秘密
前回の続きです。
感想でも散々言われていますが、今回で迷走は終わりです。
どうしても、彼のバックボーンや心理。そしてそこに至るまでを書いておきたかったんです。
グダグダになってしまっている自覚はあります。
しかし、ここを書かなくてはどうしても先に進むことができなかったのは作者の力量不足です。
大変申し訳ありません。
全て書き終わったらしっかりと見直し、物語を修正したいと思います。
次回からはアイリーンたちの視点に戻ります。
ーーあなたは、もう少し賢く、あるいは、愚かに生まれるべきでした。‥‥さあ、これをお飲みなさい。あなたは、
生まれるべきではなかった。
そういって、無理矢理飲まされた水の味は、決して忘れない。
飲ませた老女の顔も、決して忘れることが出来ない。
その言葉は、いつまでもいつまでも、自分を縛る鎖のようにゼクスには思えた。
「ゼクス殿? 如何した。」
「!? あー。殿下か。悪い。気付かなかった。」
顔を除きこんで心配そうに尋ねるアルシアにゼクスは笑みを貼り付けて答える。ちなみに今日のアルシアは珍しく女物の服を着ている。
アルシアに続いてこちらを見やるのはアイリーンだ。
「ちょっとゼクス、あんた最近ぼんやりしてるけど大丈夫なの?
今日はレティシア様が下町を案内してくれる日なのよ?」
口調や態度はきついものの、その瞳にはこちらを心配そうに見つめる光があった。
「‥‥大丈夫っすよー。ちゃーんと休んでるんで。俺が無理する奴にみえるっすか?」
大丈夫、いつも通りだ。
そう思い、いつものように笑いながら問うとアイリーンは驚いたように目を見張る。
「見えるわよ? あんたいつも笑ってるから判断しづらいけど、今日は少しやつれてる。」
「‥‥へ?」
余りのことに呆然としてるとアイリーンは顔を赤くしてさっさと行ってしまう。
「ま、待ってくれアイリーン!!」
慣れない女物の服を着ているからか、動きにくそうに走りながらアルシアはアイリーンを追いかける。
すると、後ろから肩を叩かれた。
「ボンヤリするな。ニート執事。‥‥姉さんが心配してるから、ちゃんと休め。」
いつもは問答無用で上級魔法をぶっ飛ばすレオンハルトも心配するレベルで体調が悪く見えるらしい。
(‥‥これでついていったら速攻で帰されそうだな。)
はぁっとため息をついてゼクスは人混みを縫いながら歩く。
見つからないレベルでついていこう。
ーー寧ろ今休んだら、昨日のことを思い出してしまいそうで、怖かった。
††††††††††††††
ガンッ!!
ルキンソンの言葉に反応し、首を締める。
後ろで喚いているハロルドのことなどどうでも良かった。
ルキンソンの体を壁に打ちつけ、低い声でなぜ、分かったのかと聞くと、ルキンソンは苦しそうに顔を歪めながら答えた。
『わた、したちユーイェン王家は、魔力の量や、色、を視ることが、できる。それに、あなたの、相が、王家のそれ、だから。』
その言葉に、納得した。
ゼクスが“アルフレッド”だったころ、ユーイェン公国の王子とは冷戦協定のパーティーの時会っていた。
その時の、王子がルキンソンだった、それだけのこと。
二回目に会ったとき、絶対に変わるはずの無いそれが変わっていたから、そう推理したのだと。
そして、そのことを誰にも言ってないことを確認し、誰にも言わないことを約束させ、昨日は別れた。
『それにしても‥‥“紫陽花の君”と呼ばれていたあなたが、随分変わりましたね。』
紫陽花の花言葉は『高慢』『自信』『あなたは美しいが冷淡だ』。
かつて、そう呼ばれていた自分が、たった一人の少女のために、本気で怒る。
ーー昔では考えられなかった。そういって笑うルキンソンに、何も答えることができなかった。
ーー自分は、信じられないぐらい弱くなった。
(御姫さん、前、言いましたよね?)
眼下で買い物を楽しむアイリーンたちを見守りながら、木の上でゼクスは問う。
(『没落しても、仕えてくれる?』って、寧ろ、御姫さんは。)
小物を熱心に見ているレオンハルトに可愛らしい物を薦めるアイリーン。
楽しそうに笑う妹を見ながら、ゼクスは微笑む。
ーーその笑顔は、まるで泣いているように見えた。
(俺が“誰”だと知っても、そばにいさせてくれるんですか?)
その問いに答えるものは、誰もいない。




