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17話 ぶらぶらと歩く。真っ直ぐ編





―――――――――――――――







どうやら軍議が長引いているようで、曹操たちはまだ帰ってきていなかった。


「暇やな~」


「そうなの~」


兵たちも暇を持て余していた。


――――ガシャガシャ。


「あれ?怪王、どこ行くねん?」


「うむ、少しこの辺りを散策してくるのだが……」


「ふ~ん。まぁ、あんまし遠くまで行ったらアカンよ」


「我輩は子供ではないのだぞ」


そう言うと陣を出ていく塵塚怪王。










「うむ…………」


暇潰しに散策する塵塚怪王は一番近くにあった陣を見てみる。


靡く旗は『馬』。西涼を纏める盟主、馬騰の陣営である。


「……………」


「おい、お前。ここで何してる!?」


旗を見上げる塵塚怪王に横から声がかかる。


「うぬ?」


塵塚怪王は声のした方へ首を向ける。


そこには髪を後ろで一本に纏め、キリッとしたイメージの少女が立っていた。


ただ、塵塚怪王は体はそのまま、見上げた形のままで“首だけを”向けたため………。


―――ポロリ。


首が落ちてしまった。


「うむ。最近、華琳がやたらと首を落とすから接続が悪いのであるな」


と地面に落ちたまま塵塚怪王が喋る。


「すまぬな。このような醜態を晒してしまって…………うん?どうかしたのであるか?」


塵塚怪王は何の反応もしない少女に不思議に思い、声をかけるが………。


「○◇□▲♯×」


声にならない声を上げて、少女は倒れてしまった。


「うむ、どうしたものか………」


と地面の顔は困った声を出し、見上げた姿勢のままだった体は腕を組む。










「すまない。誰か居らぬか?」


塵塚怪王は少女を抱えて今まで見ていた陣営の入り口に立つ。


まさか放っておくわけにもいかず、おそらくここの者だろうと当たりをつけたのだった。


「は~い、何かご用ですか~?………って、お姉様!?」


呼び掛けると塵塚怪王が抱えている少女にどことなく似た少女が出てくる。


そして出てきた少女は抱えた少女を見て驚く。


(どうやら知り合いではあるようだな………)


例えこの陣営の者でなくともここに預ければ問題はないだろうと判断した塵塚怪王だった。


「うむ。この者と知り合いなら話は早い。実は………」


「てりゃぁぁぁ!」


と塵塚怪王が事情を説明しようとしたその時、少女が塵塚怪王に槍を突き立てるのだった。


「叔母様が軍議に出ている間はこのたんぽぽがこの陣を守ってるんだから、お姉様に狼藉を働く奴は許さない」


ズボリッとなす術なく塵塚怪王の体に槍が突き刺さる。


「………へ?」


何の抵抗も見せなかった塵塚怪王に呆気に取られる少女。


「うむ。我輩が怪しいのは分かっていたがな、こうして出会い頭から槍で突かれたのは初めてである」


槍が刺さったまま悠長に喋る塵塚怪王。


「それで少女よ。この娘を知っておるのだな?」


「え?あ、うん」


あまりに普通に会話するので思わず、答えてしまう少女。


「それは何よりである。いつまでもこうしているわけにもいくまい?」


「あ。はい、すみませんでした」


塵塚怪王が腕に抱える少女を少し揺すると、目の前の少女は塵塚怪王から少女を受けとる。


「うむ。では我輩はこれで………」


と塵塚怪王は陣営を後にしようとすると……。


「あ。貴方は………?」


「うぬ?あぁ、名乗っていなかったな。我輩は塵塚怪王という。曹操の所で厄介になっている」


「えっ、曹操……?じゃあ、仲間だったの!?ごめんなさい!」


少女は頭を下げる。


「構わぬよ。我輩が怪しいのは分かっておるからな」


「でも………」


と少女は何かを考えていた。


「そうだ。お茶でも飲んでってよ」


「いや、我輩は本当に構わぬのだが……」


「それじゃあ、たんぽぽの気が収まらないの」


「うぬぬ………。では少しだけいただくとしよう」


少女の目に頑なな決意の光を見た塵塚怪王は誘いを受けることにした。








「たんぽぽは馬岱っていうんだよ!」


と少女――馬岱はお茶を出しながら言う。


「うむ。すまないな」


それを受けとる塵塚怪王。


そしてじぃーと塵塚怪王を見つめる馬岱。


「何であるか、馬岱よ?」


「ううん、別に何でもないの。気にしないで」


とは言うものの馬岱は塵塚怪王から目を離さない。


(あれでどうやって物とか食べるんだろう………?)


