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Re:平凡  作者: 愛夢 寝子
3/10

あれは俺じゃない

時間がとまったようだった。


すぐにでも「誰だよ」って問いただしたい気持ちと、まだこの状況に対応できない自分がいりまじり、一歩も動くことができなかった。

目の前の自分、いや、同じ顔の自分にそっくりなやつが何者なのか知りたい・・・



姉貴とは5歳の年の差があり、小さい時はままごとに付き合わされたり、着せ替え遊びで女装させられたりした。晴香が歩きだすと俺の世話係は異動した。

中学にはいる頃にはと父親が仕事で遅いせいで、男一人女三人が当たり前の家庭になっていて、俺はなにかにつけて集中砲火をあびていた。

俺はよく姉貴に歯向かって「かわいくない」と言われていたし、生活態度に文句をいわれ、この春から社会人になり家をでた時には晴晴したくらいだった。


だが、目の前のあいつは姉貴にべったりで。

声をかけようか考えたが、後をつけることにした。あいつが何者か探るために。

それに楽しそうに歩く姉貴との関係をあばいてやる。


世の中には3人同じ顔の奴がいる。

いつしかテレビで聞いたことがあったな・・・

でも、世界は広いのにこんな近くにいるものか。クローン技術の発達とか・・・いやいや難しいことは解らないし俺がそれに選ばれたとか。

姉貴は化粧品会社に就職したんじゃなかったかなぁ・・・まさか彼氏を整形で・・・お、俺の顔に

ブハハ

頭のなかでごちゃごちゃ考えてたら、姉貴が自分の彼氏の顔を、俺の顔に整形するとこまで妄想が膨らんで吹き出してしまった。俺ゼッタイ周りから変な奴だと思われてる。


どんな展開がまっているのか、頭はフル回転し心は飛び出したいほど躍っていた。


二人は仲良く何か話しながら、コンビニに入っていった。

待ってる間に少し落ち着いてきた。このまま姉貴の家に帰るとか・・・。


その後二人が向かったのは公園で、どうやら先ほど買ったものをここで食べるらしい。

ビールと、あれはチー鱈かな・・・

俺に似た奴は、姉貴にチョコモナカを差し出し開けてもらって、すごい勢いでかじったと思ったら冷たかったのか、顔をブルブルブルっとふってて姉貴に笑われてた。

姉貴はビール片手に俺に似た奴を優しく眺めてて。

俺に似た奴は落ち着きがない。

アイス食べかけで、つまみをかじり、牛乳の上を姉貴にあけてもらったら、ドボドボこぼしながら飲んで手で口をぬぐって舐めた。

ストローで飲めねーのかよ。

そいつは姉貴に頭を撫でられながら、気持ち良さそうに膝枕で寝ようとしだした。


見ていて飽きないその仕草についつい見とれていたが、ふと我に返った、もう限界だ、あいつが誰なのか姉貴に問いただそう。

姉貴に近づこうと隠れてた木の陰からでた途端、あいつは身体を起こしキョロキョロした。


「真琴、そいつ誰」

空気が凍りついたようだった。口を開けたまま姉貴を見るあいつと、俺をしっかり見て何も言わない姉貴と。


「そいつ、なんか俺に似てねー?」

ちょっと苦笑いで聞いてやった。

なにか言えよ、近くで見るとますます俺に似てる、いや俺だ。

ち、違う俺は俺なんだから、こいつは俺じゃない。


姉貴が沈黙を破るのを待つしかなかった。それはクイズの正解まちのようにハラハラし、少しの緊張と期待で鼓動が身体中を反響してめぐった。

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