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39話 創作の基本はやりたいことをやる






―――――――――――――――






「あの、怪王さん。ちょっといいですか?」


塵塚怪王の自室を訪れたのは典韋だった。


「うむ。遠慮は要らぬぞ、流琉よ」


塵塚怪王は典韋を部屋に招き入れる。


「実は怪王さんにお願いがあるんです」


椅子に座り、塵塚怪王と対面しながら典韋は話を切り出した。


「その、どうしても手に入れたい食材がありまして………それで、どうにかならないでしょうか?」


典韋は釣瓶落としたちのことを言っているのだ。あの二人のことは張角たちの件で城中に伝わっていたのだった。


「うむ。釣瓶落としたちのことを言っているのであれば、すまないができないのである」


「そ、そんな……。お金ならいくらでも………」


「いや、そういうことではないのであるよ、流琉。あの者たちは今―――休みであるのだ」


「へ?休み?」


「うむ。今、南の島で慰安旅行である」


と塵塚怪王は言う。


「すまないが、旅行中は呼ばないでくれと言われておるのだよ」


そのため、前回は塵塚怪王自らが届け物をしたのだった。


「何か急ぎの用なのであるか?」


「あ、はい。今日明日中に欲しい食材があって、それで………」


「ふむ。それがある場所は?」


「それは分かるのですけど、遠方で……。今日発っても、明日には戻れそうにないです」


「ふむ………」


少し思案顔になる塵塚怪王。


「ならば、我輩と取りにいくとするか、流琉よ」


「え?でも、今から出ても……」


「心配は要らぬよ。我輩に任せるのである」


と塵塚怪王はなにやら大きなものを取り出してきた。


それは扉だけで独立したものだった。


例えるなら21世紀型猫型ロボットが腹に付いたポケットから取り出すピンクの扉のようだ。


「え?まさか、これで行けるんですか?」


「―――いや、行けぬ」


――ズコッ。


典韋が転ける。


「じゃあ、なんで出したんですか!?」


「ふはははっ。いや、少しはしゃいでしまったのである」


と軽快に笑う塵塚怪王。


「最近、我輩は流琉に避けられているように感じたのでな。こうして頼ってきてくれたことが嬉しいのである」


「え?……あ、それは、そのぉ………」


それは定軍山での一件が原因だった。


裸を見られた相手に普段通りの接し方はできないのだが、妖者たる塵塚怪王には理解できなかったのだろう。


「うむ。まぁ、良いのである。少し待つのである、足を用意しよう」


「あ、はい………」


典韋は椅子に座り直す。


「………?」


と典韋が椅子の下を見るのだった。


「どうかしたのであるか、流琉よ?」


「あ、いえ………なんだか下から視線を感じたような………?」


「うむ。すまないな、それは妖者のせいであるな。気にするのであれば下がらせよう」


―――ざわざわ。


と机の下から音が聞こえる。


「ふむ。いつもは大人しいのであるが?どうしたのであるか?」


と塵塚怪王が首を傾げた。









「うむ。用意ができたようであるな」


と塵塚怪王は窓の方を見る。


「流琉よ、少し下がるのである」


塵塚怪王は典韋を窓から遠ざけ、椅子や机も窓際から下げる。


「あの、怪王さん、なんで――――」


下がるんですか?と聞こうとしたその時…………。


――――ズコーンッ!!


窓を突き破って、牛車が部屋に入ってくる。


「はいな!どうもデ~ス」


突っ込んできた牛車から顔を出したのは青年だった。


「な、なな………」


青年を指差しながら、口をあんぐりさせる典韋。


「流琉よ、こやつは片輪車かたわぐるまという。今回、我輩たちを乗せてくれる者だ」


「ハイ、どうもデス。籠屋の片輪車、例え火の中、水の中、土の中、森の中、あの子の腰布スカートの中まで、お客様のご要望にお応えするのが信条デス!」


と笑顔で言う片輪車。


「あ、どうも。私は典韋っていいます。………って、違いますよ!?壁壊しちゃ駄目じゃないですか!」


『?』


首を傾げる二人だった。


「まぁ、良いではないか。さぁ、乗るが良いぞ、流琉。片輪車よ、頼むぞ」


「了解デス!」


「え!?あ、ちょっと……」


典韋は塵塚怪王に背中を押されて、牛車の中へ入れられる。


「これ、どうするんですか!?」


と壊れた壁を指差す典韋。


「うむ。では後を頼むのである」


塵塚怪王は部屋の中へそう声をかける。そして牛車は発進していった。








誰も残っていない塵塚怪王の部屋。


いや、誰もいないわけではなかった。


―――。


壁一面に目が現れる。


それらは壊れた壁際へと次第に集まりだす。


―――?。


なにやら思案をしているようにざわざわとする、“それら”。


そして壊れた箇所を中心に円を描き回りだす。それはまるで壊れた部分を補修するかのように……………。







結果からいえば、壁は直っていない。


どうやら、ただ回っていただけのようだった。


――――↓。


“それら”は飽きたようだった。


「何をしているんだい?」


とそこへ鬼一口が現れる。


―――!?。


「いや、そんな驚かなくてもいいゾ?それにしても………なんだい、これは?牛車でも突っ込んできたのかい?」


鬼一口はでかでかと開いた穴を見て言う。


―――○。


「いや、冗談のつもりだったんだけど………」


「………何してんだ、テメェら?」


と開いた穴から送り拍子木が部屋の中を覗き込んでいた。


「やぁ、送り拍子木!奇遇だね、やっぱりボクたちは見えない運命で繋がってるんだね!」


「なッ!?き、キモいこと言ってんじゃねぇよ!このウスノロがッ!」


笑顔を向ける鬼一口に顔を真っ赤にしながら罵倒する送り拍子木。


「……ったく。で、これはどうしたんだよ?ここはあの方の部屋だろ?」


「なんか牛車が突っ込んだらしいゾ?」


「相変わらず破天荒な………ッ!?」


送り拍子木が部屋に入りながら言うと突然、服の裾を押さえる。


「うん?どうかしたのかい?」


「いや、コイツがな………」


と送り拍子木下を見るとそこには“それら”が集まっていた。


「コイツらぁ、散りやがれッ!」


と足で“それら”を払う。


だが、“それら”はそれを避けて、根気強く下に留まり続ける。


「くッ!」


それを躍起になって払うが無意味だった。


―――↑↑↑。


なにやら上機嫌な“それら”。


「何をそんなに躍起になっているんだい?送り拍子木は服の下は下着じゃないだろ?」


と鬼一口は送り拍子木の裾を捲り上げる。裾の下からは太ももまで伸びる黒い下着のようなもの―――つまりスパッツが現れる。


「―――ッ!?!?」


「ほら、下着の上から更に一枚重ねているんだから、恥ずかしくは…………あ、あの、送り拍子木さん?その振り上げた拍子木はどうするんですか?」


「知りたいか……あぁん?」


「いや、ちょっと遠慮したいゾ……」


「――――問答無用だぁぁ!!このド腐れ×××ッ!!」


―――↑↑↑。






「今帰ったのである」


「うぅ~……気持ち悪いぃ~」


「またのご利用お待ちしてますデス」


塵塚怪王と顔を真っ青にした典韋が帰ってくる。


「うぬ?お主は何をしているのであるか、鬼一口よ?」


とそこにはボロボロの状態で倒れている鬼一口が居た。


「……聞かないでほしいゾ」


―――↑↑↑。


そして何故か上機嫌な“それら”


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