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Re:平凡  作者: 愛夢 寝子
8/10

俺になれ

「ほんと 俺そっくりだよなぁ」

虎次郎に向かって話しかけてみた。チラッと見たがすぐにまたバニラアイスに夢中になった。


「健なんか変なたくらみしてない?」

鋭い。姉貴がむすっとしながら、

「このことは内緒よ、私たちだって普通じゃいられなくなるわよ、虎次郎を見せ物にしようなんて考えてないでしょうね」

と言った。正直、虎次郎が俺になれるからといって、何か悪だくみしようとしたがイマイチこう、なんていうか俺が得するような策が浮かんでこない。ただほんとにコレを利用しない手はないって思うだけで。

「わかってるよ、俺だって虎次郎のこと内緒にしておきたいんだから」

「そう」

姉貴はほっとしたようだった。


「たけるはほんとうはやさしいにゃ」

虎次郎わかってるじゃないか。てかほんとバカだよなー。

「そうだろ、なぁ俺に変身してなんかしてるのか?」

ん?みたいな・・・反応。首をかしげた。コイツ俺の質問の意味が解ってないのか・・・


「とらちゃんは頭いいのよねー 健になっておいしいもの食べて、遊園地もいったわよねー」

「ゆうえんちいったー またいくー」

くらっとした。幼稚園児くらいの頭なのかコイツは。まぁいい、とにかく俺に懐いてもらわないと。

「猫って実はみんな人間になれるとか?」


「虎次郎は特別なのよねー。猫のエリートなんだって。選ばれし猫なんだから」

そうは思えないが、姉貴の言葉にちょっと得意げにしている虎次郎が面白かった。

「じゃあ、俺の代わりに学校いくとかできる?」


バチッ

姉貴がすごい早さでどついてきた。


「まさかあんた虎次郎に学校に行かせて、自分は家で寝てようなんて考えてるんじゃないでしょうねぇ」

「あ、え、冗談だって。どう考えてもばれるっしょ」

ははは 

ちょっとそんなことできたらいいなって思ってたんだけどな。


「がっこういったことあるよ」

「「え?」」

「たけるのあとついてったことあるよ」

「虎ちゃん学校にいったの?」

「うん」


「なにしてたんだよ」

「んと、げんかん?でたけるいなくなって、ねむたくなって、おはなのとこでねてて、んんっとー、みんなでてきたからへやにはいってみた」

「中に入ったのかよ」

「たけるのにおいのつくえまでいったにゃ」

自慢げに言ってきた。


「がっこうたのしいの?」

「え・・・」


虎次郎が俺に質問してきた。なんて答えようか一瞬悩んだが、

「楽しいに決まってるやんか」

ちょっとイントネーションがおかしかったかな・・・

「いいにゃ、べんきよしたいにゃ」

ぷ、べんきよ 吹き出しそうになったが必死にこらえた。でもこれはつかえるかもしれない。


「虎ちゃん、学校にいくのはできないわよ、健だって一応、小学校、中学校、高校って順番に勉強してきたんだからね、急に高校にいったらわからないこといっぱいよ」

「そっかぁ たけるいいにゃ」

「でもでも、俺の学校あたまよくないからさ、なんか楽ぅな授業の時、お前行ってみるか?」

「はぁ?」

姉貴が大きい声をだした。

「虎次郎に行けるわけないじゃない、何言ってんのよ」


「どうかな、とらじろう?」

自分でも驚くほど猫なで声で聞いてみた。

「いいの?」

虎次郎は乗り気だ。

「虎ちゃんやめなさい、家族以外の人間に話したこともないでしょ、酷い目にあうかもしれないのよ」

姉貴は乗り気じゃない。

「俺が 完璧な俺 になるよう特訓してやる」

「はぁ?」

また姉貴は、馬鹿なこと考えないでちょうだいなんて言ってきたが、虎次郎は俺に新しい何かを求めているようだった。

やだ虎ちゃんまで・・・信じらんない なんて言いながら虎次郎を説得していた姉貴だったが、

「俺のかわりなんだから、なんかあったら俺に降り掛かってくるだけじゃん。虎次郎も刺激がほしいよな、な」 

「しらないわよ、ただ虎ちゃんにひどいことしたらすぐやめさすから」


ついにやった。姉貴も落ちた。

「よし、とらじろう 俺になる特訓だー」


ちょっと馬鹿っぽい会話だったが、虎次郎は俺に期待している。俺の言うことをきく、あの目は何も疑ってない。

ここからが勝負だ。まずは、俺に近づけないと。



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