うまい具合
「はい、魚」
「あら、鯛じゃない フンパツしたわね」
イワシでも良かったんだが、つい選んでしまった。それだけ俺も楽しみにしてたってことか・・・。
「わーい」
まだ暖かみのある鯛の塩焼きを、めでたい日でもないのに食べる虎次郎。贅沢なやつだ。
「なに、にやついてるのよ」
俺の姿でかぶりつく虎次郎を見てまたにやけてしまってたらしい。姉貴が半笑いで俺を見ていた。
「いや、おいしそうに食べるなって」
「あたりまえじゃない、猫なんだから、魚が好物に決まってるじゃない」
「そうだけど」
どう見ても猫だよな・・・俺とはサイズも違うし・・・あたりまえか。でも、俺に変身する自称エリートの猫なんだよなぁ
ボーっと考えごとをしていた。
「ごちそうでした」
虎次郎はきれいに大きなほねを残して食べ終わった。
「ごちそうさまでした、でしょ」笑
姉貴にいわれて、
「さまでした」
と言い直した。
「あ、そうそう何で家で変身してくれないんだよ、虎次郎」
勢いよくきいた。
「あ、健、虎ちゃんに変身させようとしたのね」
「でも、俺だけじゃしてくれないんだ、なんかあるのかよ」
「・・・」
「はずかしいにゃ」
「は?」
「たけるになるとふくないにゃ」
虎次郎が小さな声でそういった。
ぷはははは そんなことかー。なんだよ。
「俺の部屋にいくらでも服なんてあるじゃないか、それだけ?」
「うん」
なんだ、そんなことだったのか。やっぱイワシで良かったな。
「虎ちゃん、お家で健になる時には十分気をつけないとだめよ、お父さんもお母さんも晴香もいるでしょ」
「だいじょぶー たけるのいえのことはしってるにゃ」
「健も慎重にやらないと駄目よ、パニックになるわよ」
「わかってるって」
既に22時半近くなっていて、携帯には自宅から電話が3回、晴香の携帯から1回電話がきていた。
「ヤベェ ちょっと電話する」
案の定帰りが遅いことをいわれたが、すぐ帰ると伝えた。
「虎ちゃんは泊まってく?」
ンンーっとうなったが、
「たけるとかえる さかなのおれい」
といって、一緒に帰ることになった。お礼ならもっといいことして欲しいと思いながら姉貴の家を二人?あとにした。
帰り道、小さい子供との会話みたいだったが、虎次郎が昔の俺の誕生日の話とか、こけて骨折った時の話とか、俺がおやつ食べたのを自分のせいにされた話とか、きりなく楽しそうに話してきた。
そしてコンビニの前で、
「たけるーぎゅうにゅかってー」
と足をとめた。
おいおい完全な虎次郎ペースになってるじゃないか。とりあえず、二人でコンビニにはいった。
クスクス
雑誌をパラパラと見ていると、女子大生っぽい2人組が笑いながら
「双子ちゃんだね 一卵性かしら そっくりー」
「ああゆう仲いい双子欲しー」
なんて会話が聞こえた。お、俺のことだ。俺と虎次郎を見て言ったんだ と理解した時、顔があつくなるのがわかった。恥ずかしすぎる。
そそくさと牛乳を買い店をでた。
そうだ、このまま帰るわけにはいかない。
「お前、猫にもどれ」
「ここで?」
「い、いやちょっと待て」
さすがにコンビニの駐車場はまずいな。俺は公園に虎次郎を連れていくことにした。




