企みの夜
今回は敵サイドの男どもです!!
ルキンソン視点ですけど。
今まで2文字でサブタイトルでしたがこれから敵サイドの時は2文字以上使います。区別のために。
ーー無駄に豪奢な部屋に、彼らはいた。
一人は淡い金の髪にモスグリーンの瞳の美男子。
一人は刈り込んだ焦げ茶色の髪に緑の瞳のやや強面の美青年。
一人は長い水色の髪に金の瞳の穏やかな笑みを浮かべる美青年。
一人は紫色の髪に灰色の瞳の神経質そうな美青年。
皆うざったいぐらいきらきらしいイケメンズだ。
ここにアイリーンたちミスシアート一家がいたら皆揃って漆黒のオーラを撒き散らしたことだろう。
‥‥それもその筈、ここにいるのは基本全員ユリアの取り巻き達だ。
「‥‥遅い、デニーはどこにいる。」
苛々しながら金髪の男、この寮室の主である愚王子ことカシムが呟く。
「先程ルドロス師に呼ばれていた、そう申し上げた筈ですが?」
「‥‥分かっている。」
ルキンソンが答えると少しバツの悪そうな顔をしてふいっと金髪の男、カシムは横を向いた。
そのいささか子供じみた態度にルキンソンは苦笑する。
‥‥この王子は良くも悪くも子供のように純粋だ。
それを見て焦げ茶色髪を持つ男、セドリックは複雑そうに顔をしかめ、紫色の髪の男、リヒャルトは不機嫌そうに顔を歪めた、
その瞬間、部屋のドアがバンっと音を立てて開き、デニーと呼ばれた少年が姿を現す。
「あーもう!! あのおばさん面倒くさい!!」
肩で大きく息をしながら入ってきたデニー間髪入れずにリヒャルトとカシムは声を張り上げた。
「遅いぞ!」
「時間は厳守しろ。」
二人に非難され、一瞬身じろいたデニーだが次の瞬間にはキッと眥を吊り上げて反論する。
「文句はそこの陰険眼鏡にいってよ!!」
そういってビシッとデニーはルキンソンを指差した。
はあ、とため息をついてルキンソンは読んでいた魔導書を閉じて眼鏡を外す。
「私はあなたに忠告しただけです。早めにルドロス師の所にいかなかったあなたが悪い。」
「うぐっ‥‥!?」
悔しそうに唇を噛み締めるデニー。
端から見れば美少女が屈辱に震えている図だ。
「どうでも良いから早く座れ。今から話し合いを始める。」
カシムが発した言葉に、その場は一気に緊張した空気に包まれる。
渋々とデニーは席に着く。それを確認すると、カシムは口を開いた。
「‥‥まあ、知っての通り、俺とあの女は婚約を結ばなくてはいけない。あのアルフレッドの婚約者にあいつが収まったせいで次の国王をあいつに、という動きが強まっているからだ。」
秀麗な顔を憤怒と悔しさに歪ませながらカシムは口を開いた。
「ユリアに嫌がらせしただけじゃなく僕たちの地位を脅かすとはホンットいい迷惑だよね。」
「全くだな。」
「‥‥‥‥。」
カシムの言葉に同調するデニーにリヒャルト。そんな彼らになにか言いたげな顔をするセドリック。
それを見てルキンソンは唇に手を中てる。
「どうしたトゥンヤイ。」
「‥‥いえ、なんでも? しかし驚きました。ミスシアート家がそこまで権力を持っていただなんて。」
ニコリ、と笑いながらルキンソンは言葉を紡ぐ。
その言葉に、セドリックが答える。
「‥‥おまけに夫人は軍部に異様に顔が利く。事実上この国を牛耳っていると言っても過言では無い程の力をミスシアート家は持っているな。」
「‥‥あの女の父親が変な声明を出したせいでこの国は混乱状態だぞ。」
苦々しげにリヒャルトは呟いた。
ーーヒューズの一言は驚異的なスピードで貴族の情報網を駆け抜け、軽い恐慌状態に貴族達を陥らせている。
まともに動いているのは悲しいことに一つも無い。
「‥‥こうなったのも、あの女のせいだ。」
憎々しげに呟くカシム達三人を見て顔を下に向けるセドリック。
ルキンソンは再び唇に手を当てて考え込む、
(‥‥どうやら、誰かが何かをしたようですね。)
セドリックはこの中で最もユリアを妄信していた男だ。その男がここまで揺れていると言うことは、“誰か”が彼に“何か”言ったということ。
(‥‥面白そう、ですね。)
調べてみる価値はある、そう口の中で呟いて、ルキンソンはクスリと笑った。
空には月が無く、新月の闇に覆われていた。




