ヒーローインタビュー
□
「放送席ー!放送席ー!それでは今日のヒーロー、蒔田比呂さんです。蒔田さん、やりましたね!」
「ありがとうございます」
「それにしても…すっごい負けっぷりでした。今のお気持ちをお聞かせください」
「そうですね…もう悔しくてね。しばらくは頭がぼうっとして…すいませんよく覚えてません」
「ええ、そうでしょうね。今年に入ってこれで16敗目です。今日の敗因をご自身はどうご覧になっていますか?」
「まぁ…単純に毎日の積み重ねが今日の結果につながってるんじゃないですか?」
「なるほど。こうも負けが積み重なると、流石に気持ちにも揺らぎはある…?」
「そりゃあ、ありますよ! もしかしたらこのままずっと。勝てないんじゃないかって」
「それでも蒔田さんは戦うんですか? このままずっと勝てないのに?」
「戦うのはやっぱり楽しいんですよ。負ける悔しさ以上に。俺はむしろ夢中になれなくなった瞬間が一番怖いですね」
「敗者がご立派な意見ありがとうございます。最後に応援してくれたファン、ご家族友人の方々に一言メッセージ下さい」
「ええ…次は負けません」
「ありがとうございました。今日の敗者、それでも僕にとってはヒーローの蒔田比呂さんでした。放送席にお返しします」
□
「……ありがとうございました。16敗目を喫した蒔田比呂さんのヒーローインタビューでした。さて解説の蒔田さん。本日の敗戦を振り返っていかがですか?」
「そうですねえ…やはりポイントは6回、人生の送りバントのミス。あれが響きましたねえ」
「思えばあの回は人生のポール際、巻くか巻かないか非常に惜しい当たりもありました」
「ですねえ。それからリリーフの蒔田くんは変化球に頼りすぎ。あれじゃあ逃げてばっかりで…もっと先発の蒔田くんのように直球で、人生のストライクゾーンで勝負してもらいたいですね」
「次回の登板に期待しましょう。解説は蒔田比呂さん。インタビュアーは蒔田比呂。実況は私蒔田でお送りしました。蒔田さん、ありがとうございました」
「ありがとうございました」