従者
「結構暗いな」
「夜だからな」
いや、夜じゃなくて深夜だよ!?
ああ、光魔法で周りを照らしておいて助かったよ、ていうかお兄様なんて唱えてたっけ、たしか『精霊に願いを、周りを照らせ“ルィジー”』って唱えてた気がするけどな、う、またか
「あぅ、に、しゃ」
「なんだ、レンどうした?」
どうしたかって?いやね、なんかさっきからね寒気がするんですけどあとなんか空気が冷たいしなぞの視線を感じるんですが気のせいなのかな?
「えっと、たしか西の森の最深部だったよな」
「ああ、たしかそうだったはずだ」
ちょ、ま、最深部ってどういうことなの、ていうか今更なんだけどよく気が付かれなかったな!
そういいながら3人で進む、しばらく全く同じ景色を見ながら歩いていた時のこと
「そろそろか“グチャ”え?」
グチャ?
ヨハンが先頭を歩いていると何かを踏んでしまう、光魔法が照らし出した底には何かの肉塊と血が散乱していたようでその一つを踏んでしまったらしい
「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
真っ先にニコロが悲鳴を上げるきっと彼は両親の惨劇を思い出してしまったんだろう。
「嫌だ、見たくない、う、う゛え゛」
堪らずニコロが吐いてしまう、それを心配そうに青ざめた顔で見るレンとしりもちをついて青ざめた顔でどこかを指さしているヨハン、そこにいたのは目を血走らせた大きな熊見ただけではわからないが5mはあるだろう。
「あ、ぅ」
普通の赤ん坊だったら泣きだしてしまうような状況でレンは固まっていた。
油断してた、まさか、まさかこんなにも魔物が恐ろしいものだったなんてRPGではもっと小さいよね、ボスとかじゃないよねどうしよう、どうすれば
ガサガサと後ろの茂みから音がする、レンはニコロの悲鳴を聞いて駆けつけてくれたこの森の狩人かと思い振り返ったそこには
「あ、あ、にしゃま、うち、ろ」
「あ、な、なんだ、レ」
また、今度は違う種類であろう魔物がいたウサギのような耳にオオカミのような体そして血走った目
この森でよく出る、ニコロの両親を襲った魔物だった。
「っ!」
ニコロは耐えられないように気絶する、ヨハンは焦ったようにニコロを起こそうとしているが起きる気配はない
どうする、どうすればいい、考えろ!
光魔法で作った明かりが頼りなさげにゆらゆら揺れている。
光魔法、魔法?
「に、しゃまほ、まほちゅかて」
焦りと恐怖のためかろれつが回らない
「え、あ、まほ、魔法、そうかわかった!」
レンの言葉を最初は理解していなかったヨハンだったが思いついたように魔法を唱える。
『精霊に願いを、燃え盛る炎を、フェイム!』
いや、何も起こってませんが、え、なに中二病だったの!?実はできないとかそういうのなの!?
「なんで、なんでだ!?」
ど、どうすればいいの
ちらりと後ろと前の魔物を見る二匹ともまだこちらを品定めするような目でみてくる。
ずきり
頭が痛い、いくつかの場面が頭の中に浮かび上がる
【みずほらしい服を着た“私”】
【首に首輪、自由がきかない手足、腐りかけの食事、死にかけの仲間、そしてお腹から血がでている“私”】
【品定めをするかのようにじろじろと見てくる人、うつろな目で視線を受けている檻の中の“私”】
【毎日痛めつけられる、何もしていないのに、仲間は殺された、そして死んだ“私”】
【そして――――――】
はっ、と顔を上げる今私は何をしていたの?何を見ていたの?
となりではお兄様があれこれ魔法の呪文を試している。魔物は最初私たちが攻撃してくるのかと警戒していたが何もしてこないとわかった瞬間、
ヴゥ…ヴォウ!!
