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25話 塵塚怪王の飴玉







―――――――――――――――







「……何なのであるか、これは?」


塵塚怪王は曹操に呼ばれ、玉座の間に来たはいいのだが………。


見慣れない顔が三人。


「そういえば貴方と顔合わせをしてない子がいるのを思い出したのよ」


と曹操は言う。


「ウチは張遼。字は文遠や。よろしゅうな」


とさらしを巻いた少女―――張遼が言う。


「うむ。我輩の名は塵塚怪王という」


「やっぱり自分、虎牢関で会ったやつやったんやな」


と張遼は塵塚怪王を見上げて言う。


「それにしても自分、でっかいなぁ。何食ったらそんなでかなるん?」


バシバシと塵塚怪王の背中を叩く張遼。


「風は程イク。字は仲徳なのですよー」


とトテトテと塵塚怪王に近づく程イク。


そして、コンコンと塵塚怪王の体を叩くのだった。


「うむ?どうかしたのであるか?」


「いえー、中が詰まってるのかなぁー?と思っただけですよー」


と笑顔で答える程イク。


「我輩の中には何もないぞ」


「そのようですねー」


程イクは飴をくわえて、目を細める。


「それで最後は………」


「…………だくだくだく」


最後の一人は鼻血を出して倒れていた。


「のう、華琳よ。これの説明を求めても良いか?」


あまりにも誰もその事に触れないため、塵塚怪王も恐る恐ると訊くのだった。


「まぁ、アレよ。残念な娘なのよ………」


「いや、それでは説明に………まぁ、良かろう」


曹操の疲れた顔を見て、塵塚怪王は追求を諦める。


「稟ちゃんは郭嘉。字は奉孝と言うのですよー」


程イクが郭嘉の代わりに自己紹介?をする。


その後、全員と真名を交換し、その場は解散となった。









――――ガシャガシャ。


――――てくてく。


「………それで何故、汝は我輩についてくるのであるか、風よ?」


「それはですねー。なんだか面白そうだからなのですよー」


「ふむ………」


笑いながら目を細める程イクに、塵塚怪王はため息を漏らす。


「実に人とは様々であるな………」


それだけ言うと再び塵塚怪王は歩きだし、それに程イクがついていく。


「ところで怪王さんはどちらに向かっているのですかー?」


「うぬ?………いや、特にはないぞ。ただ闇雲に歩いているだけだ」


「…………」


「うん?何を呆けているのだ、風よ?」


「いえ、ちょっと自分の“目”を疑いたくなりまして………」


それは誰しもが見謝ることだ。


基本的に塵塚怪王の第一印象から彼がかなりの大雑把な性格だとは感じないのだ。


「ふむ。あまり気を落とすものではないぞ?」


と事情は分からないが慰める塵塚怪王。


「―――暇ならボクに付き合ってほしいゾ」


そこで鬼一口が天井からぶら下がりながら言う。


「うぬ?何をしているのだ、鬼一口よ?」


「暇ならボクに付き合ってほしいゾ」


クルリと下に降りた鬼一口はビシリッと指を指してそう言う。








「………うむ?鬼一口よ、食事処に行くのではないのか?」


と塵塚怪王は森へ入っていく鬼一口に訊ねる。


「…………キミが普段、ボクをどう見てるか、分かったゾ」


ジト目で塵塚怪王を見る鬼一口。


「まぁ構わないけどね。どうせ、ボクの存在はそう在るべきだと思うし………。それで、なんで君までついて来てるんだい?」


鬼一口は塵塚怪王から後ろについてきていた程イクを見る。


「お構い無くー」


と程イクは飴をくわえたまま言う。


「……まぁ、構わないか。それじゃ君も招待するゾ」


と恭しく、お辞儀をして森の先へと二人を誘う。









「――――これは………」


「おぉー!?」


二人が森を抜けた先に見たものは…………。


色とりどりに飾られた机の上に様々な料理が並べられていた。


『いらっしゃいませ。一日限りの名店、マヨヒガへようこそ』


すると給侍の格好をした火車と蛟が二人を机へとエスコートしていく。


二人が机に座ると机の前に設置された舞台に次々と付喪神たちが集まり、踊り始める。


それはさながら人形劇のようであった。


