? アイリーン! 一体何が‥‥!」


 「細かい事は後!! ‥‥くるわ!」


 何が、という前に“それ”は来た。

ザクリ、ザクリと音を立てて現れたのは一匹の狼。

 黒い毛並みに赤い文様のような炎のマーク。牙が覗く口からは青い炎が零れ、血のようなその瞳はまるで飢えているかの如くぎらついている。


 ーー地獄狼(ヘルハウンド)

一般的にそう呼ばれる魔物が、そこに姿を現していた。


 「‥‥!?」


 「な、なぜ‥‥第二接触忌避魔物が、ここに‥‥!?」


 驚く余り呆然とするレティシアに信じられないとばかりに呟くアルシア。


 ーー接触忌避魔物とは、単純に手を出してはいけない魔物の総称である。

第三~第一まで存在し、弱い物でも一軍隊を壊滅する力を持つ。

 目の前の地獄狼へ第二、つまり、間違っても相対してはいけないレベルの強者である。

しかしーー


 「‥‥こいよ犬っころ。」


 ミスシアート伯爵家には、そんな物関係ない。


『邪魔するモノは容赦するな。』


 邪魔なモノは排除するだけ。

その言葉を理解したのか、ぐるぐると威嚇していた地獄狼はレオンハルトに飛びかかる。


 ーー勝敗は、一瞬だった。

飛びかかってきた地獄狼を、レオンハルトはたわいもなく切り捨てた。

ーー否。

 “ねじ切った”。


 触れもせず、レオンハルトは地獄狼を降したのだ。

一瞬の静寂。

ついで、信じられない程の歓声に包まれる。


 「兄ちゃんスゲぇな!!」


 「格好良かったよ!!」


 住人達はレオンハルトを称えるが、レティシアとアルシアからしてみれば信じられない事であることは想像に難くない。


 「ア、アイリーン、一体なんで‥‥?」


 「どんな魔術を使えばああなる!?」


 困惑げに呟くアルシアに興奮気味に詰め寄るレティシア。アイリーンは弟にすべてを投げ打った。


 「疑問はあいつに聞いて。」


 鼻息荒くレオンハルトに突撃するレティシアに何か言いたげに顔を歪めるアルシア。

 しかし物凄い剣幕でレティシアに迫られ引き攣った顔をしているレオンハルトを見てそれを落ち着かせるためにアルシアは二人の下に歩いていった。


 「後で、聞かせて貰う。」


 そう言うことを忘れなかったのは流石というか何というか。

ため息をつきつつ人混みに紛れた、その時だった。

 後ろから強烈な打撃を受け、アイリーンの意識は闇へと落ちたーー






 全てを思い出したアイリーンは再びため息をつく。

ーーそりゃぁ、色々こうなるために動いたけど‥‥。


 なんだか、理不尽だ。

そう思うとふつふつと怒りがこみ上げる。


 (私をこうした人間、覚えてなさい。)


 ギッタギタのボッコボコにしてくれる。

そう思っていると、声が聞こえた。


 「‥‥目覚めたか。」


 聞き覚えのあるその声に、苛立ちがます。

声を出そうにも、布を詰められているため言葉を発することは不可能だ。


「‥‥っ!」


「ああ、外してやれ。」


 それを察したのかその声の主はそう誰かに命じた。

布を外され、目隠しをどかされる。

光になれるため、目を細めて、周囲を伺う。


 ーーそこに、いたのは、


 「‥‥ふん、いいざまだな、アイリーン嬢。」


 紫の髪を揺らしながら、灰色の瞳を細め、ふてぶてしく笑う、リヒャルト・シュトラウス、その人だった。


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