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GET BACK MAGIC  作者: 晴彦
1/3

Faker

 空は青いな。

 コンクリートに横たわる俺の最初の感想だった。

 あれ? なんで俺空なんて見てんだ。

 状況が呑み込めない俺はとりあえず立ち上がろうとした。

 あれ? 体が動かねーぞ。これじゃあ立ち上がるどころか、首を動かすこともできないじゃないか。

 周りが騒がしい。どうやら体は動かないが耳は聞こえるらしい。あ、目も見えてるか。

 耳を澄ましてみると、さっきまでは聴こえていなかった人の声、それに遠くからこっちに近づいてきている救急車のサイレンの音も聞こえてきた。

 ――あぁ。俺、事故ったのか。

 思い出してきた。俺は確か信号を無視して突っ込んできた車に跳ね飛ばされたんだ。そういえば近くから“俺は悪くない”なんて呟きも聞こえる。

 しかしどうしたもんかな。普通車に跳ねられた人ってのはこう体まで動かなくなるもんなのかな。そういえばクラスの石川君は自転車で車とぶつかっていたが、特にけがもしていなかったよな。アレは石川君が特別なだけか?

 まぁいいんだけどさ、事故も。どうせ生きてていていいことないし。

 父さんも母さんも病気で死んじゃったし。

 働かなくちゃいけないから学校も辞めちゃったし。

 そういえば今日もバイトに向かう途中だったよな。あーあ、時給もイマイチだったしこんなことならあのバイトさっさと辞めて別のにしておけばよかったぜ。

 お、救急車も到着したみたいだ。AEDとか使っちゃうのかな。楽しみだなぁ。体が寒くて寒くてしかたないけど助かるのかな俺。

 ……つまらない人生だったな。

 俺、何のために生まれてきたんだろう。

 あ、そうだ。シラユキはどうしてるかなぁ。俺が死ぬとかはどうでもいいんだけど、やっぱり妹のことは気になっちゃうよなぁ。

 伯母さんに苛められてないといいな。伯父さんにエッチな虐待を受けてないといいな。従弟のユウスケ君はいい奴だからあいつと仲良くやってるんならそれでいいな。

 ……なんか耳も聞こえなくなってきた。こりゃ本格的にやばいな。救命士さんも声かけてくれてるけど、どんどん遠くなってますよー。

 眠たい。もう寝ちゃおうか。

 空は





                           青いな。


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