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28話 見た目で騙されてはいけない









―――――――――――――――






「かつて無いほどの危機よ」


魏の玉座に座る曹操が深刻な顔でそう呟く。


集まる将たちもその空気に唾を飲む。


「あの黄巾党の時の途方も無い戦の日々もこれに比べたら可愛く見えるわ」


と曹操の顔に影が落ちる。臣下たちは今まで見たこともない主の顔に驚きを隠せない。


「か、華琳様、なにがどうなされたのですか?いつもの華琳様らしくありません……」


と武官筆頭である夏侯惇が言う。


「どんな障害だろうと、この夏侯元譲が華琳様のために排除いたします!」


「いえ、貴女には無理なのよ……」


「ッ!?な、何故ですか!?」


曹操の言葉に顔を真っ青にする夏侯惇。


「それはね、春蘭――――――お金がないのよ」


曹操を悩ます問題、それは財政難だった。






それは今どうこうという問題ではないが、将来的に必ず来るであろう問題だった。


各軍師たちが知恵を絞ってはみたが、どうしても避けられないという結論にしか結びつかなかった。


そして、その魏の存続を賭けた打開の任を任されたのは…………。






「…………なんでウチなんや?」


彼女の名前は李典。曹操軍の工作部隊を指揮を任されている。


「はぁ~、大将も無茶言ってくれんで……。ウチにどうせいちゅうねん」


と一人呟きながら廊下を歩いていく李典。どうやら誰かを探しているようだった。


「……っと、居た居た」


そして目的の人物を見つける。


「お~い、怪王。ちょっとええか?」


「うぬ?真桜であるか。なんである?」


廊下先にある庭に居た塵塚怪王は李典の声に振り返る。


「あんな、話があるんねんけど……。。今、ええ?」


「うん?まぁ、暇ではあるのだが………」


と塵塚怪王は自分の前を見る。


そこには古戦場火、鬼一口、送り拍子木、鵺といった見た目幼い妖者たちがいた。


「あ~。……子供の前でする話やないしな……」


李典にもそれが見えたのか、頭を掻きながら言う。


「お。ボクたちを子供扱いとは言うようになったじゃないか。褒めてやるゾ」


「いや、どう見ても子供やん」


「あはは。見た目に騙されると痛い目を見るゾ?」


と鬼一口は李典にぺろりと舌を出す。


「うむ。我輩は構わぬ、話すが良い、真桜よ」


「いや、ウチが気にする……まぁ仕方ないか。一応急ぎの話やし……。少し怪王を借りるで」


と鬼一口たちに断りを入れてから、本題に入る李典。


「あのさ、これは大将からの要請でもあるねんけどな、出費を抑えてくれへん?」


「うぬ?出費、とな……?」


「そう。天和たちの面倒みてくれるんは助かっとるんやけど。金使うのもうちょっと抑えれん?」


「うむ……。それほどまでに我輩は使った憶えはないのでるが……」


首を捻る塵塚怪王。


「まぁ、怪王にかぎって着服しとるとは思っとらんけど……。ウチもチラッと見たけどかなりの額やったで、あれは」


特に食費が……、と言う李典の発言に塵塚怪王は反応する。


「………鬼一口よ、何か知らぬか?」


「うん?なんだい、ボクを疑っているのかい?」


かくんと首を傾げる鬼一口。


「あはは。それは見当違い――――」


「見ていた者に聞くのが早いであるか」


「――――じゃないね。うん、ボクだゾ」


塵塚怪王が壁に手を当てると直ぐに喋る鬼一口。


「いやぁ、人の食べ物ってのは美味しいからね。ついつい“食べ過ぎちゃう”んだゾ」


「すまないな、真桜よ。我輩の監督不行ふゆきとどきである」


と塵塚怪王は李典に頭を下げる。


「いやいや、ええねんて別に。これから改善してくれりゃ問題あらへんし……」


「ふむ」


と塵塚怪王は頭を上げる。


「そう言えば怪王たちはここで何してたん?」


「うむ?……おぉ、そうであった。待たせてすまぬな、主らよ」


塵塚怪王は鬼一口たちの方へ行き、一つの瓶を取り出す。


「ほれ、飴である」


と一人一人に飴玉を渡す塵塚怪王。


それを受け取り、口に入れると途端に頬を緩める古戦場火たち。


「うむ………」


それを満足そうに見守る塵塚怪王。


「へぇー。やぱり子供やんか」


と李典は鬼一口を見る。


「ふ、ふん。君は全然分かってないゾ。これは仕方のないことなんだゾ」


鬼一口はそう言ってそっぽを向く。


「ははは、可愛いげがないなぁ、鬼一口は。ほら、送りちゃんたちを見習いよ」


李典は自然な動作で送り拍子木の頭を撫でる。それはいつも許緒や典韋にやっている何気ない動作だった。






「――――気安く触ってんじゃねぞ」







「…………へ?」


ドスのきいた声に李典は撫でていた手を止める。


「えぇと………。今のは、鬼一口?」


と李典は鬼一口を見るが………。


「そんなことまでボクのせいにするのかい?それはひどいと思うゾ」


しかしそれに対して鬼一口は首を横に振る。


「じゃあ………怪王?」


「うぬ?我輩は何も言ってはおらぬよ。というより汝の前に居るではないか……」


「え?もしかして…………」


と塵塚怪王に言われて自身の前を見る李典。


つまり………今、頭を撫でている送り拍子木を見る。


「送りちゃん、なの?」


と半信半疑で訊いてみると………。


「他人の名前勝手に略してんじゃねぇぞ、このクソ虫が」


少女の口からドスのきいた声が聞こえた。


「てか、いつまで触ってんだよ、このウスノロ蛆虫が」


「………あ、すみません」


と勢いよく手を引っ込める李典。


「…………」


「なんだよ?他人の顔ジロジロ見やがって……。テメェ、そっちの趣味なのか?あぁん?」


依然とくりくりとした可愛らしい目で李典を見ている送り拍子木なのだが、口から出るのはヤクザのような声なのだ。


「なんだこりゃぁぁぁぁ!!」


夏侯恩が大絶叫した。


「な、なんでこんな可愛い容姿でこんな声なん!?ありえないやろッ!!」


「どうかしたのであるか?」


と叫び声に塵塚怪王が反応する。


「怪王、なんなん、この子は!?いきなりヤクザみたいな喋り方をしとるんやけど!?」


「うん?何かしたのであるか、送り拍子木よ?」


と塵塚怪王は送り拍子木を見る。


「………?」


送り拍子木は無言で首を傾げるだけだった。


「ふむ。何もないではないか、真桜よ」


「え?いや、違っ…………」


と塵塚怪王は古戦場火と話し始めてしまう。


「おい、テメェ。なに、告げ口しとんだ。あぁん?」


「見た目と違い過ぎるやろ、これ」


凄む(声だけ)送り拍子木に地面に手をつく李典。


「あはは。だから言ったじゃないか……。見た目に騙されると痛い目を見るって」


それを見て笑っている鬼一口。





こうして魏の財政難はなんとかまのがれた。


その代償に李典にトラウマが埋め込まれたのだった。


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