魔物の熊のようなほうが吠えた、その時ウサギのようなオオカミのような魔物はギギギッ!と奇妙な鳴き声を上げて走り去った。
味方?いや、そんなはずはないきっと邪魔だったのだ自分の食事に邪魔になると思ったのだ
知能がある、これはいけない
ふとお兄様を見るとパニックに陥ってるようだった、おい、天才なんだろうが!
不思議と恐怖心はわかなくなっていたそれはあの情景を見た瞬間からだった、なぜかは分からないけど恐怖心はなく、ただそこに魔物がいるそう思っただけだった。
「う、うああああああ!」
ヨハンが悲鳴を上げる。限界に決まっている、4歳児にここまで我慢させたのだあたりまえに決まっている。
魔物はその声に興奮したように一気に距離を詰めてくる。
「いやだぁ!お母様!お父様!」
「おに、しゃま、よけちゃくりゃしゃ!」
魔物がお兄様に向かって腕を振り上げた、やめて、やめて、もう、うんざりなんだ、何が?もう何かを、どうして?失うのは、だったら、
『sd,sG888p:11137』<目覚めてよ、魔王様>
なんて?何て言ったの、ねえ
グジュ
肉がえぐれる音がした、鉄くさかったのが、さらに鉄くさくなる
「いだぁぁぁぁぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!」
お兄様の背中が、血に染まるどうやらかすっただけだったのようだでもなんで?魔物は確実に仕留めるつもりでお兄様に爪を向けた
仕留めるつもりで?殺すつもりだった?お兄様を
「あ、に、しゃま」
お兄様はピクリとも動かない、ウソでしょ?
「う、ああああ、ああ゛」
『pg,sd,sj/K?332451151E0005p:@3755fgbj22#nH』 <まだ目覚めないの?しかたないなぁそんな魔王様に素敵なギフト>
ウオォォォォォォォォォォォォォォォォン!!
『@222HiG?』<受け取って?>
私の目の前には3頭の大きな真っ黒なオオカミ達、オオカミたちは魔物に突っ込んでいきいろいろな箇所に噛みつく
そして、私の見た目も変わっていた17歳くらいの身体
流れる薄桃色の髪、長い手足、そして服装は別に裸ではなくフードつきのロングコートにブーツ
【星霊に願いを、存在する星、牡羊座、火の海をここに!】
轟々とどこからともなく炎が現れる、そして魔物の周りから魔物に火が集まっていき魔物を焼き尽くす。
グギャア゛ア゛ア゛ア゛!!!
魔物がすさまじい悲鳴を上げて空気を震わせる、それでも炎は止まらず魔物を包んでいる。
『おはよう、次の“私”』
オオカミたちは、と周りを見渡すと離れた場所に静かに座っているオオカミたち
ホッと息をついた次の瞬間
パリン、とまるで薄いガラスを割ったような音がして振り返るとそこに漂う緑色の結晶体、見方によっては宝石にも見える
「なに、これ」
オオカミの内の一匹一番大きなオオカミはそれに近づき口にくわえて持ってくる
「え、なに、受け取れって?」
オオカミはそうだといわんばかりに押し付けてくる、手をだしそこに落としてもらってその結晶を見つめる
「きれーだなー」
でもこれ、どこにしまえばいいんだろう
「ん?なにさ」
小柄なオオカミが瓶を持ってくる
「入れろって?」
カチャン、と音を立てて結晶は瓶の中に落ちていく
「で、どうしようこの身体」
すっかり見た目が17歳くらいになってしまったこれでは家に帰れないし、というか
「アンタたち、何者?」
警戒しながら聞く、敵じゃあないよね、助けてくれたしあ、もしかして、さっきの魔物みたいに邪魔だったから?でも、そしたら何で
『ご主人、私たちは敵ではありません』
へぇ~、そうなんだじゃあ、あんし…え?
「しゃ、喋った…!」
『そりゃ、そうだよ僕たちは力の強い魔物だからね!!』
えっへん、といいながら耳がギザギザなオオカミが言う
『私たちはレネン・フェレオル様、貴方にお仕えする魔族であります』
どうやら私、このオオカミたちのご主人になってしまったようです。