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27話 高みで見るもの






―――――――――――――――






塵塚怪王が鵺の用事で出ている時、物語は進んでいた。


当初、魏へ侵攻してくると思われていた袁紹が急に徐州へ進軍を始めたのだ。


それは今、徐州へ侵攻している袁術に徐州を独り占めされるのが惜しくなったからである。


そして袁術、袁紹に同時に攻められた徐州の劉備は曹操の魏を通り、益州へと逃げるため、通行許可を申し出に関羽が魏に来たのだった。


しかし曹操はその策に納得のいっていない様子の関羽へ返事を返すのを是とはせず、劉備の本陣へと出向いていた。


劉備の本陣へと出向いた曹操はあっさりと通行の許可を出した。


それに劉備は笑顔を浮かべるが、次の言葉に曇らせることとなる。


「通行料は…………関羽でいいわ」


「………え?」


「なに?関所でも通行料を払うのは当たり前でしょ?」


そう言う曹操に対して劉備はその申し出を断り、自軍の軍師である諸葛亮に改めて自分たちが逃げれる道の詮索を命じた。


「――――甘えるのもいいかげんにしなさいッ!!」


そしてそれは曹操の逆鱗に触れた。


「そんなものがあればわざわざ私の所に通行の許可を取りにきたりしないはず!貴女は一人の将のために全軍まで犠牲にするつもりなの!?」


「そんなことはしません!愛紗ちゃんも鈴々ちゃんも朱里ちゃんも皆で助かる道を……」


「だからそれが不可能だと言っているのよッ!」


両者とも引かない。それは互いに己が信念を持っているためだ。


それを知っているから誰一人水を差せる者はいなかった。




「全く。騒がしいのであるな……」




いや、一人だけいた。


曹操の袖口からぽとりっとプチ王――プチ塵塚怪王が落ちる。


「ふむ。小さき者から見ると世界はこう見えるのであるな」


とそれは一人で立ち上がり、腕を組み、なにやら頷くのであった。


「汝らよ、気をつけるが良いぞ。小さき者からだと汝らの下着がまるみ――――」


―――グシャリ。


「何をするのであるか、華琳よ。前々から思っておったが汝の我輩への対応が日に日に乱暴になっておるぞ?」


粉々に砕かれたプチ王は溜め息を吐きながら言う。


「貴方ね、少しは空気を読みなさいよ……」


「……くうき」


地面に書いた『空気』の文字を読んでみせるプチ王。






「ふむ。今帰還したぞ、華琳よ」


粉々になった残骸とそこらの木っ端をかき集めて、元の姿を作る塵塚怪王。勿論ダンボールが頭である。


「なに?貴方、私を驚かすためにこの人形を渡したわけ?」


「いや、城に戻ったのだが、誰も居なかったのでな。我輩自らやってきたのだ」


完全に空気を壊された曹操は塵塚怪王に苛立ち気に言うと普通に返す塵塚怪王。


「あ、えぇと……」


そのせいでほったらかしになっていた劉備が控えめながらも声をかける。


「あのぉ、その人は……?」


「気にしなくていいわ。ただの妖者よ。……それで何だったかしら?もう、貴方のせいでどこまで話したか忘れちゃったじゃないの!?」


「ふむ。確かそこの娘に領地の通行許可を出す最中であったよ」


「そうだったわね。劉備、通っても構わないわよ………って、違うわよ!!」


覇王スキル、ノリツッコミである。……嘘だけど。


「あぁもう!いいわよ。通りたければ通ればいいじゃない。さっさと益州でも荊州でもどこでも行けばいいわ」


「え、でも……」


「通行料なら、貴女が南方を治めた時に貴女の領地を奪いにいくわ。利息こみでね……」


と曹操は厳しく言い放つ。


「それが嫌なら精々私の寝首を掻いて私の国に攻め入ることね」


「そんなこと……」


「出来ない?なら精々私が奪うその国を豊かにしていればいいわ」


そう言うともう話すことはないと劉備の本陣を後にする曹操。







「華琳よ、汝は優しいのであるな」


「何よ、いきなり……。別に、貴方が邪魔したせいで長引いてしまったから妥協したまでよ」


陣へ戻る中、塵塚怪王は曹操に話しかける。


「いや、そうではない。あの娘への忠告であったのであろう?必要までに悪役を演じたのは?」


「…………さぁ、なんのことかしら?ただ覇王たる私と争うのがただの天然ちゃんじゃ張り合いがないと思っただけよ……」


「そうであるか……」








劉備たちが曹操の領地を横断する中、曹操たちは袁紹・袁術軍を迎え撃つ準備をしていた。


「二方面作戦を取らなくてよくなったのは助かるけど……」


何故か袁紹たちは一群となり、曹操たちと真正面から挑んできたのだった。


「……あの馬鹿高いやぐらは何なの?」


それは袁紹軍の秘密兵器だった。そこから弓兵が狙い打つのと相手の陣形を読むことにしようされる。


「まぁいいわ。秘密兵器があるのはなにもあちらだけではないのだから」


「華琳様、袁紹が前に出てきます。……櫓ごと」


「なに!?あの櫓動くの!?」


無駄に金をかけた構造となっていた。


曹操が呆れながらも舌戦へ赴く中、塵塚怪王は………。


「ほぉ。あの者、金霊だけではなかったのか……。正に天に愛されておるようだな」


