断罪
はい、新連載始まりました。
有名な悪役令嬢ものです。自分なりに楽しく書ければなぁ、とおもっています。
「アイリーン・ミスシアート!!お前を私は断罪する!!」
とうとう、きた。少女は静かに頭を下げる。齢五つの時から婚約をし続けて来た、彼からその言葉を聞く時が。
「‥‥‥‥個人的な嫉妬に狂い、一個人である男爵令嬢にした数々の悪行!!それらは全て、このカシム・ツォルフェラインが把握している!!貴様は私の妻に相応しくない!!よって‥‥‥‥」
そう言うと、彼、カシム・ツォルフェラインは言葉を一つため、愉悦に満ちた笑みを浮かべた。
「ここに、私とこの阿婆擦れとの間にあった長年の婚約関係を破棄することを明言する!!そして!」
そう言うと、彼は、ツォルフェライン国の第二王子カシム・ツォルフェラインは一人の少女に顔を向けた。
「私はこの、ユリア・ハルドゥークと婚約を結ぶことを明言しよう!!」
その言葉を聞くと、うれしそうに破顔した少女ーーユリアはカシムに抱きついた。見目麗しい男女が抱き合っている。それだけなら、とても美しい光景。しかし、その後ろには、ボロボロにされたもう一人の少女ーーアイリーンが居なければの話。
「‥‥‥‥さっさと出て行け!!貴様の顔など、二度と見たくもない!!」
すると、凛とした、涼やかな声が響いた。
「‥‥‥‥‥それはこちらの台詞だ。王子。」
「「!?」」
顔を上げると、濃い緑の髪に金色の瞳を持つ、無表情ながら、甘い顔立ちの青年がそこに立っていた。
「レオンハルト‥‥‥‥‥。」
小さな声で、アイリーンは弟の名を呼ぶ。
すると、その秀麗な顔を歪めてレオンハルトは答える。
「‥‥‥‥大丈夫ですか、姉上。」
「え、嘘‥‥‥‥ねえ、なんで?レオン‥‥‥‥!!」
目に涙をためて、ユリアはレオンハルトに訴える。
「黙れビッチ。よくもその薄汚い姿を俺の前にだせたな。」
「なっ‥‥‥‥‥!」
好意を寄せていた美男子からの売春婦呼ばわりに、ユリアは顔を蒼白にさせる。
「レオンハルト!!ユリアになんて言うことを!!」
カシムの言葉に回りを取り巻いていた三人の男子がいきり立つ。
「所詮、あの女の弟でしたか‥‥‥‥!!」
「いくら、レオンハルトでも、許さない‥‥‥‥‥!!」
「‥‥‥‥殺す。」
各々の言葉をレオンハルトは鼻で笑って応えた。
「‥‥‥‥‥‥ハッ!受けて立とう‥‥‥‥‥!!」
次々と殺意と悪意をむき出しにして襲いかかろうとする男ども。それに、レオンハルトは応戦しようとする。それを止めたのは、ボロボロにされた令嬢、アイリーンだった。
「‥‥まって。」
「どうしたんですか?姉上。」
まるで先ほどの冷笑を嘘のように消して、レオンハルトは最愛の姉に語りかけた。
「わたくしは、カシム殿下に婚約を破棄されたのですわよね‥‥‥?」
そう、弱々しげに赤い瞳を潤ませてアイリーンは少女は尋ねた。
「ハッ!やっと気づいたか!」
機嫌良さそうに、アイリーンを蔑むかのように、王子達は嗤う。しかし、次の瞬間には、彼らの笑みは凍りついた。
「ええ、それで?」
「わたくしは、もう解放されても良いのですね。」
そう、アイリーンが言葉を発したのだから。
「ええ。」
その言葉に、優しげに微笑みながらレオンハルトは頷いた。
「どういうことだ!!」
怒りに顔を歪ませて、カシムは叫んだ。
「~~~~~~~~~!!!しゃぁ!!ようやく解放されたぁ!!自由だぁぁぁぁぁ!!!!!」
「「「「「!?」」」」」
突然大声を上げて、嬉しそうに‥‥‥‥本当に、嬉しそうに雄たけびを上げる伯爵令嬢の姿にものの見事に皆凍りつく。
「‥‥‥‥今まで、よく頑張りましたね。姉上。」
「もうホントつらかった!!慰めてレオン!!」
「喜んで。」
そういって、まるで愛しい恋人に微笑むかのように甘やかにレオンハルトは微笑みその体を労るかのように抱きかかえた。‥‥‥‥惜しむらくは相手が実の姉というところだろう。
「なっ‥‥‥‥‥!?」
泣きわめいて無様な姿を晒すかと思われた元婚約者の喜ぶ姿にカシムは呆然とする。
「あらあら殿下!!こちらのことは気にせずユリア様と何時までも仲むつまじく暮らしてくださいね。わたくし達のことは、お気になさらず。」
「既に先程の発言はバッチリ録音魔法にて収録してあります。今頃陛下達の耳にも入っているとこだと思いますよ?‥‥‥‥‥姉上と婚約したあげく捨てたんだ。身をもってその罪を償え。二度と姉上と会えると思うな似非王子。」
そう、2人は言いきるとにっこりと極上の笑みを浮かべて囁いた。
「「それでは皆様。皆仲良く地獄に堕ちろ。」」
そう言い、嗤いながら、姉弟は颯爽と学園の生徒全員の前から姿を消した。
こんな感じで始まります。こんな主人公達ってどうなんでしょう。