「何なのであるか、これは?」


「うん?何って、キミを楽しませるための会さ」


鬼一口はそう言った。


「主がこれを?」


「いいや、違うゾ。これは………古戦場火ちゃんさ」


と鬼一口の後ろから古戦場火が首を出す。


「キミへの日頃の感謝を表したいって言われてね。それで火車たちと相談してこの会を開いたってわけさ」


「………怪王さん。あ、ありがとう……」


と古戦場火は手に持った花束を塵塚怪王に渡す。


「う、うむ………」


珍しく焦った様子の塵塚怪王。


「まぁ、キミには食事なんて嗜好程度だろうけど………」


「いや、我輩は食べれずとも、その想いを汲むことはできる」


「………うん、キミならそう言うと思ってたゾ」


「おやおや、もしかして風はお邪魔でしたかー?」


「うん?そんなことはないゾ。さっきも言ったけど、基本的にボクらは食事を嗜好程度にしかしないからね。どっかの誰かが張り切って作りすぎた料理を処理してほしいゾ」


『ギクッ』


と隅の方で八本の釵とウェーブのかかった髪がビクリッと動く。


「それに君はボクらを見てもあんまり驚きそうになかったからね」


と鬼一口は踊っている付喪神たちを見る。


「あれらは特に臆病だからね。君が騒がず、落ち着いてくれて助かったゾ」


「いえいえ、これでも驚いているのですよー、風は」


といつもと変わらないのほほんとした口調で言う。


「そうかい。それは気づかなくて悪かったゾ」


鬼一口もそれに肩を竦める。







「今日は本当に楽しかったのである」


宴もたけなわ。森の中で密かに開かれた宴も終わりに差し掛かり、塵塚怪王は皆に向かって言う。


心なしか、顔が綻んで見えるのは気のせいか……。


「うん。キミが楽しめたのなら良かったゾ」


『ご満足いただけて何よりです』


鬼一口と火車、蛟は言う。


それに他の妖者たちも頷いていた。


「うむ。……古戦場火よ、こちらへ」


「……え?」


急に呼ばれた古戦場火は驚きながらも、塵塚怪王の下へ行く。


「今日は本当に楽しかったぞ。礼を言う」


と塵塚怪王は古戦場火の頭を撫でる。


「……ふわぁ~」


それに目を細めて、喜ぶ古戦場火。


「これはその礼である」


と塵塚怪王は飴玉を一つ古戦場火に渡す。


「……あ、ありがとう」


それを嬉しそうに口に入れ、その甘い味に頬を緩ませるのだった。


「……ボクも頑張ったと思うんだゾ?」


それを見て、鬼一口が手を前に出しながら言う。


「ふむ。分かっておるよ」


と鬼一口に一つの瓶を渡す。


「お!?こんなにくれるのかい?」


「否。それは全員分である」


と他の妖者たちを見る塵塚怪王。


「今日は世話になった。皆、分け合うが良い」


『わぁ!!』


そういうと妖者たちが沸き立つのだった。


「鬼一口よ。分配は任せるぞ」


「キミねぇ、ボクに食べ物を他者に与えろって言うのかい?酷なことを言うゾ」


と少し渋りながらも全員に飴玉を配っていく鬼一口。


「あれは何なのですかー」


程イクは塵塚怪王に瓶を指して言う。


「飴玉である」


「飴玉……?」


「うむ。我輩の手作りであるぞ」


「…………」


「うぬ?何であるか、我輩の顔に何かあるか?」


じぃーと塵塚怪王を見上げる程イク。


「いえ。もう怪王さんを理解することは諦めることにするのですよー………」


と程イクは飴を配る鬼一口の方を見る。


食べることを生き甲斐とする鬼一口は食べ物を他者に渡すという行為に抵抗あるのか、渡すのに手間取っていた。


「怪王さん。あれは人選ミスではないのですかー?」


「いや、あれで良いのだ」


と塵塚怪王はくくくっと笑う。


「怪王さんはいい性格してますねー」


「それにな………。あれは他者と関わるのを避けているのだよ」


と鬼一口を見る塵塚怪王。


「あぁ、やって徐々に慣れていってもらわねばな。あれもまた我輩の家族であるのだからな」


「…………」


「うん?」


再び、塵塚怪王を見上げる程イク。


「………やっぱり分からないのですよ、怪王さんは」


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