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幻環  作者: とにあ
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原初の蛇の塔


 ゆっくりと深呼吸。


 広い森が眼前に広がっている。

 3ヶ月前までそこは何もない荒野だった。

 急速に成長を求められた植物たちの悲鳴。

 飢えを訴える無声。

 宥めるように大地の一部をかき混ぜる。

 草木は巻き込まれ捻れていく。

 表層化する腐肉、骨、大地の微生物。

 外から持ってきた蝶のサナギを森に落とす。

 そして枝についたままの蜘蛛の卵、天道虫、蟻。

 森にどれほどが喰われずにいられるのかは知らない。

 運がよければ生き延び、共存するだろう。

 先代はこの周囲は荒野でよいと思ってたらしいが緑が見えないと落ち着かない。

 というか、大地を掘り起こす度に死体が出てくるのはいかがなものかとも思う。

 いい肥料になるとはいえど、気分はあまりよくない。

 氷の塊等も出現する。溶けるのは早いが。

 広がりきらぬ森の境は草原、そして灼熱の砂漠。

 また、一月くらい放置して何か放り込もう。

 鼠と小鳥なんてどうだろう?

 できれば雑食性の。

 今日放り込んだ生き物がうまく居ついてくれていれば食には困るまい。


 森の中央部。


 我らが住い、原初の蛇の塔はある。

 くすんだ白っぽい楕円の塔だ。

 塔の上層部に居住区を持つ者としては風景・景観は結構重要項目なのである。


 そして、

 15年かけて得体の知れない森を作り上げた。

 普通の森にしたかったんだけどな〜

 捻れたまま成長した木々は高いもので30メートルを越えている。

 時々、ペットボトルを逆さまにして水を与える。

 と、

 蔓が貪るようにペットボトルを持ち去る。

 森の生態系として間違ってる気がする。

 根本的に水不足らしい。


 そして大きな変化が起こる。

 その変化はハイドラが塔に入ってからだった。

 塔の周囲には水を求める貪欲な植物が絡みつくような有様だったのだが、ハイドラが塔に入った翌日、外を見ると塔の周囲は透き通る水場になっていた。

 塔周囲の植物層が過剰な水分で全滅していた。きっといい堆肥が出来上がるに違いない。

 砂漠の向こう側にも青い燐めきが見えた。

「……海……か」

 水場、塔から水のない陸と思わしき場所までは広い場所で1kmを越えていそうだった。

 水中を大きな影がよぎる。

 流木かとも思うが違う。

 視線に気がついたかのか、影の上に一人の少女が立ち上がり、深々と礼をとる。

 衣装の裾はゆったりと水中に漂っている。

「何をしてるんだい?」

 側の空中に停止し、尋ねた。

 確か、ハイドラ配下のエキドナ。基本的にハイドラの側に居ることが多い。

「塔から森までの道を固定すべく、流木等を集めております。外部からくる方々の大半は陸路をお使いの上、塔まで来られますから」

 塔の前までたどり着いたら、入り口が水の向こうじゃさすがにキツいか。

 時折、知識を求め、塔に尋ねてくる者がいる。

 塔まで辿り着くだけでも大変だとは思うけど来たら入り口は水の向こうじゃむくわれないかぁ

 その後条件次第では警備との乱闘だしなぁ

 水の中で小さな蛇が細かな流木をよせている姿が見える。

 おそらくエキドナの配下だろう。

「メダカとか、グッピーとか水中に放してもいいか?」

 エキドナは笑いながら「ご自由に」と答えた。

 ものの数日でその変化は進められた。

 その間ハイドラは外に出ることなく状況を知らない。

 なかなか見事な影響力だと思う。

 自分の功績と理解できないだろうとは思うけどね。

 無自覚っぽいから。

 森は生き生きと成長し、動物たちも増えているのがわかった。

 足りない水を得て水の恐ろしさを知って、新たに形を変えたものもいる。

 砂地でも森でも水場でも最上位を誇るのはすべて蛇系種族ではあるが。

 まぁ、蛇の塔だし。

 上階からの景色は美しい緑。そして水の青と空の濃紺。

 結構満足かなぁ

 敷き詰められた織物の上に体を投げ出して寝そべってみる。

 微かな湿りを帯びた空気が心地よい。


 無造作に放り出された棒が視界に入る。

 装飾過多な2メートルほどの棒。いや、槍。

 すべて合わせての長さは3メートルにはなる。

 握りこみ、旋回させるように振るえば空が曇る。

 空気の振動。

 風切る音と共に勢いをつけてゆく。

 勢いに乗って体を起こし、目についたもっとも大きい木に狙いを定め槍の勢いを振り下ろす。

 一瞬、間を置いて落雷が狙った木を襲った。

 そして空気の渦、真空刃が周囲に広がってゆく。

 ちょっと、はた迷惑だったかもしれない。

 だが、まぁいいだろう。








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