まぁ、そんなことを思っている馬岱だった。


「そうであるか………」


それ以上気にすることもなく、段ボールの頭に書かれた口の部分にお茶を運んでいく塵塚怪王。


(ドキドキ。ワクワク)


次第に目を輝かせる馬岱。とその時―――。


「………う、うぅ。あ、れ?ここは………?」


安静に寝かせていた少女が起きてくる。


「あ、お姉様、気がついたんだね。………あっ!?」


馬岱は声に振り向いてしまい、慌てて戻す、が…………。


「うむ。馳走になった」


もう既に飲み終えていた。


(早ッ!?)


「もぅ!お姉様のせいで見れなかったじゃない!」


「え、え!?何のことだよ、たんぽぽ?」


馬岱に身に覚えのない怒りをぶつけられる少女。


「というかここって天幕だよな?あたし、いつの間に移動したんだ?」


「あ、それは怪王さんが気絶してたお姉様を運んできてくれたんだよ」


と馬岱は塵塚怪王を見る。


「まぁ、そうなるのであるな」


塵塚怪王も一応、頷く。


「気絶?なんでまたあたしは気絶してたんだ?」


どうやら少女は先のことを覚えていないようであった。


「うぅん…………まぁ、いいか。それにしても恥ずかしい所を見られちまったな」


と恥ずかしそうに頭を掻く少女。


「あたしは馬超ってんだ。字は孟起。ありがとな、運んでもらっちまって」


「いや、構わぬよ。我輩は塵塚怪王である。今は曹操の所で厄介になっている身である」


と互いに自己紹介を済ませた。


「怪王さん、お茶のおかわりいる?」


と今度こそ見逃すまいと意気込む馬岱。


「うむ。折角だが我輩はこの辺りで戻らせてもらうとする」


塵塚怪王は手で馬岱を制し、立ち上がる。


「馳走になった」


と一礼して天幕を後にする塵塚怪王。


「あ、怪王さん」


そこで馬岱が止める。


「えぇとね……。たんぽぽの真名、もらってくれないかな?」


「なッ!?なに言ってるんだよ、たんぽぽ!?」


馬岱の言葉に馬超が驚きの声をあげる。


「いきなり見ず知らずの我輩に預けても良いものではないはずだが……?」


と塵塚怪王も馬超に賛同する。


「だって怪王さんはお姉様をここまで運んできてくれたし、話しててそんなに悪い人には思えなかったよ?」


それに、と小悪魔的笑みを浮かべる馬岱。


「ちょっと面白そうだし♪ね?だから、いいでしょ?」


「まぁ、我輩は構わないが………」


塵塚怪王は馬超の方を見る。


「たんぽぽが考えて決めたんなら、いくらあたしでも何も言えないよ」


と馬超も納得する。


「じゃあ決定だね。怪王さん、たんぽぽの真名は蒲公英だよ」


「うむ。我輩には真名はない故に好きに呼ぶと良い、蒲公英」


それではな、と怪王は今度こそ天幕を出ていく。








「……それにしても、たんぽぽはああいったのが好みなのか?」


馬超は馬岱にそう訊いた。


「うぅ~ん………好みとはちょっと違うかな」


馬超の問いに曖昧な返事をする馬岱。


「なんとなく異性としてじゃなくて………う~ん。…………そう!父様みたいな感じだよ、お姉様」


「………あぁ、なんとなくそれは分かるな、あたしにも」


と二人して頷くのであった。


「ところでたんぽぽ……。なんで怪王は胸の部分が穴が空いてたんだ?」


と今更な疑問を持つ馬超。


「あれはたんぽぽが早とちりして突いちゃったんだよ」


「おいおい、それは危ないだろ。…………って!?えぇぇぇ!!」


「うわっ!?ビックリした。お姉様、いきなり大声出さないでよね」


「いや、たんぽぽ、お前今突いたって言ったよな?」


「うん。言ったよ」


「じゃあなんで怪王はピンピンしてんだよ!?おかしいだろ!?」


「あ、でもあんまり手応えがなかったよ」


「そ、そうなのか?なら安心………ってならないよ!なんで胸を突いて手応えがないんだよ!?」


「そんなことたんぽぽに言っても知らないよぉ」


と涼州連合の天幕では騒がしい声が聞こえていた。


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