と何故か笑っていた。






舌戦を終える頃には袁紹の櫓は曹操軍の投石器により、“ほぼ”壊滅していた。


だが、袁紹の乗る櫓だけは何故か、破壊をまのがれていた。


「どうしたのよ、早く最後の一つも潰しなさいよ、真桜!?」


旬イクの檄に李典は焦ったように言う。


「それがあの櫓だけいくら投げても掠りもせんのですわ」


「標準も距離もあってるの。なのに外れちゃうの」


それに于禁も言う。


「なによ、それ!?いいから当てなさい。あれが一つでもあったら意味がないのよ!」


『は~い』


と再び挑戦する二人であったがそれが当たることはなっかた。








「姫、危ないですから降りてくださいって」


「だ、大丈夫ですわ、猪々子さん。あんなもの当たりはしませんわ」


文醜が袁紹に降りるように言うが一向に聞かない。


「姫ぇ、今は当たってなくてもいずれ当たるかもしれないんですよぉ」


と顔良も説得にあたるが聞かない。


投石器の岩は櫓にこそ当たりはしていないが櫓の周りにかなりの被害を出していた。


「さぁ、名門袁家の将たちよ。この櫓であのおチビさんをプチッと踏み潰してやりなさい。お~ほっほっほ」


高笑いをする袁紹に二人は溜め息を吐く。






「―――実に面白いであるな、汝は」





するといつも間にか櫓の前に塵塚怪王が立っていた。


「なんですの、貴方は?どこかで見た覚えがあるのですけど……?……まぁ、いいですわ。そんなところに突っ立てますと貴方もぺちゃんこですわよ」


お~ほっほっほ、と高笑いをする袁紹。


「うむ、それは困るのであるな。ならば………泥田坊よ、あの櫓の天辺まで道を築いてくれまいか?」


塵塚怪王がそう言うと見る見る内に地面が盛り上がり、櫓も天辺まで階段を築いていく。


そしてそれを上っていく塵塚怪王。


「ちょっ!?何をしています、顔良さん、文醜さん!?早く、この者を捕まえなさい!?」


「いや、無茶言わないでくださいよ……」


そうこうしている内に塵塚怪王は袁紹の立つ所まで上がってくる。


「うむ。これで潰されることはなかろう。………久しいの、天に愛されし者よ」


塵塚怪王が上がりきると同時に土の階段は土塊つちくれへと変わる。


「思い出しましたわ。貴方、確か華琳さんところの……」


「塵塚怪王という」


「何ですの!?わたくしに何か用でもありますの!?」


「否であるな。我輩は妖者故、人の争いに首を突っ込まぬよ」


「なら何をしに―――」


「だが、同じ妖者が介入しておるのならば話は別である」


と塵塚怪王は袁紹を見る。いや、袁紹の後ろを見ているのだ。


「何故、主はここに居るのであるか―――チふんよ」


「貴方誰に言って―――」




「ふわぁ~。何か用なの?」


と袁紹の後ろに手すりに腰掛け、眠たげに目を擦る女が言う。


「何故、ここに居るのであるか?」


「なんでって……。ここ高くて見晴らしもいいし、昼寝にはもってこいな場所だもの」


女――チ吻はそう言って再び欠伸をする。


「すまぬがここでは今、人が争っておるのだ。主がおると要らぬ力が働いてしまう故、移動を願いたいのだが………?」


「………ヤダ。自分は眠いの。ここは心地いいの」


とチ吻は手すりの上で横になる。それはまるで今から寝るかのように……。いや、実際放っておけば寝ただろう。


「ならば、力ずくとなるが良いか?」


「うぅん…………別にいいの。むにゃむにゃ」


本当にどうでもよさそうにチ吻は言う。そして静かに寝息を立て始めたのだ。


「では失礼するのである。…………泥田坊」


塵塚怪王が地面に向かってそう言うと、櫓の足元の土が盛り上がる。


「な、なな、なんですの!?」


「すまぬが、これは倒させてもらうのである」


「……って、貴方一体なにをしますの!?」


と塵塚怪王は袁紹を抱えて、櫓の上から飛び降りる。


櫓が倒れると同じくして塵塚怪王たちも地面につく。その頃には袁紹は目を回して気絶していたが…………。


「ふむ。チ吻は………居なくなったか」


と塵塚怪王は辺りを見渡し、呟く。


「姫!無事ですか!」


その時、袁紹を探して顔良たちが来たので、塵塚怪王はその場に袁紹を寝かせて、その場から消える。


その後、最後の櫓もなくなり、曹操軍が本腰を入れて攻めに入るとあっという間に袁紹軍は瓦解し、それを見た袁術軍は退却を始めたのだった。









「………で、チ吻よ。何故、我輩の頭に乗っているのであるか?」


戦場から離れた所に立つ塵塚怪王の頭の上に肩車をする形で乗るチ吻に言う。


「それはここが一番この辺りで高いからなの。むにゃむにゃ………」


「ならば我輩と共に来るか?」


「別に構わないの」


と先程と同じようにどうでもよさうに言う。


「うむ。これからよろしく頼むのである、チ吻、いや高女たかおんなよ」


「よろしくするかはまだ分からないの。自分はただ高いところでお昼寝をしたいだけなの」


「うむ。それでも構わぬよ」


「………そう。それならいいの」


とチ吻―――高女はだらりと塵塚怪王の頭に体重をかけてだらけるのだった。


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