変態ロリコン露出狂男
「幸せって何だろう」という深遠なテーマと見せかけた、ギャグです。
ファンタジー要素あり。恋愛要素あり。
不幸な星のもとに生まれた、主人公をどうか応援してやってください(笑)
その状況をどう整理していいのか分からない。
ドアを開けると、銀の髪で覆われた小さなつむじが見えた。むきだしになったすべらかなくびすじ。白い肌が目に入る。
ちょうど子どもから大人へと変化する境目の身体。
ささやかなふくらみが乱れた胸元から覗いていなければ、同性だと思えないほど華奢で、ひらべったい。
しかし、それはまぎれもなく女性の身体だった。
ついで横に目をやると、今度は日に焼けた胸板が視界に入る。
こちらも大人というにはいささか早く、まだまだ成長真っ只中で、伸びしろがあるように思われる。
鍛えられた上半身に比べ、こちらを向くその顔にはどことなくあどけなさが宿っていた。
黒い瞳の婚約者。
自分の将来の伴侶。
先日、婚約したばかりの青年である。
その名前を思い出し、真理香は知らず、息を止めた。
幼い頃から、お嬢様とかしづかれ、必要なものは全て両親から与えられてきた。
茶道、華道に秀でた優しい先生。
絹の着物に金銀の帯。
名門の女学校への入学資格に、心許せる学友達。
だが、真理香自身が手に入れたものもあった。
ひそかな夢。彼女にとって、何よりも重要なこと。
婚約を前提に何度か会った時、うっかり話してしまった彼女の夢に、彼は理解を示してくれた。
その瞬間、どれほど胸が高鳴ったことか。
この明治の時代を生き抜く有名な貴族の家の嫡男。
父母はすでに亡く、家督を継いでいるため、莫大な財産と広大な敷地持ち。
使用人も多く、手入れされた艶やかな黒髪に、気高く知性溢れるアーモンド型の瞳。すらりと伸びた身体には、なよなよとした部分はなく、まさに文武両道。
その上、彼女の夢を理解してくれる。
成田国繁は、佐々木真理香が出合った中で誰よりも魅力的で・・・恋に落ちない方がおかしかった。
だからこそ、正式に婚約が決まった時、これ以上の良縁はないと手放しで喜ぶ両親の隣で、自分は最高に幸せな婚約者になれるのだと信じていた。
そう。このドアを開けるまでは。
だが、この状況は何だろう。
上半身をあらわにした青年。その前で乱れた襟を直すこともせず、こちらを見つめる少女。
自分の婚約者たる青年の手が握っているのはまぎれもなく少女の着物だ。
その衣は少女の身体を包むとともに、絶妙の角度で彼女の胸元を隠し、ほのかな色香を醸し出している。
淡く染まる頬。
薄暗い部屋で素肌をあらわにした二人。
自分が来なければ一体どうなっていたのか。
そんな想像をしてしまい、真理香は真っ赤になってしまった。
折悪くというか、先刻まで、目の前の青年のよき妻となるため、男女の初夜の営みを散々学んできたばかりなのだ。
恥じらいながら身につけた知識はそう簡単に消えはしない。
結婚はまだ先だというのに、やたら強引な先生は、真理香が気絶しそうな(というか実際何度か気絶していた)話を、分かりやすく丁寧にいつくかの図で説明してくれた。
そして男性の嗜好に合わせることが大切だと、真理香に「婚約者の好みを探る」という課題を出したのである。
敵を落としたければ、まず敵の好みを知れ
これもよき妻になるための試練だと、三日月のような目をした先生にニヤニヤと送り出され、これ以上具体的な話聞きたくなかった真理香は、仕方なくこっそりと相手の好みを探りにきたのだった。
だが、成田家の塀の上にいた使用人に見つかり、素直に事情を話したのがまずかったからしい。
何故か深めに帽子を被った彼は「そんなに気になるなら、ちゃんと本人に聞かにゃいとー」と真理香を引っ張って婚約者の部屋まで連れて来てしまった。
そして、お仕着せの彼が、ノックなしでいきなりドアを開けたことにより、頭が真っ白となる。
ドアの横で腹をかかえる使用人。
妖しげな雰囲気を醸し出す一組の男女。
婚約者の好みを探れという先生の言葉。
遅れてやってきた長身の男性が叫ぶのに合わせて、思わず知ったばかりの言葉が喉からこぼれおちる。
「若っ!何をなさっているのですか」
「この、変態ロリコン露出狂男~っっ!!」
まだまだ続くよー。
次から本編☆